2009年7月14日 (火)

若い頃むし歯ゼロだった総入れ歯の高齢者

先日、ある方から質問を受けました。

「口の中の歯垢の量とむし歯の数の多さというのは関係があるのですか?」

質問をした人の話によれば、知人に歯を熱心に磨いたことがない人がいるが、その人は生まれて一度も歯医者に行ったことがない。なぜなら、むし歯になったことがないため歯医者に行く必要がなかったからだとのことでした。

僕はあることを話しました。それは、若い頃むし歯が全く無かった総入れ歯の高齢者Aさんの話です。Aさんは若い頃は歯が丈夫であることが自慢でした。むし歯になったことが一度もなく、歯医者を受診したことがなかったそうです。歯を熱心に磨き続けていたのか?と問われれば、そうではなかったとのこと。歯を熱心に磨いたことがなく、むしろ歯を磨かなかった日の方が多かったそうです。けれども、一本のむし歯にならなかったとのこと。

そんなAさんでしたが、50歳を過ぎた頃から一本、また一本と歯が揺れだし、放置しているとどんどん揺れだした歯が自然に抜けだしたとのこと。最初のうちは気にならなかったそうですが、年齢を重ねるごとに歯が抜け、食事が不自由になるくらい噛めなくなったとのこと。重い腰をあげ歯医者に行ったところ、既に残っていた歯も手遅れで抜歯し、いきなり総入れ歯になったそうなのです。

むし歯が一本も無かったAさんがどうして総入れ歯になってしまったのか?ここに歯の歯垢とむし歯の関係が如実に表れています。

むし歯というのは様々な要因で発生しますが、大きな要因の一つがむし歯菌です。むし歯菌は何種類かありますが、口の中にあると言われる300~400種類のばい菌の中のほんの一握りです。むし歯菌の数は個人差があり、人によって多い人もいれば少ない人もいます。ということは、歯垢が多い環境であってもむし歯菌は少ない人がいても不思議ではありません。

歯を磨かなくてもむし歯にならない人の中には、こうしたむし歯菌が少ないことが考えられます。歯を磨かなければ歯には歯垢が沈着し、汚れますが、むし歯菌の数が少なければむし歯になるリスクは低いのです。Aさんのような人はこのようなケースに該当したように思います。

ところが、歯周病に関しては歯垢の量と歯周病の重篤度とは関係性が立証されています。すなわち、歯を磨いて歯垢を取り除かなければ歯周病になり、放置すれば歯周病が進行し、歯が動揺、最終的には歯が抜け落ちてしまうのです。

学校検診をしていると、口の中が大変汚れているのにも関わらずむし歯ゼロという生徒がいます。おそらくこのむし歯ゼロはこのまま変わらないかもしれませんが、このような生徒は必ず歯周病になっています。しかも、歯周病は進行し、放置しておけばAさんのように歯が全て抜け落ち総入れ歯となる可能性が大です。

歯磨きを熱心にしなくてもむし歯にならない場合はありますが、歯周病は進行します。歯を磨かなくてもむし歯にならないと自慢している人は、後で大きなしっぺ返しを受けることになります。歯周病という病気に。

歯の健康維持のためには、日頃の歯磨きが欠かせないわけです。

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2009年7月13日 (月)

頬杖は歯並びを変える?

昨日、地元歯科医師会で講演会があり出席してきました。日曜日という休日にあった講演会ではあったのですが、非常に興味深い講演会でした。内容としては何気ない生活習慣がかみ合わせや歯並びに影響を与え、これら習慣を変えない限り、いくら治療をしても効果がでなかったり、不定愁訴が無くなることはないというものでした。

実際に講師の先生が見せたいくつもの患者さんの治療例を見るにつれ、講師の先生が指摘されることは説得力が増し、会場で聴講していた人たちは皆一様に驚きを隠しきれずにいたのが印象的でした。

何気ない、頬杖やうつ伏せ寝、横向き寝、唇の巻き込みやショルダーバッグの掛け方などが姿勢に影響し、その結果として顔の形やかみ合わせ、歯並びも変化をする。歯医者は口の中だけを見るだけでなく、全身をくまなく見ることをもっと習慣付ける必要があることを力説されていました。

以前から何気ない生活習慣が歯並びやかみ合わせに悪影響を与える話は伝え聞いていましたし、僕自身、これまで診てきた患者さんの中にもそのような可能性があるのではないかと思う方もいました。ただ、これほどまでに日頃の何気ない、しぐさや生活習慣が体の健康面に影響を与える可能性があるとは思いませんでした。これは基本的には患者さんの問題ではあるのですが、ほとんどの人が気が付かないもの。それを指摘し、患者さんに生活習慣の改善を求めていくことも歯医者の役割であることは確かなことでしょう。

普段の何気ない生活習慣を変えることは難しいことです。昨日の講演会でも一度や二度指摘し、生活習慣が変わったと思っても気を抜いていると直ぐに元に戻るケースがいくつも紹介されていました。毎日の歯磨きを変えることも難しいものです。ましてや長年の頬杖や寝癖、姿勢などを変えることは非常に苦痛であることでしょう。

ただ、これまで不定愁訴だと思われ、治療が困難であったことの原因の一つに何気ない生活習慣が影響を及ぼしていることがある場合は、生活習慣を変える努力を患者さん自身が自覚し、何が何でも変えるという強い気持ちを持ち続けないといけないようです。そういった意味では、生活習慣の改善は医者、歯医者の治療ではなく、患者さん自身の問題、患者さん自身が自分のために行う治療とも言えるかもしれません。

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2009年6月10日 (水)

大病する人は歯が悪い?

最近、ひょんなことから近所の病院からの紹介患者を受け入れています。歯医者として本音を言えば、患者さんは体にリスクの無い方である方がいいのです。診療中、患者さんが急変することは歯医者にとって非常に怖いことですから。ただし、近所の病院は非常に配慮がなされていて、紹介患者さんの詳細な紹介状があり、病状が安定している方を紹介してくれます。しかも、何か問題が生ずれば責任を持って対処することを言ってくれています。僕の方も、それなりの態勢を取って診療をしていますが、非常に心強い限り。このような紹介患者さんは、返って安心して診療ができるものです。むしろ、自分が持っている病気のことを何も言わなかったり、無自覚である患者さんの方が怖いのです。

この近所の病院からの紹介患者さんですが、総じて歯の状態が芳しくありません。このことは患者さんも自覚していたようですが、他の病気の影響で歯医者に通うこともできず放置していた方がほとんどです。治療の冒頭に、患者さんには通院治療期間が長期にわたることを説明するのですが、説明しながら感じるのは、これら患者さんがどうして歯が悪くなったのか?という疑問です。

確かに他の病気の影響で歯がぼろぼろになったことは考えられなくはありません。口や歯も体の一部。全身の健康状態の影響を受けるのは自然のことだと言えるでしょう。大病をして体に劇的な変化が生ずれば、口の中にも何らかの変化があっても不思議ではありません。

その一方で疑問に感じるのは、果たして目の前にする悲惨な口の中の状態が果たして大病の影響なのかということです。実際は、長年にわたって徐々に歯の状態が悪化し、大病を境にして一気に悪化したのではないだろうか?と感じるのです。

何度も書いたことですが、今や日本人の8割以上が歯周病です。これは非常にショッキングなことではあるのですが、多くの人が無自覚であったり気にはしていても積極的に治療を受けなかったり放置しているのが現状です。その影響でしょう、40~50歳ぐらいから歯を失う方が増えてくるのです。また、むし歯においても年齢の上昇とともに本数が多くなる傾向は今も変わっていません。歯を削れば削るほど歯の耐久性は悪くなるのです。そうなれば、年を重ねるとともに歯を失う確率が高くなる。

大病をする背景には、日頃の生活習慣が大きく影響をしていることは確かです。多くの方は生活のために体に異常を感じていても敢えて無視したり、放置しながらも日々の生活のために働いているのが現状です。そのため、異常が進行し、ある日突然爆発し、大病になる。

最近では生活習慣病といって、大病になる背景には大病に至る生活習慣を見直す必要があるとして、特定検診制度や特定保健指導などが制度化されています。まだまだ広く周知されているわけではありませんが、増え続ける医療費を抑制するために、死の病に至る前段階で食い止め、病気の予防につなげることを目的としています。

僕は一部の大病を経験した患者さんしか見ていませんが、歯の健康と全身の健康に何らかの関係があるのは確かでしょう。数年前から行われている調査でも歯の状態の良い人はそうでない人に比べて他の全身の病気の医療費が少なくなることが言われています。果たして歯が良いから全身が健康なのか、それとも全身が健康だから歯が良いのか?どちらが正しいかは今の時点ではわかっていません。現在、この関係を調べる調査が進行中でその結果がでるのはかなり先になりそうですが、最近頻繁に診る大病をした患者さんの口元を診ると、どうも歯が健康な人は大病になりにくいのではないかという思いを強く持ちます。

歯の健康は日頃の丁寧な歯磨きと歯医者への定期的なチェックにより容易に達成できるもの。少しでも健康長寿を達成するために日頃のお口の管理は決して無駄なことではないように感じる、歯医者そうさんです。

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2009年6月 9日 (火)

歯を白くすること(ホワイトニング)の意味

先日、ある患者さんが来院されました。特に症状は無かった患者さんでしたが、定期検診をして欲しいということで来院されたのです。実際にその患者さんを診てみると、むし歯はありませんでしたが、前歯に歯石と前歯の表面に色素系の着色がありました。僕は歯磨き指導をした後、これら汚れを専用の機材と材料を用い、取り除きました。一度付着した歯の色素系の汚れはこれら専用機材と材料できれい除去でき、もとの歯の色が復活しました。

この治療の後、僕は実際にその患者さんにきれいになった歯を見せたのですが、患者さんは満足そうな表情を浮かべながらも僕に質問してきました。

「これってホワイトニングなのですか?」

最近、審美歯科なる言葉が世の中に広まりつつあるようです。かつて“芸能人は歯が命”というキャッチコピーが流行したことがありましたが、審美を追求すれば、自ずと口の中の歯も白くしたいという欲求を持つ方が出てくるようです。実際に芸能人は自らの姿そのものが商売道具です。特に顔に関しては一種の広告塔のようなもの。顔のパーツの一つである歯も非常に重要なパーツの一つで、昔から芸能人は少しでも歯を白くしたい、歯並びをよくしたいとして歯を触ってきました。

僕ら歯医者から見れば、ほとんどの芸能人が何らかの形で審美歯科治療しています。中には審美歯科治療しなくてもいいのではないか?と思われるような芸能人でも行っているくらいです。これら芸能人の歯はほとんどが白くするものです。それも過剰に白い歯を好む傾向にあるようです。

このような過剰に白い歯が本当に良いのかはよくわかりません。芸能人であれば、過剰なくらいの方がファンやマスコミに対して与えるインパクトが強くなるのでいいのかもしれません。ただ、本来人間が持っている健康的な歯の白さを考えれば、果たして芸能人が追求する歯の白さが本来のホワイトニングで求める白さなのかと問われると、僕は疑問に感じます。

そもそも、ホワイトニングという言葉は、歯を白くするという意味がありますが、僕が思うホワイトニングというのは、先に書いたように人それぞれが持つ健康的な白い歯にする治療です。白いと書きましたが、白いという定義は非常に曖昧です。本来の歯の白さは真っ白というよりも黄白色に近い白さです。ただ、人によっては褐色が強かったり、真っ白に近い人もいます。

歯の色は歯並びによっても影響を受けます。歯並びが悪い人の場合、歯の重なりで影ができ、それが微妙に歯の色に影響を与えます。

前歯のむし歯やむし歯の治療痕も歯の色に影響を与えます。前歯のむし歯の治療の場合、レジンと呼ばれる充填材が使用されますが、これは時間が経過するとともに変色してきます。治療した当初は目立たなくても時間経過とともに色が変色し、目立ってくることもあるのです。

また、歯磨きが適切でなく、歯石や汚れが付着したままの人も歯の色が変わる原因となります。

ホワイトニングといっても歯を白くする前の歯の状況というのは様々です。歯の汚れを除去すれば充分な人もいれば、歯の矯正治療を勧める場合もあります。また、被せ歯や歯のマニキュアのようなものを勧める場合もあれば、歯の内部から漂白剤で漂白したり、家で歯の表面を漂白する方法もあります。

いずれにせよ、歯を白くすることを希望される患者さんには実情に合わせた治療が必要だと考えます。その白さは決して芸能人がしているような白さではありません。その人にとって健康的に見える白さを追求する。それが歯のホワイトニングなのです。

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2009年6月 4日 (木)

今日はむし歯の日でした・・・

今日は6月4日。かつて日本歯科医師会は、6月4日を語呂合わせからむし歯の日、むし歯予防デーとしていました。現在では、むし歯だけでなく、歯周病も含めた口の健康に感心を持ってもらうために今日から1週間を歯の衛生週間とし、様々なPR活動、啓発イベントを行うようにしています。

既に何度も書いていることではありますが、口の中には300種類以上とも言われているばい菌が1ミリグラムあたり1億個以上繁殖していると言われています。あまりにも多くてイメージしにくいぐらいですが、これらばい菌の中にむし歯の原因となるばい菌や歯周病の原因となるばい菌が存在するのです。

未だにどのばい菌がむし歯や歯周病の原因になっているのか?ばい菌同士がどのように影響しあってむし歯や歯周病に関係しているのか謎のままです。ただ言えることは、ばい菌の数を減らせば、むし歯や歯周病のリスクが劇的に下がることです。

口の中のばい菌は繁殖力が旺盛で、一回きちんと歯磨きをしても一日経過すれば元通りぐらいのばい菌の数となります。毎日の生活の中で必ず一定時間を確保して歯磨きを継続しなければ口の中のばい菌は増殖をし続け、結果としてむし歯や歯周病に罹るリスクが高くなるのです。

平成17年に厚生労働省が行った歯科疾患実態調査によれば、毎日歯を磨く人は全体の96%。日本においてはほぼ全ての人が毎日歯を磨いていると言っても過言ではなくなってきました。その一方で、むし歯の本数は年齢とともに増加傾向にあります。50歳代ではむし歯経験歯数(むし歯未治療歯数+むし歯治療歯数+むし歯による喪失歯数)が16本。親知らずを含め永久歯は32本ありますから50歳までに半数の歯がむし歯になっているのが現状です。

歯周病においてはもっと酷く、国民の8割以上が歯周病です。50歳代では9割以上の方が歯周病にかかっているという現実。

歯磨きの習慣はほぼ定着したのにむし歯や歯周病に罹っている人は多いのはなぜか?歯磨きの仕方に問題があるとみていいのではないでしょうか?自分では磨いているつもりでも、実際は磨けていない。そのギャップに気がついていない人が大半であるのが現状なのです。

今日から歯の衛生週間が始まりますが、皆さんにおかれましては今一度口の中の健康に感心を持って欲しいです。関心をもてば定期的な歯医者による検診を受け、歯磨き指導や食事指導、生活習慣の見直しをして欲しいと思います。自分の一人よがりの健康管理だけではなく、専門家による定期的なチェックが口の中の健康維持に非常に大切であることをわかって欲しいですね。

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2009年6月 2日 (火)

むし歯用ワクチン未だ開発されず

数週間前、メキシコに端を発した新型インフルエンザが日本にも入り、あっという間に神戸、大阪を中心とした関西地域から周辺地域、そして、関東方面にも移っていったのは皆さんご存知のことでしょう。患者数がカウントされていますが、実際に症状が出ていない保菌者、すなわち不顕性感染者数はかなりの数になると見られています。

この新型インフルエンザが恐れられている理由は、人類がこれまで遭遇したことがない遺伝子を持つインフルエンザウィルスが原因となっているからです。

インフルエンザウィルスをはじめとしたウィルスは抗生物質が効きません。その理由はウィルスが寄生虫の如く細胞の中に入り込み、増殖するからです。抗生物質は細胞の中まで浸透しないため、増殖しているウィルスに対して抗生物質は作用しにくいのです。

それでも、人間の体はうまくできていえ外部からの目に見えない微生物の侵入に対し、防御機構を持っています。免疫です。ウィルスに対しても抗体というものを作り出し、ウィルスに攻撃を加えるような仕組みになっています。

免疫は外部からの微生物の侵入があって初めて機能しだしますが、抗体ができるのに時間がかかります。今回のような新型インフルエンザの場合、人類が一度も遭遇していなかったタイプのインフルエンザウィルスであるわけですから、基本的に人類はこのインフルエンザウィルスに対し免疫を持っていません。そのため、感染が広がっているわけですが、感染した人によってはぼちぼち免疫機構が対処しはじめ、抗体を作りだしていることでしょう。

新型インフルエンザウィルスに関しては、ワクチンの開発が急がれています。ワクチンはいくつかのタイプがありますが、大半が特定の微生物の活性を抑えたものであったり、死菌であったりします。これらワクチンを注射するということは、人工的に新型インフルエンザを起すということです。ワクチンの中に含まれる新型インフルエンザウィルスに対する抗体を作り出すことにより、外部からの新型インフルエンザウィルスの感染に対処することを目的としているのです。おそらく、秋口にかけて新型インフルエンザウィルスに対するワクチンが急ピッチで開発され、世に出てくることでしょう。

ところで、以前から口の中のむし歯に対してもワクチンの開発が行われてきました。むし歯の原因は口の中に存在するむし歯菌によって引き起こされます。これらむし歯菌に対する免疫があれば、むし歯は発生しません。それなら、むし歯菌に対するワクチンと作り、投与すればむし歯が出来ないのではないか?という発想のもと、むし歯ワクチンの開発が進められてきましたが、残念ながら未だに世の中にその姿を見せていません。僕の手元には今から20年以上前に間も無くむし歯ワクチンが開発されると大々的に報じた新聞記事の切抜きがありますが、現在、このワクチンが正式に開発されたという話は全く耳に入っていません。

どうしてむし歯ワクチンが開発されていないのか?愚考するに、むし歯菌と呼ばれるむし歯の原因菌がはっきりとつかめていないからではないかと思われます。むし歯の原因菌はミュータンス菌であるとの話が世に広まっています。確かにこれは間違いではなく、むし歯の原因菌の候補の一つとして非常に有力ではあります。ところが、ミュータンス菌が無い状態でも口の中にむし歯ができるのです。ということは、ミュータンス菌のみに対するワクチンを作ってもむし歯の発生を抑えることはできません。

現在、歯科の研究者の間では、むし歯の原因菌は複数あってお互いが作用しながらむし歯ができるのではないかと言われていますが、その詳しいメカニズムは未だにわかっていません。これは歯周病も同じで、歯周病の原因菌はいくつか有力な候補は挙げられているものの、どれかと特定することが未だに出来ていないのです。

現在のところ、むし歯ワクチンの開発は未だ道半ばです。今後、研究が進めばむし歯ワクチンは開発されるかもしれませんが、それよりも毎日適切な歯磨きをし、バランスの良い食事をして、規則正しい生活をしていればむし歯はできません。むし歯ワクチンが開発されなくてもむし歯は予防できることがわかっています。

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2009年6月 1日 (月)

虐待を知る学校歯科検診

昨日、インターネットのニュースを見ていると、このようなニュースが流れていました。

河北新報

虐待を受けた子どもの多くが歯や口のトラブルを抱えていることが、宮城県歯科医師会の調査で分かった。各年代で県平均より虫歯の本数が多く、養育放棄や暴行などの影響が大きいとみられる。これを受け、同会は学校健診などでの対応策をまとめた冊子を製作。会員らに配布し、虐待の早期発見を呼び掛ける。
 調査は仙台歯科医師会と実施。昨年3月から同10月にかけ県内2カ所の児童相談所を訪問し、虐待などを受けて一時保護中の56人(3―17歳)の虫歯の有無などを年代別で調べた。
 その結果、12―14歳の平均虫歯本数は5.7本と県内平均(2.8本)の2倍に上った。いずれの年代も平均を上回り、6―8歳は1.1倍、9―11歳は1.4倍、15―17歳は1.5倍だった。
 永久歯の初期虫歯の保有率も高く、県内平均の1.2倍―3倍。歯肉炎の保有率も同様の傾向がうかがえ、平均の1.4倍―2.9倍だった。
 県歯科医師会の山形光孝常務理事は「口の中の状態が悪い子がすべて虐待を受けているわけではない」としながらも、「密接にかかわっているのも事実。歯科医が、健診や診療で虐待との関連を意識することが必要だ」と指摘する。
 調査結果を基に同会は会員向け冊子「歯・口から気づく子どもへの虐待」(A4判、14ページ)を2000部製作。6月1日に発送する。虫歯の多発や重度の歯肉炎、歯の亀裂、舌や口唇の外傷といった所見を例に挙げ、虐待が疑われる場合は学校や市町村に報告するよう求めている。
 冊子は歯科医のほか、県内の全公立幼稚園と小中学校、各市町村にも送る予定。山形常務理事は「歯科医と行政、学校現場が連携して虐待防止に努めていきたい」と話している。


現在、全国各地の学校では定期学校検診が行われています。この定期学校検診は学校保健法に基づくもので、先日、僕が学校歯科医をしている地元小学校でも歯科検診がありました。

検診時、僕は必ずむし歯や歯周病の状態をチェックはしているのですが、それ以外に過去に指摘されたむし歯が処置されているかも必ずチェックしています。

検診でむし歯であると指摘された児童、生徒に対して学校からは必ず治療勧告書が出されます。治療勧告書は治療や精査の必要がある歯や歯肉などがあることが書かれてあります。歯医者での治療が終了すれば、歯医者は児童や生徒本人、もしくは保護者に対し治療勧告書の報告書を書き、手渡します。この報告書は児童や生徒を通じ学校側に戻され、学校は治療報告書の報告に関して検査用紙に記入することになっています。

検診用紙は小学校から中学校までの義務教育の機関は概ね同じ用紙です。都道府県ごとに若干の書式の違いはありますが、例え生徒や児童が転校をしても、基本的に元の学校の検診用紙をそのまま引き継ぐことになっています。そのため、時系列で歯の状態を把握することができるのです。

現在、むし歯の数は非常に少なくなっています。特に永久歯のむし歯は非常に少なく、平成17年に行われた歯科疾患実態調査によれば、12歳の時点での永久歯のむし歯経験歯数は1.7本。18年前の昭和62年の調査では4.9本ですから、ほぼ20年で3分の1に減少しています。それ故、むし歯、特に永久歯のむし歯の本数が多く、むし歯が放置されている場合には、本人もしくは家庭に何か問題がある場合があると疑います。

このことは学校側も既に把握しているようで、養護教諭は必ず歯科検診の結果を参考に、虐待や育児放棄などの可能性のある生徒を見守っているのが現状です。

虐待を受けている生徒、児童は親が自分を虐待しているとは言いません。自分が虐待を受けているのは自分が悪いせいだと思っていたり、言いたくても言い出せないケースが多いもの。

その一方で、体はうそをつきません。特に、体に現れた傷は本人が本当のことを言わなくても真実を語っています。口の中の状態もうそをつかないのです。専門家が見れば、口の中の衛生状態は、本人もしくは家庭の生活状況をつぶさに物語っているといっても過言ではありません。虐待を疑いたくなるような状態は直ぐにピンとくるものなのです。

上の記事に書かれている通り、永久歯のむし歯を放置している生徒、児童が全て家庭に問題があるとは断言できませんが、虐待を受けている児童、生徒を見つける一つの有効な方法となることは間違いありません。

ただ、歯科検診が虐待を調べる手段の一つとして注目されているのは、本来の目的からすれば悲しいことです。できることなら、歯科検診は虐待を見つける方法ではなく、本来の目的である健康状態の把握のために行われて欲しいと願います。

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2009年5月28日 (木)

寒天で歯型を取る?!

「今から歯型を取りますよ。それでは寒天の用意をお願いします。」

ある患者さんの被せ歯の作るために僕が発した言葉です。その患者さん、僕が発した言葉に敏感に反応されました。

「先生、寒天ってあの寒天のことですか?」

歯医者で寒天を使用するのは意外と思われたのでしょう。寒天は食材として様々な料理や菓子に使用されています。僕自身、蜜豆が大好きなのですが、理由の一つが中にある寒天の食感がいいからです。おそらく寒天が好きな方は一人や二人ではないでしょう。

そんな食材として有名な寒天。歯型を取る時に利用するのが信じられないかもしれませんが、事実はそうなのです。歯医者にとって寒天は非常に歯型を取る印象材として非常に重宝する材料の一つなのです。

寒天はある一定の温度以上に熱するとどろどろとした液状になります。これは寒天のゾル化と呼ばれる現象ですが、このゾルが温度が下がってくると液状から固形状に変化します。これはゲル化と呼ばれる減少です。おそらく寒天を調理した人ならしょっちゅうお目にかかる現象でしょう。このゾルからゲルへの反応を利用して歯型を取るのです。

寒天は非常に安価な材料です。なぜなら、食材を中心に大量生産されているからです。しかも、寒天はゾルからゲルになると液状から固形状へ変化します。一度固形状になった寒天は軟らかい物性を維持し、変形しない物性があります。これが歯型と取る材料として非常に好都合なのです。

熱く熱した寒天を歯型を取る対象となった歯に注ぎ、直ぐに冷却する。そうすると、きれいな歯型を取る事ができます。しかも、変形しない歯型が取れ、コストがかからない。歯医者では30年以上前から寒天を精密な歯型を取る材料の一つとして利用してきたのです。

もちろん、実際に口にする寒天と歯型を取る寒天とは多少物性が異なりますが、それでも主成分が寒天であることに変わりはありません。多くの歯医者では毎朝診療開始前に寒天を温めることを日課の一つとしています。

寒天は既に歯型を取る際に取り入れられて歴史のある材料ですが、これからもずっと歯医者で重宝される印象材の一つとして生き残っていくことでしょう。

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2009年5月20日 (水)

入れ歯が凶器になることもある!?

先日、口の中に口内炎ができて痛いということで来院された患者さんがいました。この患者さん、高齢で口の中には歯が一本も無く、上下の顎に総入れ歯でした。

患者さんに尋ねると、左下の奥の粘膜が痛いとのこと。実際に診てみると、確かに左下の歯肉と頬粘膜の境目に口内炎のようなものが見られました。

ただ、患者さんが指摘する口内炎でしたが、僕が診てどうも本来の口内炎ではないように思えました。何かの傷ではないかと感じたのです。

入れ歯を装着している患者さんの場合、入れ歯の適合が悪く、入れ歯の一部が歯肉に強く当たったり、食い込んだりしてできる傷がよくあります。専門的に褥瘡性潰瘍といいます。褥瘡とは寝たきりの高齢者に多い、いわゆる床ずれのことですね。口の中に褥瘡と思われる方も多いかもしれませんが、先に書いた入れ歯の不適合による傷はまさに褥瘡の一種なのです。この褥瘡が進行し、自然に治らない傷のようになった状態を褥瘡性潰瘍と呼ぶのです。

体は一日一日微妙に変化します。自分では気が付かなくても体は新陳代謝を繰り返し、変化しつづけるもの。顔や口も同様です。毎日同じものを食べているつもりでも、微妙な変化があるものなのです。

入れ歯はどうかといいますと、これも微妙に変化します。長期間使用しているうちに人工の歯が磨り減ったり、磨いているうちに表面が微妙に研磨されたりします。

変化をする口と入れ歯。口の変化と入れ歯の変化が同じような変化の度合いであればいいのですが、この変化のバランスが崩れた時はどうでしょう?入れ歯が合わず不快になるのです。こうした入れ歯の不具合の現象の一つが褥瘡性潰瘍なのです。

この褥瘡性潰瘍を治すには、入れ歯の調整しかありません。入れ歯が歯肉に合っていないことが原因であるわけですから。

今回の患者さんの場合は特殊でした。確かに下の奥が痛いと訴えられていた部分の原因は入れ歯の不具合ではあったのですが、下の入れ歯は問題ありませんでした。むしろ原因は上の入れ歯にあったのです。入れ歯を使用しているうちに咬みあわせが低くなり、上の入れ歯の奥歯の人工歯の一部が下の歯肉と頬粘膜の境目に接触していたのが原因でした。

おそらく食事の度に痛い思いをされていたことでしょう。それも昨日今日の問題ではなく、かなり長時間にわたり苦しまれてきたものと思われました。

僕は応急的に問題の人工歯を削り、左下の歯肉と頬の境目に当たらないようにしました。患者さんの反応は極めて良く、“これで食事をしても痛くなりません”と言われていました。

患者さんには今後、咬みあわせを調整したりしながら、場合によっては入れ歯を作り直す必要があることを説明しましたのですが、失った歯の代わりに使用していた入れ歯が口の中を傷つける凶器になったのでは意味がありません。入れ歯を凶器にしないためにも定期的な調整が必要なものなのです。

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2009年5月14日 (木)

乳歯が残っているおばさん

先日、ある中年女性患者さんが来院しました。奥歯にむし歯ができたので治して欲しいということで来院されたのです。患者さんの話を一通り聞いた僕は患者さんの口の中を診ていたのですが、むし歯のある歯を診て“あれっ?”と思いました。念のためにレントゲン写真を撮影し確認をしてみましたが、僕の“あれっ”はある確信へと変化しました。

「むし歯の歯ですが、これは乳歯ですね。」

患者さんは驚かれていました。乳歯は全て抜け落ち、永久歯と生え変わっているとばかり思っていたからです。確かに無理はありません。誰でも幼稚園から小学生の頃あたりに乳歯が永久歯に生え変わるわけですから。この頃から既に40年以上経過している現在、乳歯が残っていると指摘されれば、誰でも驚くことでしょう。

この乳歯が生え変わらずに長期間にわたり残っていることは時々見かけます。この理由の多くが後続永久歯が生まれつき無い場合です。どうしてこのようなことが起こるのか、理由は定かではありません。遺伝の悪戯としかいいようがありません。いつまで経過しても乳歯が永久歯と代わらない場合、歯医者でレントゲン写真を撮影すれば、早期に後続永久歯が無いことがわかります。子供を持っている方でいつまで経っても永久歯が生えてこない場合、まずは歯医者で診てもらうことが寛容です。

後続永久歯が無い乳歯の場合、乳歯は無理をして抜歯する必要はありません。なぜなら、抜歯をしてしまうと、歯並びに隙間が生じます。当然のことながら歯並びやかみ合わせが乱れる可能性が生じます。歯科治療では、後続永久歯が無い乳歯は、可能な限り残しておくことが基本です。

もし、このような乳歯が取れたり、抜歯せざるをえない場合はどうなるか?この場合は、通常の永久歯が一本抜けた場合と同じ扱いになります。すなわち、入れ歯にするか、隣同士の歯を削るブリッジにするか、自費治療であればインプラント治療という選択肢があるでしょう。

今回のケースの場合、乳歯にはむし歯があったのですが、幸いむし歯は浅く、むし歯を取り除いた後、詰め物で蓋をすることで治療を完了することができました。患者さんも安堵され

「代わりのない乳歯ですから、これからはこれまで以上に大切にしていきます」という言葉を残し、診療室を後にされました。

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2009年5月11日 (月)

歯ブラシの交換時期について

最近、患者さんから多く質問を受けることの一つに歯ブラシのことがあります。質問をするということは質問者が質問内容について何らかの関心があってのこと。歯ブラシに関する質問が多いということは、歯ブラシや歯磨きに注目している人が多いということでしょう。歯医者にとっては非常に好ましいことだと思います。歯医者といえば、痛くなったら通うというイメージが強いわけですが、歯ブラシに関心を持ち、質問する患者さんというのは、歯や口の中の健康維持に関心があり、実践しようという気持ちを持っている表れだからです。

中でも質問が多かったのは歯ブラシの交換時期についてです。この質問は何度か歯医者さんの一服日記で書いてきたことではありますが、何度書いてもいいことだと思いますので、今回も書いてみたいと思います。

基本的に歯ブラシの交換時期は歯ブラシの毛の状態を見て欲しいと思います。毛が柄からはみ出したり、広がったりしている場合は交換時期だといえるでしょう。歯ブラシは毛が命です。毛の弾力性によって歯の表面にこびりついた汚れ、特に歯垢を落とすのです。歯ブラシの毛が広がっていると毛の弾力性が歯に伝わらず、清掃効果が落ちます。また、歯肉を徒に傷つける可能性もあり、本来の歯ブラシの目的が果たせなくなる可能性があります。

歯ブラシの毛と毛の間に食べかすが溜まっているような状態は避けましょう。不潔極まりないからです。よく歯ブラシの毛と毛の間に食べかすが入っていて放置している人がいるようですが、もし食べかすが残っているようならピンセットや糸ようじ、歯間ブラシなどを用いてこれら食べかすは取り除きましょう。どうしても取れない場合や固まっているような歯ブラシは、即交換しましょう。

何も問題がないように見える歯ブラシでも月に1回は交換するようにしましょう。

理由は単純です。毎日歯ブラシを使用していると、目に見えない汚れ、雑菌が毛に付着し、不潔になるからです。

もったいないように思われる方もいるかもしれませんが、歯ブラシの値段は高くても300円以内。一ヶ月に300円以内の出費を高いと考えるかどうかはその人の価値観により異なるかもしれませんが、歯ブラシによって得られる健康を考えれば、僕は決して高くない、むしろ安すぎる投資ではないかと思います。

これは電動歯ブラシや超音波歯ブラシの毛についても言えます。ただし、これら歯ブラシの毛については交換キットが高くなります。僕がこれら歯ブラシを勧めない理由の一つがここにあります。コストパフォーマンスが通常の歯ブラシに比べ高くなってしまうからですね。電動歯ブラシや超音波歯ブラシそのものは非常に良いものだとは思いますが、毎日使うものですから、日常のコストパフォーマンスや普通の歯ブラシと能力がそれほど変わりません。僕は、体の不自由さを補うような目的などが無い限り、患者さんには電動歯ブラシや超音波歯ブラシは勧めることは少ないですね。

歯ブラシの消毒は必要なのか?と思われる方も必要かもしれませんが、毛の材質を考えると、1ヶ月に1度の歯ブラシの交換ができれば、消毒は必要ないと考えます。歯を磨いた後、流水下で充分に汚れを取り、日陰で乾燥させるだけで充分でしょう。

ただ、よく歯ブラシのケースに入れて保存する方がいますが、これは正直言ってよくありません。雑菌を繁殖させる温床となるからです。旅行や移動などで持ち歩く場合でも、極力ケースから出して乾燥させるように気を配りたいものです。

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2009年4月23日 (木)

歯医者の麻酔が効きにくい理由 その2

何年も歯医者稼業をしていると経験することですが、痛みや腫れの症状が激しい時、麻酔が効き難いことがあります。これはどうした理由からでしょうか?

実は、歯医者で用いる麻酔注射液の化学的組成は酸性になっています。具体的には塩酸○○、塩酸△△といった形で作られているのです。この酸性の麻酔注射液は、体内に入ると代謝を受け、塩酸部分と麻酔注射液本体の部分と分離します。実際に効くのはもちろん麻酔注射液本体であることは言うまでもありません。

ところで、痛みや脹れといった炎症がある場合、体内の化学的環境はどうなっているかといいますと、酸性なのです。炎症は生物学的、物理学的、化学的刺激によって引き起こされる生理現象です。炎症が起こると体内からは様々な起炎物質と呼ばれる物質が分泌されますが、結果としてこれら物質の影響で体内のpHは低くなります。すなわち炎症が起これば、炎症が生じた部位は酸性になるのです。

それでは、酸性の麻酔注射液を酸性状態の炎症部位に注射すればどうなるでしょう?酸性の麻酔注射液は、注射部位が中性であれば緩衝され、麻酔注射液本体が分離され麻酔効果が表れます。

一方、炎症部位に麻酔注射液を注入した場合、酸性状態の麻酔注射液は緩衝されにくい状態となります。麻酔注射液は酸性の状態が維持されるのです。そうなれば、麻酔注射液本体が分離されにくくなり、麻酔効果が出現しにくくなるのです。

痛みや脹れの状態が酷い場合、麻酔が効き難い理由がここにあります。炎症による化学的な状況により麻酔注射液の機能が発揮しにくくなるのです。

麻酔が効きにくい状況でどうしても麻酔を効かせたい場合どうすればよいか?一例を挙げます。

むし歯がひどく神経の処置をしたいが麻酔が効かない場合、残された手段は、神経に直接針を突っ込み麻酔注射液を注入することです。これはさすがに麻酔が奏功します。百発百中の麻酔方法ですが、大きな欠点は針を突っ込んだ瞬間、患者さんには激痛が生じることです。目から火花が出たり、星が見えたとおっしゃる方もいるくらいです。ただし、これは一瞬のことでしばらくすれば激痛は収まります。まあ、神経の直接麻酔をするわけですから当然のことといえばそこまでかもしれません。

僕自身、何度かこのことを行ったことがあります。非常に申し訳なく思いますが、麻酔を聞かせないと全く処置ができないものですから、申し訳なく思いながらも最終手段として神経に直接麻酔を注射します。

ところで、よくアルコールに強い人は麻酔が効かないということを耳にしますが、正直言って僕はこのことがよくわかりません。体内において麻酔液の代謝とアルコールの分解代謝との間に何らかの関係があるのかもしれません。ただ、目的とする部位に確実に麻酔を注射すれば麻酔は奏功するものなのです。

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2009年4月22日 (水)

歯医者の麻酔が効きにくい理由 その1

先日、某所へ出向くため電車に乗っていた時でした。僕の隣に座っていた会社員二人組が話をしていたのですが、何気なく聞き耳を立てていると会話が歯科治療のことになっていました。

「この間、歯医者で歯の治療をしたんだけど大変だったよ。」

「歯を抜いたんですか?」

「長い間むし歯を放置していたんだけど、その歯が突然痛くなってね、近くの歯医者に飛び込んだんだよ。歯医者では神経の処置をしないと痛みが取れないというから、神経の処置をしてもらったわけだけど・・・」

「治療中、痛かったんじゃないですか?」

「麻酔がなかなか効かなかったんだよ。歯医者の先生は麻酔の何本もの麻酔の注射をしていたんだけど、聞かなくてね、難儀したよ。俺って麻酔の効きにくい体質なのかもしれないなあ。」

この会社員のような体験をされた方は少なからずあるように思います。僕自身、麻酔が効きにくい患者さんの治療をした経験は何度もあります。どうして麻酔が効きにくいのか?それは体質の問題なのか?

愚考するに、麻酔の薬自身は問題ありません。麻痺させたい部位間近に麻酔の注射を打てば確実に麻酔は功を奏し、麻痺させられるのです。それでは麻酔が効きにくい現実をどう説明すればいいのか?

これには歯医者で用いる麻酔法が大いに関係していると思われます。歯医者で用いる麻酔法は、浸潤麻酔と呼ばれる方法です。浸潤麻酔とは読んで字の如く、麻酔液を浸み込ませながら効かせるということです。

歯は顎の骨に囲まれています。骨という硬い組織で守られているわけです。そのため、麻酔の針を直接歯の根っこ、特に歯の神経が集まる根っこの先付近に刺すことができないのです。そのため、針は根っこの近くの骨に刺さざるをえません。

やむを得ず、麻酔液は目的とする歯の近くの骨に注射するわけですが、注射液は骨を浸透する性質があります。骨の隙間をぬって麻酔液が浸透し、歯に達する。そのことで歯の神経を麻痺させるのです。これが浸潤麻酔です。

そのため、歯医者で用いる麻酔液は他の外科で用いる麻酔液よりも濃度が濃いものとなっています。皮膚が破れたから歯医者の麻酔注射を用いるとなると、濃度が濃すぎるためかえって皮膚にダメージを与えることになり、用いることが困難なくらいです。この事実は医者も知らない方が多いようで、歯医者で用いる麻酔液の濃度を教えた医者は異口同音にびっくりされているくらいです。

骨に麻酔液を流し込み、骨の隙間に麻酔液を浸透させることにより麻酔としての効果が出る事実。このことを考えれば、麻酔が効き難い場合の理由の一つに骨の厚み、密度が影響を与えることは容易に想像つくのではないでしょうか?顎の骨ががっちりした人のような場合、麻酔の注射を打ってもなかなか麻酔液が骨を浸透して目的とする歯に達することができず、結果として麻酔が効き難い状況が生まれるのです。

一般に、下顎の方が上顎よりも麻酔が効き難い理由もここにあります。多くの歯医者が経験していることですが、下顎の歯、中でも奥歯の麻酔を効かせることに苦慮することがあるのですが、これは下顎の骨が麻酔液が浸透しにくい厚みと密度があることが関係している場合が多いのです。

歯医者の麻酔が効き難い場合がある理由はまだあるのですが、続きは明日へ。

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2009年4月20日 (月)

自分の目で確認し難いが故に

僕は定期的に嫁さんにやってもらうことがあります。それは耳の掃除。体質なのかもしれませんが、僕は耳垢が溜まりやすいようです。しかも耳垢はどちらかといえば湿り気が多い耳垢。僕自身、耳かきや綿棒を使って耳垢を取っているつもりですが、きちんと取りきれているか自信がありません。

また、僕の耳付近には枝毛のような毛が生えます。以前、理容院で髪の毛をカットしてもらっている時はいつもこれら耳からの枝毛は剃ってもらっていたのですが、美容院で髪の毛をカットするようになってからは顔剃りがありません。そのため、注意しておかないと耳毛が生えているなんてことがあるのです。これも自分でなるべくチェックしているつもりですが、耳の掃除の際、嫁さんに同時に見てもらいます。変な枝毛があるようであればはさみで切ってもらっています。

どうして嫁さんにこのような耳がらみのことで世話になっているか?理由は簡単です。それは、自分の目で直接確認することが難しいからです。鏡を使えば耳付近の状態を詳細に見ることは可能かもしれませんが、少なくとも直視して耳付近を見ることはできません。鏡を使うにしても複数の鏡を使わないと詳しく見えない場合が多いのではないでしょうか。少なくとも僕はこうしたことが苦手でして、耳の掃除や枝毛の点検は嫁さんに頼っているといっても過言ではありません。

よくよく考えてみれば、口の中の状態も同じことが言えるかもしれません。患者さんには常に口の中をきれいに歯磨きするように指導している歯医者そうさんですが、実際に患者さんの立場になってみれば、果たしてきちんと磨けているかどうかをチェックすることは容易ではありません。

僕のような歯医者であれば、むし歯や歯周病の正体を十二分に知っています。そのため、直接見えなくても感覚でわかるものですが、それでも初期の症状などは見落としがちです。かつて、僕は定期検診で自分の口のレントゲン写真を撮影したのですが、その中に初期むし歯が見つかり、治療してもらったことがあります。自分では全く意識していなかっただけに非常にショックだったのですが、定期検診の大切さを自らが改めて感じたものでした。以降、僕自身、歯医者である親父や叔父に定期的に診てもらっています。

歯医者以外の人を馬鹿にするわけではありませんが、僕のような専門家でも自分で確認することが難しい口の中の状態です。歯医者以外の方であれば、やはり定期的な専門家によるチェックは非常に大切なことだと思うのです。自分の目で自分の口の中を確認し難いがゆえです。

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2009年4月13日 (月)

早食いと肥満との関係

以前、ある格闘家が語っていました。

「我々はどうしても体重を増やさないといけない立場でした。体重が1キロ違うだけで相手に与える圧力が違うものですから。たかが1キロ、されど1キロなのです。そこで行うことは練習を行うことはもちろんですが、練習後の食事も大切でした。一般の人のように味わうために食べるのではなく、如何に多くの食べ物を食べるかが大きな問題なのです。体重を増やすためですね。そのために行っていたのが早食いです。あまり口の中でかみ合わせず、飲み込むように食べる。そうするとたくさんの食べ物を食べることができるんですよ。これは決して健康的な食べ方ではありませんが、体重を増やすためには食事も一種の練習ということで割り切っています。」

最近の早食い、大食いブームからすれば必ずしも当てはまらないかもしれませんが、肥満になっている人の食生活を見ていると、確かに充分に時間をかけながら食べていない、早食いの人の割合が多いように思います。

逆の見方をすれば、じっくりと時間をかけ、よく噛んで食べれば肥満になる確率は下がることも言えるのです。上記の格闘家曰く

「ダイエットをしようと思えば、我々の経験の逆をすればいいんです。すなわち、早食いではなくよく噛んで味わいながら食事をする習慣を身につければいいんです。不思議なもので、よく噛んでいると少量の食事でも満腹が得られるんですよ。食べる量が減るということはダイエットにもつながるはずです。よく若い女性がダイエットで四苦八苦されている話を耳にしますが、運動も大切ですが、よく噛んで食事をすることをお勧めします。我々と逆のことをすれば体重は減るんですよ。」

どうしてよく噛むと体重が減るのか?最近の研究では、脳の中の満腹中枢と言われる領域と食べることをつかさどる摂食中枢が近いことが関係していると言われています。よく噛むことで摂食中枢が何度も刺激を受けると近くにある満腹中枢も影響を受け、少量の食事でも満腹中枢が満腹だと感じるようになり、食べ過ぎることなく満腹感を得る。結果として、少量の食事で満腹となり、これが継続すれば体重減少、適正体重の維持につながるとされています。

また、よく噛むことは脳の中にあるヒスタミンという物質を活性化させることがあるようなのですが、このヒスタミンが食欲を抑え、エネルギーを消費させる働きを担っているとの研究成果もあるようです。

日本歯科医師会や厚生労働省では“一口30回噛む”ことが肥満予防法の一つであることを取り上げています。昨今、生活習慣病やメタボリックシンドロームと健康との関係が取沙汰されていますが、メタボリックシンドロームの大きな原因の一つとされている内蔵脂肪型肥満を抑制するためには、生活習慣を変えることが不可欠だとされています。そういった意味で普段の食事でよく噛むことは生活習慣の改善の一助ともなることでしょう。

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2009年4月10日 (金)

性別確認しづらい患者

昨夜、地元歯科医師会の会合があり出席してきました。いつものように会合の前に雑談をしていると、ある先生が突然あることを話し出しました。

「うちに来院した患者さんでパッと見た目はきれいな女性だったのですよ。すらりとした体格に春らしいファッションの着こなしをして治療に来られていたんですよ。内心、『うちの歯科医院にもこんな美人が来るようになったんだ』と思っていたんですけど、どこか違和感があったんです。何気なくカルテを見ると、性別欄が“男”だったんですね。後で受付に確認したら、保険証の性別欄が“男性”だったそうなのです。」

「患者さんとのやり取りは問題なかったのですが、話をしていても完全に女性でしたよ。カルテの性別が“男”だっただけに、非常に気を使いましたね。」

実はうちの歯科医院にもこのような患者さんが来院したことがあります。患者さんであればどんな性別であろうとも同じように治療をするわけですが、本音としてはどこか構えてしまう、少し複雑な気持ちにならざるをえませんでした。

世の中には心の性と身体の性が一致しない性同一性障害の方がいます。性同一性障害の方は自分自身が苦しむだけでなく、保険証や選挙権などで不正利用、行使の疑いを掛けられ、不審がられることが多いと聞きます。そのため、強い精神的苦痛を受けることも多いのだとか。

インターネットで調べてみると、性同一性障害に関しては法律があるようです。平成16年7月に施行された性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特例法)です。ここに詳しいことは書かれていますが、性同一性障害の定義は

“生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的確信を持ち、かつ、自己を身体的および社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについて、その診断を有する2人以上の医師の一般に認められる医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう”

とのこと。

性同一性障害特例法によれば、医学的に性同一性障害と認められ、性別の取扱いの変更の審判を受ければ、戸籍や保険証等の性別の変更が可能とのこと。

ただ、実際に性別の変更の審判を受けるには条件があるようで

20歳以上であること

・現に婚姻していないこと

・現に未成年の子がいないこと

・生殖腺がないこと、または、生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

・その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する概観を備えていること

これらの条件が満たされないと法的に性同一性障害と認められないようです。

性同一性障害と思われる患者さんの場合、医療の現場ではどうしても性別を確認せざるをえない状況になります。なぜなら、他人の保険証を不正に使用している可能性が否定できないからです。そのため、患者さんの外観上の性別と保険証との性別の違いを本人に確認せざるをえないところがあるのです。

うちの歯科医院に来院した患者さんや冒頭で話した患者さんも受付で性別確認を取ったそうですが、二人とも気持ちよく事情を話してくれたそうです。ただ、周囲の患者さんには会話内容を聞かれないよう配慮し、慎重に言葉を選びながら性別確認をしたそうですが、それは正しい行動ではなかったかと思います。

性同一性障害についてはまだまだ医学的にわかっていないことが多いようですし、性同一性障害特例法についてもいろいろな議論があるようです。歯科治療においては性同一性障害が治療に与える影響はほとんどないと思いますが、患者さんの心情には一定の配慮が必要であると思います。

続きを読む "性別確認しづらい患者"

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2009年4月 9日 (木)

カルテの保存期間

昨日、地元歯科医師会の事務局へ出かけた時のことです。事務局の事務員さんがある荷物の移動をしていました。何を運んでいるのか尋ねてみたところ

「過去の帳簿類を倉庫に運んでいるんです」とのこと。

僕も事務員さんの仕事の一部を手伝ったのですが、倉庫には過去の書類が収まった大量の段ボール箱がありました。あまりの多さにびっくりした僕は、これら書類の保存期間を尋ねたところ、

「法人では帳簿類の保存期間は10年なんです。」

事務員さんの話によれば、法人である歯科医師会の帳簿類、関係書類等は10年の保管の義務があるようです。書類が多く溜まったからといって勝手に処分することができないのです。大量の段ボール箱の存在は仕方のないところでした。

このような書類の保存義務ですが、歯科医院や医院などの医療機関でも同様の保存義務が課せられています。一体どれくらいの保存期間はなのでしょう?

まずは診療録、カルテですが、これは医師法、歯科医師法、療養担当規則で保存期間が決められています。診療終了後、5年間の保存義務があります。

それ以外では、処方箋、病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真などは保存期間は2年で、これは医療法施行規則に定められています。

一方、保険医療機関において保険診療を行う場合、別の保存義務があります。保険診療のルールを定めた保険医療機関及び保健医療療養担当規則によれば、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならないという文言があります。すなわち、保険診療を行う医療機関においては、カルテ以外の書類や資料は3年間保存しないといけないわけです。例えば、歯科においては、レントゲンフィルムや診断用模型などは治療終了後3年間保管しないといけないのです。

どこの医療機関でもカルテ、診断用記録などは保管に苦労をしているようです。大きな病院などでは保存義務期間を終えた書類でも保管し続けたり、マイクロフィルム化することをしているようです。

町医者と呼ばれる一般開業医療機関では、保存期間を過ぎた書類は処分することが多かったのですが、最近ではカルテなどは電子カルテが導入されたおかげで、保存用コンピューターがクラッシュしない限り、半永久的に保管できるようになってきています。紙の記録を保管場所に苦労しないような時代になってきているのが現状です。

書類の保存義務期間は基本的に紙の用紙を前提にした話でした。今後、記録の電子化が進んでくれば、これら保存義務期間の見直しもあるかもしれません。

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2009年4月 2日 (木)

歯を使った栓抜きパフォーマンスについて

先日、何気なくあるバラエティ番組を見ていると世界の奇人、変人コーナーのような特集がありました。世界にはいろいろなことをする人がいるものだなあと思いながら見ていたのですが、このコーナーの中に自分の歯でビール瓶の栓を抜く人が取り上げられていました。この人はある制限時間内で自分の歯で栓を抜くビール瓶本数の世界記録を持っているとのこと。実際に自分の歯でビール瓶の栓を抜いているパフォーマンスの映像が流されていました。確かに次から次へとビール瓶の栓を歯で抜かれている映像には驚かされましたが、僕は歯医者としてこの方の行く末を案じてしまいました。

結論からいいますと、絶対に良くないことです、自分の歯でビール瓶の栓を抜くことは。誰でも想像がつくとおもいますが、人間の歯はビール瓶の栓を抜くために進化してきたものではありません。食べ物を食べるために進化してきたものです。自ずと歯の解剖学的構造、能力は歯に適合したもののはずです。ビール瓶の栓を抜くという行為は明らかに食べ物を食べることを超えた行為です。

結果としてどのようなことが考えられるでしょう?まず、歯が欠けたり割れたりする可能性があります。ビール瓶の栓は金属製です。ビール瓶の栓で使用される金属は軟らかくありません。実際に歯の表面は、特に目で見える範囲の歯冠と呼ばれる部分はダイヤモンド並の硬さがあります。それ故、少々硬いものを咬んだとしても歯が傷つかないようになっているわけです。ビール瓶の栓を歯で噛んでも歯が割れないのは、歯そのものがビール瓶の栓の金属以上に硬いことが大きく影響しています。

その一方、硬いということは柔軟性に欠けるという欠点があります。硬いものばかり噛んでいるうちにヒビが入り、割れてしまうリスクがあるのです。自分の歯でビール瓶の栓を抜き続けていると歯にヒビが入り、割れてしまうリスクを自ら高めてしまう結果となります。今は問題なくてもビール瓶の栓を抜いているうちにある瞬間に歯が割れてしまうなんてことになりかねないのです。

一度割れてしまった歯は詰め物や被せ歯、差し歯などの人工物で置き換えなければならないのです。歯が助かるならまだいいでしょう。もし歯が真っ二つに根っこの方まで割れてしまえば、最悪の場合抜歯となります。

歯の根っこは顎の骨と直接くっついていません。薄い歯根膜と呼ばれる線維と繋がっています。歯根膜は歯にかかった圧力を適度に緩衝し、分散させることにより顎の骨に直接過大な力がかからないようになっているのです。

自分の歯でビール瓶の栓を抜き続けると、過大な圧力が歯にかかることになります。そうなると、この歯根膜にも過大な力がかかることになります。そうなると歯根膜が傷つき、炎症が生じたり、顎の骨に悪影響を及ぼします。

顎の骨の問題といえば、非常に懸念するのは顎の関節です。自分の歯で栓抜きするのは前歯が多いようですが、前歯に多大な力がかかると、てこの原理から顎の関節にも非常に大きな力が作用します。そうなると顎の関節周囲の筋肉、靭帯、軟骨に力がかかり、損傷してしまう可能性があります。これはまさしく顎関節症の症状なのですが、自分の歯で栓を抜き続ければ歯のみならず顎の関節の健康さえ害するリスクがあるのです。

以上のようなことを考えると、歯医者として僕は自分の歯でビール瓶の栓抜きパフォーマンスを気持ちよく見ることができません。自らの体をはった、非常に危険なパフォーマンスをしているようにしか見えません。愚の骨頂としか思えないパフォーマンス、決してマネをしないようにお願いします。

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2009年3月26日 (木)

発展途上国でも使えるモノは・・・

「先生、意外と知られていないので意外なのですけど、この歯科材料は優れモノだと思いますよ。」

発言の主はうちの歯科医院に出入りしている歯科材料店の担当者。

歯科医院には必ずといっていいほど歯科治療で用いる器具、材料などの注文を取りに来る歯科材料店があります。歯科医院によっては複数の歯科材料店が定期的にまわってきているくらいです。

うち歯科医院にも長年懇意にしている歯科材料店があるのですが、そこの担当者があるパンフレットを持って僕にある歯科材料のことを熱心に語っていたのです。

歯科材料店の担当者は、新製品の情報提供、PRをすることが多いのですが、今回この担当者が僕に勧めていたのは全くの新製品ではなく、どちらかといえば数年前に開発された代物。どうしてそのようなモノを勧めているのか?と尋ねたところ

「僕も知らなかったくらいあまり知られていなかった製品だったのです。いろいろと調べてみると、どうも海外で先行して販売されていたようなのです。」

担当者の話によれば、この製品は世界保健機関(WHO)の依頼により某歯科材料メーカーが開発したのだとか。日本のような先進国ではない開発途上国向けに使用できることをコンセプトに研究が行われたそうなのです。

日本をはじめとした先進国では歯科治療は歯科医院で行うのが普通です。専用の診療台、診療器具、歯科材料を用い、非常に細かい、正確な治療を行うことができるものです。

一方、発展途上国では先進国のような歯科医院は限られています。国によってはほとんど無い国もあるくらいです。このような発展途上国においてもむし歯はあるわけで、様々な社会インフラが整っていない環境でもむし歯の治療は必要です。そんな劣悪な環境でも使える歯科材料をWHOは求め、某歯科材料メーカーに開発を依頼したのだとか。その結果、世に出たのが担当者が勧める歯科材料だったのです。

この歯科材料の効能書きを見てみると、確かに非常な優れものであることがわかります。歯科材料を用いる場合、充分な乾燥状態でないと使用できないものがほとんどなのですが、この製品は少々唾液に歯が濡れていても接着が可能。しかも、周囲の気候、気温に左右されず常に同じ時間で固まる性質。

値段は若干高めではありましたが、このような優れた製品を使わない手はありません。劣悪な環境で使用に耐えうるなら、歯科医院のような設備が整った場所で治療に用いるならかなりの良い治療結果が得られるはず。強いては患者さんの利益にもつながります。

ということで、僕は早速この製品を注文しました。明日うちの歯科医院に届くはずです。一人でも多くの患者さんの治療に役立つことを願うのみです。

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2009年3月16日 (月)

顎切り手術

今日の日記のタイトル、一体何事かと思われる方がいらっしゃるかもしれません。顎を切ってしまうなんて恐ろしい、何か傷害事件になってしまわないかと想像しても不思議ではないかもしれません。

顎切りとは歯科業界の中での俗称で、正式には顎矯正手術のことを刺します。矯正という文字が入っていますが、この手術は歯の矯正の一環として行われる手術なのです。

通常、歯の矯正治療というと、歯にワイヤーを取り付け、歯を動かす治療です。歯並びが乱れている、乱食い歯を意図的に動かし、歯並びの乱れを修正したり、噛み合わせの不具合を治すのが歯の矯正治療です。ところが、歯の矯正治療を必要とする患者さんの中には、歯を動かすだけでは歯並びが治らない方がいます。顎の骨そのものに問題がある場合です。所謂、受け口の方の場合、下顎の骨が成長しすぎている場合が多いのです。

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また、上顎の成長が下顎よりも劣っている場合もあります。このような顎の骨の成長の不具合により歯並びが乱れているような状態を顎変形症といいます。

どうしてこのようになってしまったのか?遺伝が大きく影響を与えていると言われていますが、詳細な理由はまだわかっていません。

額変形症による歯並びの乱れ、噛み合わせの不具合は、歯を動かす通常の矯正治療のみで治すことはできません。顎の骨そのものを切断し、移動させることが必要なのです。この手術のことを顎矯正手術というのです。

顎矯正手術ですが、これは歯の矯正専門医と歯科口腔外科の専門医が一緒になって行う処置です。手術前には歯の矯正専門医が手術後によって顎を移動させた際、きちんとした噛み合わせ、歯並びになるように矯正治療を行っておきます。これは術前矯正と呼ばれる処置です。この術前矯正が終わると手術になります。

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顎矯正手術は、歯科口腔外科の専門医が行います。全身麻酔で行い、原則として口の中から行います。下の図は顎矯正手術の一例です。Opeshema

顎の骨の中には血管や神経が通っているので、これらの解剖学的な位置を充分に考慮しながら骨を切断し、移動させることが必要です。顎を切る位置や方向、量には制約や限界がありますが、これらを考慮しながら特定の術式に則って手術が行われます。

手術時期は体の成長が止まる時期以降に行われます。概ね18歳以降の年齢に達せば行われます。

手術後はしばらく口を開けられません。手術によって移動した骨は特殊なスクリューで固定しますが、しっかりと骨が再度くっつくまで顎を動かさないように上顎の歯と下顎の歯をワイヤーで固定します。この際、食事は液状のものを口の角から流し込むような形で取ることになります。

手術後、数週間程度で顎をくっつけていたワイヤーは取り除かれ、その後、歯並び、噛み合わせの微調整が行われます。これが術後矯正治療と呼ばれる治療です。

顎矯正治療により下の写真のように噛み合わせのみならず、容貌も変わります。

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2009年3月13日 (金)

入れ歯は体の臓器であるがゆえに・・・

うちの歯科医院は周囲を山や田畑に囲まれた田園地帯にあるせいか、他地区よりも人口が少なく少子高齢化が進んでいる地域の一つです。そのため、高齢の患者さんが大部分を占めています。

高齢の患者さんが多いということはどうしても入れ歯の治療が多くなります。入れ歯といえば、部分入れ歯と総入れ歯があるわけですが、最近多いケースが入れ歯を修理するケースです。入れ歯の一部が割れたり、真っ二つに破損したり、人工歯が取れたりなどなど、入れ歯を手直ししなければいけないケースが多いのです。

僕のモットーとして、入れ歯はなるべく長く使ってもらうことにしています。新しく入れ歯を作り直して欲しいと希望する患者さんが来院しても、入れ歯を作り直すには時間がかかります。直ぐに来院して直ぐに入れ歯を作り直すことはできません。何度か歯科医院に足を運んでもらわないとできない代物だからです。新しく入れ歯を作るまでの間、入れ歯無しでは済まされません。入れ歯が全く無い場合は別として、今使用している入れ歯を使わないといけません。それならば、現在使用している入れ歯に不満があるなら、その不満点を解消するのが先決ではないかと僕は考えます。入れ歯がガタガタしていたり、痛くて咬めなかったり、かみ合わせがしっくりいかなかったりした場合、これらをきちんと修正する。そして、今の入れ歯の不満点を解消してから、新しい入れ歯を作った方がいいのではないかと思うのです。

僕は入れ歯作りの名人ではありません。古い入れ歯の問題点を即座に見抜き、患者さんに満足してもらえる新しい入れ歯を直ぐに作れるほどの技量はありません。試行錯誤をしながらも今使用している入れ歯の問題点を探りながら解決した時点で、その入れ歯を参考にして新しい入れ歯を作る。このようにしないと僕は患者さんに満足してもらえる入れ歯を作り直すことができないのです。

僕は、患者さんには現在使用している入れ歯の問題点を解消した時点で必ず尋ねます。新しく入れ歯を作り直すかどうかを確認するのです。もちろん、僕の考えも伝えますが、最終的には患者さんの判断に任せます。患者さんによっては今使用している入れ歯を使い続けることを選択される方もいますし、新しく入れ歯を作り直すことを希望される方もいます。僕はどちらでもいいと思います。入れ歯は人工物とはいえ体の臓器であるがゆえ、使い慣れた入れ歯がよければそれでいいと考えます。

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2009年3月10日 (火)

4月から歯科治療費値下げです!?

歯科治療で用いる貴金属とは、被せ歯や詰め物に使用されるものです。一見すると銀色に見える金属製の被せ歯や詰め物のですが、中身は金、銀、パラジウムなどの貴金属の合金です。

歯科保険治療では、被せ歯や詰め物で使用される貴金属の価格は公定価格です。どういうことかといいますと、中央医療協議会(中医協)の場によって決められるのです。

元々、貴金属の価格は市場で価格が決められています。売り手と買い手との取引によって価格が決められているわけですが、昨今の経済状況により貴金属の価格は変動が激しくなっています。中医協で決められる歯科用貴金属の公定価格もこの市場の価格変動を考慮し、年に2回歯科用貴金属の公定価格の改定があるのです。

最近では2月25日に改定価格の発表がありました。結果的には前回改定時の価格よりも値段が下がりました。最も多く使われている歯科用貴金属は金の含有率が12%以上の金銀パラジウム合金なのですが、これが昨年10月1グラムあたり808円だったのが、今回の改訂で1グラムあたり638円になります。これはパラジウムと金の素材市場価格が下がったために公定価格が下がったのです。

歯科用貴金属の公定価格が下がるということは、歯科保険治療における金属製の被せ歯、詰め物の治療費も下がることを意味しています。実際には4月以降の治療費から反映されることになります。具体的にどれくらい下がるかは今月中にわかりますが、患者さんにとっては一部治療費が下がることになります。

治療費負担が少なくなることは患者さんにとってはうれしいものだと思います。

金属製の被せ歯、詰め物をセットする予定のある人は4月以降にセットされるなら、今よりも安い支払で済むことになります。

それでは、現在、歯型を取って実際に口の中に被せ歯、詰め物をセットするのは4月以降にすれば経済的ではないか?ということになりますが、確かに治療費を考えれば安くなるでしょう。ただし、被せ歯、詰め物のセットを延期することで思わぬトラブルが生じることも考えられます。

例えば、詰め物をセットするタイミングが遅くなってしまったために、詰め物をセットする歯が割れてしまうなんてこともあるのです。変にケチってしまうと、結果的に治療費が高くなる可能性もあるということです。

治療費が4月以降安くなるからといって変に先延ばししても、果たしてメリットがあるかどうか?これは慎重に考えて欲しいと思います。

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2009年3月 6日 (金)

歯ブラシを強く押し当てていませんか?

患者さんに歯磨指導をする際、いろいろと患者さんに確認することがあるのですが、ほとんどの患者さんが毎日歯を磨くと答えます。一日の歯磨き回数にはばらつきがありますが、最近では一日に複数回、歯を磨かれる方が多いようです。これは厚生労働省が6年に1度発表している歯科疾患実態調査という調査結果にも反映されています。もはや日本では歯磨き習慣は定着したということが言えるでしょう。

それでは、歯磨き習慣が定着したからといって歯磨きがきちんとできているかといいますとこれは別問題です。先ほど書いた歯科疾患実態調査では国民の8割以上が歯周病であるという調査結果も報告されています。この歯周病、歯の汚れとの相関関係が証明されています。むし歯の場合、歯が汚れていてもむし歯にならない場合があるのですが、歯周病は歯が汚れていれば程度の差はあれ歯周病になるのです。国民の8割以上が歯周病である背景には、歯の汚れが多いに関係しています。歯磨き習慣が定着しているのに国民の8割以上が歯周病であるという事実。これは、歯磨きで歯の汚れをきちんと取り除いている人が少ないかということを物語っています。

どうして歯磨きで歯の汚れを取り除けていないのか?いろいろと理由はあるのですが、僕が患者さんの歯磨き指導をしていて感じることは、歯磨きの際、歯ブラシを歯に強く当てている人が多くいるということです。

今は使用する機会は少なくなりましたが、皆さんは箒を使用された経験はあると思います。箒を使って掃除をする際、箒を強く押し当てて掃除をしてもうまく汚れを取り除くことはできません。箒の毛を曲げないように軽く当てながら掃除をして初めて汚れを取り除くことができるものです。

歯ブラシもこの箒と同じです。歯ブラシで歯の汚れを取るのは毛先です。歯ブラシを歯に強く当てると毛が寝てしまい、毛先が全く当たりません。そうなると歯の表面の汚れが取れなくなります。軽く歯ブラシの毛先を当て、毛の弾力を利用して歯磨きをするのです。必要以上に強く磨くと歯の汚れは取れないどころか歯や歯肉を傷つけることになり、何のために歯を磨いているのかわかりません。

ゴシゴシ歯を磨くという言い方がありますが、この“ゴシゴシ”という表現は良くないかもしれませんね。“ゴシゴシ”というと、誰もが力を入れるイメージを想像してしまいますから。とにかく、歯を磨く際には、歯ブラシは軽く歯に当てて掃除をする。これが歯磨きの基本の一つです。

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2009年3月 5日 (木)

薬のさじかげん

医療に薬は無くてはならないものです。一般の病院、医院、診療所、クリニックなどでは来院する患者さんの治療に必ずといってほど薬が処方されます。病気によっては大量で多種類の薬を飲んでいる方も少なくありません。

一般の医者ほどではありませんが、歯医者でも薬を処方することがあります。歯肉が腫れたり、抜歯等の手術をした後には薬を処方します。僕自身、毎日のように患者さんには薬を処方するのですが、最近、あることを感じ出しました。それは、従来出してきた薬の効きが悪くなってきたのではないかということです。

その薬はある抗生物質なのですが、以前、先輩の先生に勧められ依頼使用していました。使い出した当初、確かにこの薬は効果がありましたが、ここ1年余り、どうも効きが悪く、途中で薬を変更することが多くなってきました。

どうしてなのか?愚考するに、この抗生物質が多くの患者さんで耐性菌が出来てきたのかもしれません。歯医者に来院する患者さんは歯医者のみならず、他の一般の病院、医院、診療所、クリニックなどで処方された薬を飲んでいることが多いもの。薬を飲み続けていると、薬の種類によっては体に存在するばい菌、専門的には常在菌といいますが、これらに微妙に影響することが考えられます。常在菌の種類が変わったり、遺伝子レベルで変化が生じたりし、結果として、今まで聞いていた薬が効かなくなくなることがあるのです。

興味深いことがあります。それは、ある薬は一般には効き目があるものの、特定の地域において効きが悪いということがあるのです。これは僕の経験や他の医者、歯医者からの話ではありますが、皆異口同音に薬の効き目には地域性があることを実感しています。これは一体どういうことか?いろいろ理由が考えられますが、地域の人の生活習慣や食習慣、気候、風土、そして、地域の医者により処方された薬の服用になどがあるような気がします。

少なくとも言えることは、薬を漫然と処方していてはダメだということです。患者さんの状態、病歴、アレルギーの有無、薬の効果、他に服用している薬との関係などを考慮しながら処方しないといけません。薬のさじ加減はいつも頭を悩ますところですね。

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2009年3月 4日 (水)

乳歯脱落 大人への階段を上がるために

食事中、ある食べ物を食べていると突然、“ガリッ”という音と衝撃が口の中からしました。何か硬い物でも咬んだのか?口の中には血の味もします。舌で触ってみると小さいながらも非常に硬い。急いで口の中の外に出して見ると、5ミリ程度の白い固形物が見えました。僕は直ぐに気が付きました。これは乳歯だと。

これは今から36年前、僕が7歳の頃に初めて下の乳歯の前歯が抜け落ちた時のことです。しっかりしていた乳歯の歯がぐらつき始め、今にも抜けようとしていたのですが、抜けそうに抜けない状態が続いていました。自分で取ろうとしても痛くて抜くことができず、そのままにしていたのです。

このような乳歯が抜ける経験は誰でも幼少期に体験していることでしょう。ぐらぐら揺れていた乳歯が何か物を咬んだ瞬間に抜け落ちる。何とも気持ち悪い衝撃と音がするものですが、抜け落ちた歯の歯肉の下には永久歯の頭の一部が見えています。僕も何度かこのような経験をしてきましたが、歯が抜け落ちる度に大人への階段を上がっているような気になったものです。

さて、僕は定期的に子供の歯を見ているのですが、現在、7歳の下のチビの乳歯の何本かがぐらついているのを見守っています。既に下のチビは6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯4本が生え、下の前歯2本も生えています。既に永久歯が生えているにも関わらず、下のチビはまだ乳歯が自然に脱落した経験がありません。それはなぜか?

まず、6歳臼歯は永久歯ではありますが、乳歯列の一番後ろに生える歯ですから生えかわってくる歯ではありません。下のチビの場合、既に生えている永久歯は、乳歯が生えているのにも関わらず乳歯よりも内側に永久歯が生えてきたため、僕が乳歯を抜歯した経緯があります。

これまで何回か書いてきましたが、永久歯が生えてきたにも関わらず乳歯が抜け落ちない場合、抜歯の対象となります。本来なら乳歯は永久歯が生えてくると抜け落ちるはずなのですが、生えてくる永久歯の位置が乳歯の真下ではない、ずれてくる場合、乳歯は抜け落ちに残る場合があるのです。これは良いことではありません。永久歯の歯並びが悪くなる一因にもなりますし、むし歯や歯肉炎の原因にもなります。

小学校の歯科検診においても抜け落ちない乳歯は必ずチェックし、永久歯が生えてきているのに残っている乳歯がある生徒には抜歯勧告を行うのが普通です。

下のチビの場合、下の前歯2本の内側に永久歯が生えてきていたのです。僕は嫌がる下のチビを言い聞かせ、抜歯をしました。その後、内側に生えてきた永久歯は徐々に外側に移動しながら生え、今では本来の前歯の位置に生えています。

これは良かったのですが、下のチビはまだ自分で乳歯が抜け落ちる経験をしていません。乳歯は歯医者であるお父さんが抜くものと思い込んでいる節があるくらいで、時々僕に尋ねてきます。

「ぐらぐらしている歯を抜かなくていいの?」

僕は“自然に取れるのを待とうよ“と言いながら様子を見ています。

おそらく、今月中に下のチビのぐらぐらしている乳歯は抜け落ちるでしょう。下のチビもグラグラしている歯が気になって仕方がないようですが、親としてあの“ガキッ”という衝撃と音は体験して欲しいと思います。大人への階段を上がるためにも是非とも経験しなければならないことの一つですから。

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2009年2月26日 (木)

ためしてガッテン“口内炎スピード完治”を見て

時々、僕の日記でも取り上げているこの番組。口や歯のことも時々取り上げているのですが、昨日放映された内容は口内炎についてでした。内容を要約すると次のようなところだったのではないでしょうか。

・口内炎は口の中に傷がつくことがきっかけになるものと原因がよくわからないものがある。

・口内炎には口の中の常在菌と呼ばれる雑菌が関与している。

・口内炎は唾液不足である場合が多いこと。

・口内炎を治すには口の中の雑菌を減らすうがいが効果的であること。

・ビタミン不足による口内炎は全口内炎の10%程度であること。

・治り難い口内炎の中にはガンである場合があるため、専門医に診てもらった方が良い場合がある。

口内炎に関して、これまで“歯医者さんの一服”日記でも取り上げてきましたが、口内炎に関して言えることは口内炎がどうしてできるのか、そのメカニズムはまだよくわかっていないのです。昨日の番組の中でも、ストレスや免疫力の低下により口の中の粘膜に潰瘍ができ、口内炎になるとの説明がありました。

よく、病院に長期入院している患者さん、特に、抗癌剤の治療を受けている人の副作用の一つとして口内炎が挙げられます。これは、抗癌剤の影響により免疫の機能が低下し、口内炎が口の中に多発することによります。免疫と口内炎は密接な関係がある一例です。

ただ、どうしてストレスや免疫力の低下が口の中の潰瘍を作るのか?そのメカニズムはまだ不明なのです。僕が口内炎の原因はまだわかっていないと書く理由がここにあります。

原因がわかっていない以上、原因療法と呼ばれる真の治療法はありません。昨日の番組では、うがいが効果的であることが言われていましたが、これはあくまでも対症療法であることを知っておく必要があります。

対症療法であるが故、口内炎が治るには時間がかかることを理解しておく必要があります。昨日の番組のタイトルは“口内炎スピード完治”でしたが、これには僕は多少の違和感がありました。口内炎の原因がわからない以上、対症療法が中心の今の治療では口内炎の治りには時間がかかることを知っておく必要があると思うのです。

また、口内炎用の軟膏についてですが、昨日の番組では口内炎用の軟膏について塗り方に注意する必要があるとの説明がありましたが、これも対症療法であるが故です。口内炎用の軟膏に頼りすぎると治りが遅くなる傾向になってしまうことは確かにあります。

僕の治療経験では、口内炎で最も気になる症状が痛みであることを考えれば、痛みを取る意味で炎症を抑える目的の口内炎用の軟膏塗布は効果的だと感じています。急性の症状の時には口内炎用の軟膏は非常に有効です。

ただし、急性期を過ぎた口内炎に関してはうがい薬でうがいを励行し続けることがいいとは思います。これは昨日の番組の意見に同意します。

昨日の番組では口内炎と思っていたらガンである場合があるので注意しないといけないと紹介されていましたが、ガン以外にも口内炎には注意しないといけない場合があります。

例えば、入れ歯を入れている人の場合、入れ歯が合わず入れ歯によって傷がつき、口内炎のようになっているケースがあります。この場合、いくら口内炎用の軟膏やうがいをしても治りません。入れ歯そのものを調整しないと治らないのです。よく高齢者で口の中の口内炎が治らないと言って歯医者を受診される人がいるのですが、実際に診てみると入れ歯が原因であることが多いものです。

また、口内炎の原因の中で特定の雑菌によるものがあります。ウィルスや一種のカビによる口内炎があります。この場合は、うがいをしても通常の口内炎用の軟膏を塗っても効果が少ないのです。専用の軟膏や場合によっては内服薬を服用しないと治らない場合があるので注意が必要でしょう。

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2009年2月23日 (月)

鼻炎と歯痛

先日、歯痛を訴えた患者さんが来院されました。何でも数日前から上の奥歯に違和感が生じたのだとか。そのうち徐々に噛むと痛くなるような感じとなり何か歯にむし歯ができたのではないかと疑い、うちの歯科医院を受診したのだとか。

早速、口の中を診てみました。患者さんが訴える奥歯は左上の奥歯だったのですが、特にむし歯は認めず、歯肉が赤くなったり、腫れたり、膿を認めることはありませんでした。極めて健康な歯ならびに歯肉の状態だったのです。歯を叩いていくと第二小臼歯と呼ばれる歯が最も痛がられ、その次に第一大臼歯と呼ばれる歯に違和感があるようでした。口全体を撮影することができるレントゲン写真を撮影しながら、患者さんに問診をしたのですが、その際、僕はあることを確認しました。

「最近、鼻や頬が重たい感じがありませんでしたか?」

「実は、先日来、近くの耳鼻科の先生の診療所で鼻炎の治療を受けています。」

撮影したレントゲン写真を確認しながら、僕は患者さんに伝えました。

「今回の歯痛の原因は歯ではないようですね。」

「えっ!一体どういうことですか?」

「原因はここです。」

僕がレントゲン写真のある部分を指差しました。そこは、左上の奥歯の根っこ付近。正確には上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれる場所でした。

人間には解剖学的に頭の部分、脳の下部に空洞があります。大きく分けて4つの空洞があるのですが、これを専門的に副鼻腔と言います。中でも奥歯の根っこの近くにあるのが上顎洞と呼ばれる副鼻腔です。副鼻腔は鼻と交通しているのですが、それ故に鼻に何らかの炎症やばい菌による感染が生じると副鼻腔に波及することがあります。これが副鼻腔炎、いわゆる蓄膿です。鼻詰まりや鼻や頬が重たくなったり、臭い鼻汁が出たりするのが特徴です。通常はこうした症状なのですが、副鼻腔炎の中でも上顎洞炎の場合は、歯に異常を感じるようなことがあります。歯の中でも上顎洞と近接している上の歯の第二小臼歯、第一大臼歯と呼ばれる歯に症状が現れることが多いのですが、患者さんからすれば歯に異常があるように感じることがあるのです。

今回の患者さんはまさにこのケースでした。口全体のレントゲン写真にも左上の上顎洞の部分に若干異常が認められたのです。僕は、患者さんには口の中は全く問題がないこと、歯痛の原因が鼻炎から来ており、蓄膿になっている可能性があることを伝え、処置については耳鼻科主治医に依頼して欲しい。紹介状も書いたので耳鼻科主治医に手渡して欲しいと伝えました。

歯以外が原因で歯痛が起こることはちょくちょくあるものです。患者さんからすれば歯が痛むような感覚なので如何にも歯が原因だと思われることもあるようですが、自己判断することなく、まずはお近くの歯医者を受診して欲しいと思います。

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2009年2月19日 (木)

むし歯は確実に減少している

昨日、某歯科業界雑誌を見ているとある調査結果が出ていました。その調査とは平成20年度学校保健統計調査速報。これは毎年文部科学省から発表している調査で、毎年学校で行われている定期健康診断の調査結果を元に集計したものです。

この中で僕が注目したのは12歳児のDMF歯数の値でした。DMF歯数とは、平たく言えば、むし歯になった永久歯の本数のことです。12歳児というのは小学校6年生が該当し、乳歯が抜け落ち永久歯と生え代わった時期でもあります。子供における歯の衛生状態を知る指標の一つとされ、世界的にはWHO(世界保健期間)が目標値を定めている値でもあります。

過去の値は以下のようなものでした。ちなみに毎年データは公表されていますが、ここでは5年毎のデータを示します。

平成元年度 4.30

平成5年度 4.09

平成10年度 3.10

平成15年度 2.09

そして、今年度である平成20年度は1.54でした。

過去20年間で小学校6年生の永久歯のむし歯の数がほぼ3分の1に減少したことがおわかりかと思います。

このことは毎年小学校で歯科検診をしていても実感します。永久歯がむし歯であると判定することが少なくなりました。地域や学校間に多少の差はありますが、総じてむし歯は減ってきているように思います。このことは、歯医者をしていても感じます。最近、子供のむし歯で治療をする機会が減ってきました。子供の患者が多い歯科医院でもむし歯の治療で受診するというよりはむし歯予防のために受診するケースが増えていているようです。

うちの歯科医院でも子供の患者を治療する機会が減ってきました。元々、人口が少なく少子高齢化が進んでいる地区ではありますが、それにしても小学校でむし歯の治療勧告を受けて受診するような子供そのものが減ってきています。

子供のむし歯の減少は将来の大人のむし歯の減少にもつながります。大人になるにつれてむし歯の本数は増えていく傾向にあるのですが、子供時代のむし歯が減少すれば、大人になってからのむし歯の数も自ずと減少してきます。

かつて日本ではむし歯の洪水と呼ばれた時代がありました。今のように歯医者が少なかった時代、老若男女むし歯をたくさん持っている人が多く、限られた歯医者になだれ込むように受診していた時代があったのです。それくらいむし歯が多かったのですが、今では小学校6年生で永久歯のむし歯の数が平均で1.5本程度となったのです。

どうしてこのように減少したか?いくつか理由があるとは思いますが、やはり学校での定期検診による効果、そして、歯磨きをはじめとしたむし歯予防の実践が世の中に浸透してきたことが大きいでしょう。この傾向が今後も続くことを望みたいですね。

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2009年2月12日 (木)

口の中の健診の勧め

先日、うちの歯科医院にある患者さんが来院しました。この患者さんは数年ぶりの来院だったのですが、特に自覚症状もなく、久しぶりに口の中を診て欲しい、定期健診を希望で来院されたのです。

実際に口の中を診てみると、むし歯はなく、歯周病の状態も多少の歯石が付いていることを除けば極めて良好な状態でした。レントゲン写真も撮影しながら、この患者さんの過去のカルテを調べてみると、数年前の前回来院時、ある親知らずを抜歯していたことを思い出しました。

“たしか親知らずの骨の中に埋まっていたよな。抜歯は時間がかかって大変だった。患者さんもよく頑張ってもらったよなあ”なんてことを思いながら、元々親知らずがあった場所も確認しました。まるで何もなかったかのようにきれいに治っていました。レントゲン写真でも確認しましたが、親知らずがあった場所は顎の骨がきれいに再生し、親知らずが埋まっていた痕跡さえ見えなかったくらいでした。

そんな状態をみて僕は安堵するとともに改めてあることを感じました。それは、長期的に経過を診ていくことでいろいろなことが見えてくるということです。

歯の病気は一度かかると患者さん自身で治すことはできません。専門家である歯医者が治療を行ったり、指導をしたりしながらむし歯や歯周病の治療を行っていくものです。抜歯などはその最たる例で、患者さん自身が自分の歯を抜くことはまずは無いことでしょう。

ただ、治療の後はどうかというと、これは患者さんに任されます。せっかくむし歯を治しても患者さんが歯を磨かなければ再びむし歯が起こるリスクは極めて高くなります。歯周病に関しては、きちんと歯磨きを続けないとどんどん進行し、結果的に歯がぐらつき抜けてしまう結果となります。

歯医者の治療は極端に言えばその場限りの治療である側面があります。患者さんの訴えに対して治療を行い、治療が完了すればそれで終了になります。ところが、患者さんの歯や口の中、それ以外の体全体は常に新陳代謝しています。同じように見えていても体の中は常に変化し続けているもの。当然のことながら治療を行った場所も体の新陳代謝の影響を避けることはできません。

患者さんを定期的に診ていくと、過去に歯医者である自分が行なった治療の経過や患者さんの体の変化がよくわかります。変化が体にとって良い方向に変化していれば、歯医者は何もせずに経過を見ていればいいだけ。もし、何か異常があれば状態に応じて適切な治療や指導を施せばいいのです。

このことは患者さんにとってもプラスになるはずです。定期的にかかりつけの歯医者にかかり、自分の口の中を診てもらうことは、自分では自覚できない微妙な体の変化や異常をチェックし、場合によっては治療を受けることができるからです。誰しもいつまでも健康であり続けたいものですが、自分では気を遣っていても自分が気が付かない、気が付き難い場所があるもの。第三者的な存在が必要です。歯や口の中に関しては、まさしくかかりつけ歯医者がそのような第三者的な存在となります。皆さんにおかれましては、是非ともかかりつけの歯医者を一人見つけ、定期的に自分の口の中を見てもらえるようにして欲しいと思います。口の中の健康は結果的に体の健康維持にもつながるものですからね。

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2009年2月10日 (火)

歯医者ではアクセサリー厳禁!?

昨日、ある患者さんの口全体のレントゲン写真を撮った時のことでした。写し出された画像を見て、僕は思わず言ってしまいました。

「しまった!またやってしまったよ。」

どうしてこのようなことを思わず口にしてしまったか?それは、画像の中にピアスの像が写っていたからです。

口全体のレントゲン写真というのはこのような写真です。

Sousan1

ちなみにこの写真は数年前の僕の写真です。単に歯だけではなく顎から耳の方まで写っています。もし、耳にピアスやイヤリングをつけていると必ず画像に写ります。金属製のピアスやイヤリングはX線を通さないため、白く写るのです。

しかも、このレントゲン写真画像は、ある理由のため耳付近だけでなく、歯の一部にもピアスやイヤリングの画像が写る仕組みになっています。耳付近であればまだしも、肝心の口の中にこれら画像が写ると読影の障害になります。きちんとした診断をすることができない可能性が出てくるのです。

ピアスやイヤリング以外にレントゲン写真撮影の失敗でよくあるのは、入れ歯です。口全体の写真を撮る際、入れ歯をはずしてから撮らないといけない場合が多いのですが、患者さんに入れ歯をはずすことを指示することを忘れ、入れ歯の画像が写し出された画像を見てから失敗に気が付くことがあります。そのような場合、取り直しをするのですが、いくらレントゲンの照射線量が体に与える影響が少ないとはいえ、レントゲン写真を取り直しするのはあまり気持ちの良いものではありません。

歯医者で口全体のレントゲン写真を撮影する際、必ずピアスやイヤリング、それから、首につけているネックレスといったアクセサリー類ははずしてもらうか、はずしたまま歯医者に出かけて欲しいと思います。今日の日記のタイトルのような“厳禁”というわけではないのですが、レントゲン写真検査の際、これらを着用していると障害となるからです。

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2009年1月26日 (月)

閉口した美容師の口臭

先日、僕はいつも髪の毛をカットしてもらっている美容院へ行きました。そこでは、僕はその美容室の店長にカットをしてもらっているのですが、洗髪は若手のスタッフが行っています。先日もいつもと同じように店長にカットをしてもらい、その後、洗髪をしてもらうことになっていました。

店長によるカットが終わり、洗髪をする直前のことでした。何となく不快な臭いに僕は気がつきました。その臭い、明らかに洗髪をしようとしていたスタッフから発せられた臭いでした。明らかに口臭でした。洗髪担当のスタッフは僕をリラックスさせようといろいろと世間話をしてくれながら洗髪をしてくれたのですが、その都度、僕はこの臭いには閉口しました。

ところで、口臭というのはいくつかの原因がありますが、最も多いのが口の中の汚れが原因となっているものです。未治療のむし歯や歯周病、口の中に残った食べかすや歯に付着した歯垢などにより臭気が口の中から発せられるのです。

しかも、困ったことには口臭は発した本人が気がつかないことが多いもの。人間の嗅覚というのはそれなりに繊細なものではあるのですが、ずっと同じ臭いを吸っていると、その臭いに慣れてしまい、同じ匂いを感じにくくなる性質があります。他人からすれば異質な臭いである口臭も同様で、同じ口臭を発していると、口臭を発している本人はその臭いに気がつかないのです。

僕自身、かつて口臭に苦しんでいたことがありましたが、その最大の理由は自分の口臭を自覚することがなく、いつも周囲から指摘されてきたことにありました。幸い、僕の場合にはお袋が僕の口臭をいつも指摘してくれましたが、きちんと歯を磨いているのにどうして口臭がするのか悩んでいました。後年、僕の口臭の原因は歯と歯の間に溜まった歯垢であることがわかり、歯間ブラシを丹念に使用して取り除くことにより、口臭がなくなったそうです。これも僕は自覚が無いのですが、お袋や嫁さんが指摘してくれています。

僕自身、そんな経験がありましたし、自分が歯医者でもあるので口臭があることを指摘した方がいいか考えました。しかしながら、口臭を指摘するにはそれなりに気を遣います。誰しも“お前の口は臭い”と言われれば、気持ち良く受け取る人は無いでしょう。結構精神的にショックを受ける場合が多いと思います。僕自身、家族からでは他人から口臭があると言われ、非常に精神的にダメージを受けた記憶があります。

ですから、この洗髪している担当者に口臭のことを言っていいものか?悩みました。

口臭に接しながらどうすべきか考えた結果は・・・

美容室から帰宅する直前、店長にこの洗髪をしてくれたスタッフの口臭のことを耳打ちしました。

口臭があること、その原因は臭いの種類からすれば歯周病があること、今は直ぐにでも歯磨きをしておいた方がよいこと、そして、一度かかりつけの歯科医院で歯周病の治療を受けた方がいいことを話しておきました。店長は頭を下げていましたが、人と間近に接する職業の人は口の息の臭いにも気を遣わないといけないものだと改めて感じた、歯医者そうさんでした。

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2009年1月22日 (木)

いつまでも生え代わらない乳歯

僕は時々自分の子供の口の中を診ることがあります。僕の子供は10歳と7歳なのですが、さすがこの年齢になると自分で歯を磨くようになっています。けれども、この年齢は乳歯が永久歯と生え代わる時期。長い人生の中でも最も大きな変化の時期とも言えるでしょう。特に永久歯は生えてきた時はまだ未完成で、むし歯になりやすい時期でもあります。また、歯並びのチェックも必要で場合によっては歯の矯正治療が必要な場合もありえます。僕は親として自分の子供たちの歯には責任を持ちたいと考えていますので、定期的に彼らの口の中をチェックするようにしています。

ところで、乳歯が永久歯と生え代わる時期ですが、概ね小学校の間で生え代わるものです。もちろん、個人差はあります。中には、特に女の子の早熟な子の場合には既に小学校の4年生くらいで全ての乳歯が永久歯と生え変わっているようなこともあります。

その一方、高校生になっても乳歯が残ってまだ永久歯と生え変わっていないような子もいます。親御さんの中には子供の永久歯への生え代わりが遅く、心配される方がいらっしゃいます。このような場合、現状を知るにはレントゲン写真が一番です。永久歯がどのような位置にあるのか一目瞭然なわけですから。乳歯の真下にあり、間も無く生え代わる位置にあるのか、骨の中で埋もれたままか、生え代わる位置がずれているのか、それとも、永久歯が存在しないか?各々の状況に応じて対策を考えていけばいいでしょう。

先日、60歳代の患者さんが来院されました。定期検診を希望で来院された患者さんだったのですが、口の中を診ていると、僕はあることに気がつきました。それは、上の歯の一本に乳歯が残っていたからです。第二乳臼歯と呼ばれる乳歯で、本来なら第二小臼歯という歯と生え代わる歯なのです。僕はレントゲン写真を撮りました。結果は本来生え代わるべき第二小臼歯が存在しませんでした。すなわち、この患者さんは生まれつき第二小臼歯が作られなかったのです。

このようなケースは時々あります。生え代わるべき特定の永久歯が無い方はまれにあるのです。このような場合、どうするか?基本的には乳歯はそのままにしておきます。状況によっては乳歯の根っこが小さくなり動揺が激しくなってきたりしますが、患者さんが気にならず、機能として問題なければ、なるべく乳歯を残しておくのが基本です。

今回の患者さんは自分の歯の一本が乳歯であることは全く気がついておられませんでした。僕は現状を説明した際、この事実を伝えましたが、患者さん曰く

「私はこんな年齢になっても優柔不断なところがあるのですが、今日その理由がわかりましたよ。乳歯が残っていたからなんですね。ハハハハハ・・・・。」

口の中の管理が行き届いていたこの患者さん、乳歯にはむし歯一つ無く、根っこもしっかりしており、治療を必要としない健康そのものでした。おそらく一生この乳歯とお付き合いすることになることでしょう。

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2009年1月 7日 (水)

歯医者が恐れる患者とは?

「ということで、○○さんという患者の歯の治療、宜しく頼むわ。」

発言の主は愚弟です。愚弟はうちの近所の某病院で内科医として働いています。内科と言ってもいろいろな専門がありますが、愚弟の専門は循環器。心筋梗塞や狭心症、不整脈などの心臓の病気を専門に治療しているのです。

現在、心臓の病気はガンについて第二位の死亡原因疾患です。厚生労働省も2010年までの健康目標として健康日本21という目標を立てているのですが、その中に10の重点項目の一つに心臓の病気があるくらい、心臓の病気に対する対策は国の急務となっているといっていいでしょう。しかも、昨今の医師不足。世間では、救急医や小児科医、産科医、麻酔科医の不足が取沙汰されていますが、循環器内科医も大変な不足です。うちの近くの病院を見渡してもここ数年で循環器科の閉鎖が相次いでいます。そのため、愚弟が勤務している病院では心臓の病気の患者さんが集中し、非常に忙しい日々を過ごしているようです。

愚弟は、時折僕に患者さんを紹介してくれます。冒頭の発言もそんな愚弟からのものだったのですが、患者さんを紹介してくれるということは歯医者にとって非常に有難いと思います。何せ、医師不足ではありますが、歯医者は過剰です。多くの歯科医院では年々患者の減少に悩まされ、経営を圧迫する結果となっているのです。うちのそんな零細歯医者の一軒なのです。それ故、愚弟からの患者さんの紹介は有難いのですが、紹介されてくる患者さんは皆、心臓の病気を持っているという事実。

愚弟からの紹介状を読むと、必ず心筋梗塞や狭心症、不整脈といった心臓の病気の羅列があります。やはり健康な患者さんに比べ、心臓の病を持っている患者さんの治療はそれなりに緊張します。もし何か起こったらどのように対処すればいいか?ということを常に考えておかないといけないからです。

その反面、僕は安心するところがあります。その訳は、これら患者さんは、愚弟がしっかりと管理してくれているからです。愚弟は僕に紹介してくれる患者さんは、基本的に症状や病状が落ち着いている、歯の治療に耐えられると判断した患者さんのみを紹介してくれるからです。常に備えはしておかなければなりませんが、愚弟が心臓の病気をしっかりと管理してくれている患者さんは、ある意味、不安なく歯の治療をすることができます。非常にわかりやすい患者さんでもあるのです。

最近、一定の年齢以上の患者さんであれば、何か薬を常用していることが多くなってきました。糖尿病、高脂血症、高血圧症といった生活習慣病でかかりつけ医にかかっている人は多くなってきています。その一方で、これら生活習慣病に全く無自覚、無関心であったり、知っていても医者にかからない人もいます。どちらが歯医者にとって怖いかと、もちろん後者です。

歯医者は治療を行う前には必ず問診をしますが、何らかの医者にかかっている人は歯医者としても安心です。目の前の患者さんがどんな病気があり、どんな治療を受けているか、必要な医療情報を持っているからです。医療情報を持っていれば、ある程度の心構え、備えができます。ところが、患者さんが何らかの病気があるのに医者にかかっていないような場合、歯の治療中に突然、何らかの症状を起こす可能性があるのです。突然、気分が悪くなったり、けいれんが起こったり、胸が痛くなったりなんてことがあるのです。

歯の治療中に歯以外の病気による症状が起こっても、専門医の治療を受けさせるまでは、患者さんの体の管理は歯医者が行わないといけません。事前に何も聞いていなかった患者さんが突然何かの歯以外の症状を訴えることほど、歯医者にとって怖いものはないのです。

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2008年12月15日 (月)

性質の悪い歯周病

国民の8割以上が罹っている言われる歯周病。かつて歯槽膿漏と言われていた歯周病ですが、これほど多くの人が罹っているということは、非常に深刻な健康問題であることは間違いありません。それにも関わらず一向に減少傾向が見られないのは多くの人に自覚症状が無く、ある程度病気が進行しないと事の重大さに気がつかないせいかもしれません。歯周病はsilent disease、静かに進行する病と言われる所以です。

歯周病は原因がほぼ特定されています。それは、口の中のばい菌の塊である歯垢、プラークです。歯垢には1ミリグラムあたり1億個のばい菌がいるのです。たった1ミリグラムに日本の総人口にあたるばい菌がいるわけです。想像を絶する量のばい菌が口の中にいることがおわかりいただけると思います。このばい菌の中の何種類かのばい菌が歯周病を起こすだろうということがわかってきました。ただ、完全に歯周病菌を特定するには至っていません。言えることは、これら歯周病菌を含んだばい菌の集団、歯垢が存在することで歯周病が進行することは明らかです。歯磨きをするということは、これら無数のばい菌の数を定期的に減少させることにつながります。歯周病はばい菌の数が減れば減るほどかかりにくくなるのです。

それでは、実際に歯を磨いているにも関わらずどうして国民の8割以上が歯周病なのか?やはり磨いているという実感と実際に歯垢が取り除かれている客観的な事実との間に相当差があるからでしょう。僕も何人もの患者さんを診てきましたが、実際に歯を適切に磨き歯垢を取り除くことができている患者さんは非常に少ないのが現状です。単に自己流の歯磨きではなく、定期的に専門家による歯磨指導とチェックが必要だろうなあと強く思う今日この頃です。

ところで、歯周病の中には思わず“えっ!”と言いたくなるような歯周病があります。通常、歯周病は非常にゆっくりと進みます。また、限局的なものもあるものです。そのため、歯周病の患者さんの多くは30歳代以降の方が多いものです。(歯周病の一種である歯肉炎と呼ばれるものは、もっと早い年齢から多く見られます。既に小学生から見られる場合が多いですね。)

ところが、年齢が若いにも関わらず全ての歯で歯周病が非常に進行しているケースがあります。以前は若年性歯周炎、現在では侵襲性歯周炎と呼ばれるタイプの歯周病です。放置していれば高齢にならないうちに全ての歯が脱落してしまうだろうと思われる歯周病。これは特定の歯周病菌によることが言われています。そして、遺伝性といいますか家族性の歯周病でもあります。すなわち、親が侵襲性歯周炎であれば子供も侵襲性歯周炎である可能性が非常に高いのです。

この非常に性質の悪い侵襲性歯周炎に関してですが、治療法はやはり適切な歯磨きの実践であることは言うまでもありませんが、それ以外に通常の歯周病の治療よりもより綿密に定期的な歯医者による徹底的な管理が必要だといえるでしょう。患者さんだけで歯磨きをしていても病気の急速な進行を抑えることができないケースが多いのが侵襲性歯周炎の特徴です。

侵襲性歯周炎に罹っている人は非常にアンラッキーだと思います。かつては若い頃に全ての歯を抜歯し、総入れ歯になっていたケースも多かったはずです。現在では、少しでも歯を長持ちさせようといくつかの治療法が行われていますが、専門家である歯医者や歯科衛生士とともに一生付き合っていかないといけない歯周病であることは間違いありません。

続きを読む "性質の悪い歯周病"

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2008年12月12日 (金)

歯科用品にもバーゲンセールがある

歯科治療で用いる器具は多種多様ですが、どの器具にも共通して言えることがあります。それは消耗品であるということです。耐久性には差がありますが、どの器具も交換したり、買い換えなければならない宿命があります。これは日常品でもいえることですが、歯科治療で用いる器具の場合、多くの器具が安くはありません。歯科専用で用いる器具の場合、日常生活品と同じように大量生産することがないわけですから、自ずと単価が高くなるのです。これら器具の維持、管理には相当な経費がかかるわけで、安ければ安いほどいいわけです。その一方、安かろう悪かろうでは許されません。患者さんに用いる治療器具ですから、それなりの品質、安全性が確保されなければ意味がありません。

どのようにすれば一定の品質、安全性を確保した治療器具を安く購入できるか?

これから衣料品などは冬のバーゲンセールを迎えますが、歯科で用いる治療器具には特定の時期に安売りをすることがあります。例えば、メーカーの在庫処分の時期とか、顧客に対して感謝セール、季節限定のバーゲンのようなことがあるのです。歯科器具にもこうしたバーゲンセールがあるのです。歯科器具を販売しているメーカーは歯科器具が高い買物であることをよく知っています。定価ではなかなか売れないことも承知しています。そのため、定期的に単価を安くすることにより少しでも多くの量を歯医者に購入してもらい、利益をあげようと考えているものなのです。

歯科医院には必ず歯科器具、材料などの注文を取りにくる歯科材料店の担当者がいます。その担当者は治療器具のバーゲンになれば必ずパンフレットなどを持ち込み、安売りの時期があることを知らせてくれます。先日、うちの歯科医院にも出入りしている歯科材料店の担当者がある器具の期間限定バーゲン品の告知を記したパンフレットを持ってきてくれました。僕は早速このパンフレットに目を通し、歯科器具の在庫の状態と使用状況を確認しながら、どれくらい購入できるか検討し、注文を出すことにしました。

こうした告知は歯科医院を経営する歯医者にとって非常に助かるものです。決して安くはない治療器具を如何に品質、安全性を落とさず安く購入するかいつも悩んでいるものですからね。

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2008年12月11日 (木)

口内炎は歯医者で治しましょう!

数日前、僕の下唇の粘膜には口内炎ができました。下唇に何か痛みのようなものを感じるなあと思い、鏡で確かめてみると直径0.3センチ程度の口内炎があったのです。僕は直ちに口内炎用の軟膏を患部に塗布しました。今朝の時点では口内炎はあるものの大きさは半分程度にまでなりました。舌で口内炎を触っても違和感はなく、ほぼ気にならない状態にまでなってきました。

口内炎はほとんどの人が苦しんだ経験があるのではないかと思います。ある時突然、口の中が荒れたような状態になり痛みを感じる。口の中がただれているような熱さを感じるような症状が出るものです。どうすればいいのかわからずそのまま放置している人も少なくないように思います。

口内炎に関してはいろいろと研究があるようですが、本当の原因はわかっていません。体調や免疫のバランスの崩れ、栄養状態の問題等々言われていますが、口内炎発症のメカニズムは見つかっていないのが現状です。そのため、口内炎の治療は基本的には症状が出現してからの対症療法です。

具体的にはある種のステロイド入り軟膏を塗布することが治療法となります。口内炎は口の中の粘膜が炎症を起こし、粘膜の上皮の一部が欠けている状態です。軟膏を塗布すれば、炎症を抑え、欠けている粘膜の一部を保護することができます。そのことで症状を抑え、口内炎の治りを早くさせるのです。

一方、口内炎の中には特定のばい菌によるものがあります。カビの一種であるカンジダ菌やある種のウィルスによるものです。これらは通常のステロイド入り軟膏では効果が少なく、特定の軟膏や場合によっては飲み薬を飲まないといけない場合があります。

口内炎は放置していても最終的には治るものですが、治るまでの間、非常な違和感を覚えます。たかが小さな口の中の口内炎でも痛みを伴ったものは非常に気になるもの。適切な処置を行えば、こういった苦しみからは少しでも早く解放されるものなのです。口内炎ができれば、直ちに歯医者に駆け込み専用の軟膏を処方してもらった方が得策だといえるでしょう。

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2008年12月10日 (水)

親知らずは抜歯すべきか?

「先生、私の親知らずは抜いた方がいいのでしょうか?」

先日、口全体のレントゲン検査をした際、ある患者さんが僕に問いかけてきた質問です。この患者さんは中年の男性だったのですが、レントゲン写真には、右下奥に横向きに埋まっている親知らずが写っていたのです。これまで全く症状もなかった親知らず。患者さん自身もレントゲン写真を撮影するまで親知らずの存在すら自覚していなかったくらいです。

親知らずの抜歯に関しては、専門家である歯医者の間でも未だに議論があります。積極的に抜歯した方がいいという意見と痛みや炎症といった症状が出なければそのまま経過をみていった方がいいという意見があります。僕の個人的な意見は後者の方です。ただし、将来的なことを考えると抜歯しておいた方がいいのかなと思うこともしばしばです。なぜなら、歯は年齢を重ねれば重ねるほど抜歯しにくくなるからです。

一見すると、一度生えた永久歯は形が変わらないように見えます。ところが、実際は微妙に歯の形は変わってくるものです。特に、普段目にすることはない歯の根っこの部分は年齢を重ねるほど変化してきます。例えば、根っこの先が太くなったり、釣り針のように尖ってきたりします。また、顎の骨とも癒着することもあるのです。これら根っこの状態の変化は、体にとって何も問題はないのですが、歯を抜くことに関しては大きな問題です。歯医者が抜歯をする際、簡単に歯を抜けない要因になるからです。

特に親知らずの場合、一番奥に存在しているわけです。口という非常に狭い空間の中の一番奥に位置する親知らず。歯医者が手を入れるにも入れにくく、操作しにくい場所にあります。しかも、奥にあるということから視野が限られてくる。そのような状況の中、親知らずが骨の中に埋まっていたり、根っこが太かったり尖っていたりしていると、歯医者は非常に抜歯しにくい状況にあるのです。親知らずの抜歯に時間がかかる理由がここにあります。

一般の開業歯科医であれば、限られた診療時間内で親知らずを抜歯しようとしても、技術的に困難な場合があります。そのため、多くの開業歯科医では親知らずの抜歯に関して、歯科口腔外科の専門医へ紹介し、抜歯してもらう場合が多いのです。

歯科口腔外科の専門医であれば毎日のように親知らずを抜歯していますので手早く抜歯できるでしょうが、それでも時には抜歯に手間取る場合もあります。よく歯科口腔外科医が口にする言葉に“歯科口腔外科は抜歯に始まり抜歯に終わる”という言葉がありますが、これは抜歯が簡単そうに見えて奥が深い手術であることを物語った非常に含蓄のある言葉なのです。

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2008年12月 9日 (火)

新しい製品は使用しないとわからない

歯科治療では様々な器具、材料を用いて治療を行います。歯医者はこれらを取捨選択して用いるわけですが、器具、材料は多種多彩あり、いくつものメーカーが存在します。各社とも自社製品の開発にそれなりの投資をし、PRしています。

先日、某所で歯科治療用の器具、材料の展示、販売を目的とした催しがあり、僕も参加してきました。広大な展示場の中に200社以上の歯科関連企業が出店しており、1日で全てを見るのは難しいくらいの状態でした。いくつかの材料に注目していた僕は、担当者の説明を求め、情報を集めてきました。疑問に思っていたこと、知りたかった情報を得ることができ非常に有意義な催しであったのですが、その一方で、これまで感じていたある思いを一層強く持ちました。それは、新しく開発された器具、材料は実際に使用してみないとわからないということです。

このようなことを書くと患者さんは非常に不安を感じるかもしれません。自分が人体実験にされているかのように思われるかもしれません。

実際のところ、各社は製品を開発するに当たり、人に使用するに際し、何度も実験を加えています。研究室での実験から実際に販売する前にはいくつかの歯科大学、大学歯学部や懇意にしている歯科医院でも実験、検証をしてもらい、問題がないことを確かめてから製品として売り出しています。

ただ、実際の口の中は予想もしないことが起こりえます。一人一人の口の中の状態は、一人一人の顔が異なるのと同様、全く同じものがありません。そのため、慎重に開発してきた製品を用いた結果がどのようになるか予想がつかないところがあるのです。

この点、薬とよく似ています。薬は、多額の費用を投資し、何年も研究を重ね、厚生労働省による厳しい審査を受け、認可を受けたものが使われます。ところが、薬には必ず副作用があります。これは薬の宿命みたいなものです。全ての人に使用できるように慎重に開発された薬でも思わぬ副作用が出現するものなのです。

それでも僕は新しい製品には期待します。なぜなら、従来の製品の中に完璧だと思うものがないからです。使用しているうちに不都合なことやもっと改善すべきことがあるものなのです。そんな不完全な製品を患者さんに使用しているのか!とお叱りを受けるかもしれません。この点は申し訳なく思うのですが、この理由も上記と同じです。患者さんごとに異なる千差万別の口全てに合致した製品が未だに存在しないのが現状だからです。

歯科器具、材料メーカーは少しでも全ての患者さんに使うことができる製品を日々開発しています。少しずつではありますが、その目標に近づいているようには思いますが、なかなか完璧なレベルに達するには時間がかかります。歯医者は常に少しでも患者さんにとってメリットのある、どんな患者さんにでも完璧に使用することができる歯科製品を求めながら、今の時点で最良と思われるものを使用しているのです。

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2008年12月 8日 (月)

予防接種と抜歯について

先週末から寒波が襲来し、当地でも非常に寒くなりました。底冷えとも言えるような寒さです。既に今年も残り20日余りの年の瀬。冬本番になってきたといえるでしょう。

冬といえば、どうしても避けられないのがインフルエンザでしょう。今年も全国各地でインフルエンザが流行し始めているようですが、歯医者にとって非常に厄介な問題です。何せ毎日患者さんの口の中を治療しているわけです。毎日患者さんの口と接していると患者さんの息と常に向き合わざるをえません。ということは、患者さんが風邪をひいていれば風邪が移る可能性が高いということです。患者さんがインフルエンザに感染していればインフルエンザが伝染する可能性も高いということです。これは歯医者としての宿命でもあるわけですが、少しでもインフルエンザに感染しても問題のないようにワクチンを接種する必要があります。僕も今週中に某医療機関でインフルエンザワクチンを接種する予定です。

おそらく、歯医者でなくてもインフルエンザワクチンを接種する人が少なくないのではないでしょうか。昨今、鳥インフルエンザが突然変異し、新型インフルエンザの流行が危惧されています。以前よりもインフルエンザに対する人々の関心は高まっています。現在のインフルエンザワクチンが新型インフルエンザに効果があるかどうかはわかりませんが、少なくとも特定のインフルエンザに対してワクチンの効果があるのは事実です。特に、体力的に問題がある子供や高齢者にはインフルエンザワクチンの接種は非常に大切なことではないかと思います。

ところで、このインフルエンザを含めたワクチン接種、予防接種に関してですが、厚生労働省のホームページを見ていると、このようなことが掲載されていました。

予防接種ガイドライン 第4予防接種の実施 4一般的注意

抜歯,扁摘手術,ヘルニア手術等,緊急性のない場合には,予防接種後1カ月間は,紛れ込み事故を考慮に入れ,原則として避けることが望ましい。しかし,緊急性の高い手術,周囲に流行する病気の状況によっては必ずしもこの限りではない。

このガイドラインの中にある“紛れ込み事故”という聞き慣れない言葉があります。これは、予防接種後にワクチンの副作用とは関係ない健康被害のことを指します。例えば、予防接種後にたまたま風邪や気管支炎になり、発熱やけいれんが起こった場合がこれに相当します。

実際のところ、予防接種後の健康被害がワクチンと関係がある副作用なのか、そうでないのか探ることは不可能のようです。予防接種後に他の病気にかかってはいないと判断できる場合は、ワクチンによる副作用だといえますが、実際には自然科学的に証明することは極めて困難です。

話をもとに戻しまして、厚生労働省のホームページで記載のあった

抜歯,扁摘手術,ヘルニア手術等,緊急性のない場合には,予防接種後1カ月間は,紛れ込み事故を考慮に入れ,原則として避けることが望ましい。しかし,緊急性の高い手術,周囲に流行する病気の状況によっては必ずしもこの限りではない

ですが、予防接種後1ヶ月間は、抜歯などの手術を行う場合、もし健康被害が生じれば予防接種が原因か、抜歯が原因か特定することが難しい。予防接種後1ヶ月以上経過すれば、何かの病気に罹った場合、予防接種の副作用とは考え難いため、予防接種のことを考慮することなく処置を行うことができるということです。すなわち、治療をする側にとって予防接種によるリスクを考えなくて済むようにした方がいいということなのです。

以下、僕の私見を書きます。

正直言って、僕もこのガイドラインには疑問を感じます。抜歯などの処置を予防接種1ヶ月は原則避けることが望ましいということですが、何を根拠に1ヶ月避けなければいいのかわかりません。抜歯と予防接種との関係について、僕の知人の歯科口腔外科専門家に問い合わせしてみましたが、異口同音に一ヶ月という根拠がわからないと言っておりました。1週間程度であれば、経験上理解できるのですが、1ヶ月となるとかなりの長期間です。厚生労働省が公開しているホームページでの記載ですからそれなりの証拠があるはずですが、これが非常に曖昧です。

ただ、厚生労働省のホームページという公の場でガイドラインが公開されているという事実は非常に重要です。これを無視して抜歯などの処置を行うことはできません。歯医者は厚生労働省のガイドラインに則り、予防接種によって生じる副作用と治療によって得られるメリットを考え、どちらを優先するべきか判断しながら処置を行わないといけないでしょう。少しでも早く抜歯をせざるをえないようなぐらぐらの歯の状態であれば、これは予防接種直後であったとしても抜歯によって得られるメリットが大きいはずですから抜歯をする可能性が高いのではないでしょうか。これは、厚生労働省のホームページの記載にある緊急性の高い手術に合致するはずです。

逆に抜歯を遅らせても問題の無いような場合であれば、予防接種後1ヶ月を基準に抜歯予定をずらさないといけないかもしれません。これらは、予防接種後の時間経過のみならず、患者さんの健康状態、口の中の症状、仕事や家庭環境等を考慮しながら行うことで、何も予防接種をしているから行う特別なことではありません。要は、患者さんが予防接種をしているという情報を事前に察知した上で、臨機応変に対処すればいいのではないかと思うのです。

歯医者を受診する予定のある方は、歯の治療を受ける際、事前に担当医に自分が予防接種を受けたことを伝えて欲しいと思います。また、事前に予防接種をするなら、歯の治療との関係で事前に担当医と相談して下さい。予防接種をしたことを黙っていて、歯の治療を受けることだけは避けて欲しいですね。

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2008年11月25日 (火)

ばっし、抜糸、抜歯

最近、漢字の読み間違いが頻繁である麻生総理のことがマスコミを賑わしています。未曾有を“みぞゆう”、踏襲を“ふしゅう”、有無のことを“ゆうむ”などなど。一国の総理大臣の発言ですから、あまりに漢字の読み間違いがあると様々な方面に影響が出ます。読み間違いやすい漢字にはルビをふるなど対策を立てるようにすることが肝要ではないかと進言したくなる今日この頃。

ただ、この手の漢字の読み間違い、誰でも勘違い、思い込みがあるのではないかと思うのです。僕もつい最近まで、播種という単語を“はんしゅ”と言っていました。正しくは“はしゅ”なのですが、播という漢字のつくりだけでつい“はん”と思い込んでしまっていたわけです。決して麻生総理のことをバカには出来ないなあと思うとともに、漢字の難しさ、奥深さを改めて思い知った今日この頃。

先日、医者をしている弟と話をしているとこのようなことを言っていました。

「憎悪ってあるだろう。これは一般には“ぞうお”って言うけど、僕も患者さんに病気が進行して状態が悪くなる時に、この憎悪を“ぞうお”って言っていたんだよ。ところが、最近、上司と話をしていると指摘されたんだよ。『医学では憎悪を“ぞうお”と言わずに“ぞうあく”って敢えて言うんだ。一種の専門用語だけど、医学の世界で憎悪を“ぞうあく”って言わないと、恥をかくことになるぞ』って。上司の言っていることはよくわかるし、僕が漢字の読み間違いをしていたわけではないんだけど・・・。なんとなく納得いかないけど、業界用語としては受け入れざるをえない。複雑なことだよなあ。」

医学の世界ではこのようなことがあります。実は、歯医者の世界でも漢字を会えて世間一般で使っているのとは異なる読み方をする場合、業界風に言う場合があります。

例えば、抜糸。歯医者の世界では抜糸のことを敢えて“ばついと”と発音することが多いのです。これには理由がありまして、抜糸と抜歯が発音が全く同じであることが背景にあります。歯医者の世界では、“ばっし”と発音すると抜歯を意味します。ところが、抜糸も同じ発音です。歯医者の仕事の中では非常に紛らわしく、時には勘違いしてしまう言葉でもあります。そこで、歯医者の世界では抜歯は“ばっし”抜糸は“ばついと”と発音することが多くなっているのです。歯の治療においては、抜歯の頻度の方が抜糸よりも多いことが影響しているのかもしれません。

ところが、医者の世界ではどうも事情が異なっている場合があるようです。以前、形成外科の友人から聞いた話ですが、形成外科では“ばっし”と言えば抜糸を指し、抜歯のことは敢えて“ばっぱ”と呼ぶのだとか。これも抜糸と抜歯が同じ発音で紛らわしいことが理由のようですが、歯医者の世界とは全く正反対の呼び方だけに非常に興味深く感じた次第です。

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2008年11月18日 (火)

医療機関のゴミ処理

毎日、どこの家庭でも決まって出てくるのがゴミです。日常生活を過ごしているとどうしてもゴミが出てくるのは当たり前のことです。これらゴミですが、日本においては一部電化製品を除いてほぼ市町村がゴミ処理を行っています。皆さんもよくご存知のことと思いますが、皆さんが住んでいる家の近くには必ずゴミ収集場所があります。ゴミはその種類によって収集日が異なっています。分別収集ですね。これらゴミ収集場所には定期的に市町村の清掃車が回収に来て、ゴミ処理場へ持っていくのが普通です。

さて、歯科医院を含めた医療機関で出されたゴミはどう処理されるのでしょう?実は、医療機関でのゴミは、原則として一般家庭から出されたゴミと一緒に処理をすることができません。すなわち、市町村のゴミ収集車で回収することができないゴミなのです。

医療機関では、一般家庭とは異なり様々な種類のゴミが出ます。患者さんに使用したガーゼや脱脂綿、使い捨てグローブ、敷布、注射針、薬物ビン、薬品袋、石膏類、レントゲン現像液、定着液などなど。中でも問題なのは患者さんの血液などが付着したゴミです。これらは感染性廃棄物として医療機関が責任をもって処理をすることが法律で義務付けられています。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)という法律です。

ただし、医療機関が独自でゴミ処理を行うことは現実的に困難です。そこで、医療機関では廃棄物を専門の処理をする業者に委託し、ゴミ処理を行っているのが現状です。

うちの歯科医院でも某業者に委託し、定期的に歯科医院から出されるゴミを回収してもらっています。

医療機関から出されるゴミのうち、患者さんに触れることがなく、感染の恐れが無い、安全な紙類のゴミなどはどうでしょう。これも一般家庭から出されるゴミと一緒に廃棄してはいけないことになっています。基本的に医療機関を含めた事業所から出されたゴミは、どんな種類のゴミでも一般家庭のゴミと混ぜて出してはいけないことになっているのです。先日、ある知人の歯医者が薬を使用した後の包装紙を一般ゴミと一緒に捨てていいか、某市の清掃局に確認したところ、こっぴどく怒られたとのこと。廃棄物処理法違反行為だと警告を受けたという話です。

ゴミの回収費用ですが、一般家庭から出されるゴミは市町村の税金で行われていますが、医療機関でのゴミは医療機関が経費を支払うことになっています。ゴミの回収には追跡する意味で紙のマニフェスト書類でどこに回収され、処分されたか記述するような仕組みになっています。各医療機関ではこれらマニフェスト書類を一定期間保管しなければならない義務があります。

ゴミの中にはリサイクルにまわるものもあります。例えば、歯科医院の場合、被せ歯や差し歯などは回収されるとリサイクルに回されます。被せ歯や差し歯などには金、銀、銅、パラジウム、白金などが含まれているからです。ゴミの回収業者の中にはこれら回収した金属をリサイクルにまわし、利ざやを稼いでいる業者もいますね。

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2008年11月13日 (木)

犬も歯が命

「先生、うちで飼っている犬の顎が突然大きく腫れあがってきたのですよ。」

こんなことを言い出したのは患者さんのYさん。Yさんは長年うちの歯科医院にかかられている患者さんの一人。先日、入れ歯の調整をしていたのですが、入れ歯の調整中、僕に話しかけてきたのです。

「突然、何の前触れもなく顎が大きくなってきたのですよ。私自身、長年犬を飼っていたのですけど、愛犬の顎が突然大きくなってきた経験が無かったものですからびっくりしましてね。獣医さんの所へ連れて行ったのです。そこで、私は思わぬことを指摘されてびっくりしました。」

僕はYさんに言いました。

「もしかしたら、その獣医さんはYさんの愛犬にむし歯があったことを指摘されたんじゃないですか?」

「先生、さすがですね。そうだったのですよ。獣医さんは愛犬の顔を見て開口一番『このワンちゃんにはむし歯があるんじゃないですか?』って言われましたよ。実際に診てもらったらむし歯がありました。それも奥歯にかなり進行したむし歯がありましてね。そのむし歯の周囲から腫れが広がっていたようなのです。」

僕は獣医ではありませんので動物の歯のことは詳しくありません。ただし、知人の獣医や動物関係の本を読んだ知識での話ですが、犬にもむし歯や歯周病が多いとのこと。特に、最近の栄養価の高いペットフードを食べる犬の場合、むし歯や歯周病になる確率が高いそうなのです。そのため、食後の歯磨きが欠かせなくなってきているそうなのです。犬用の歯ブラシが販売されているくらいで、犬が小さい頃からのしつけの一環として犬にも歯ブラシによる歯磨きをすることが飼い主には求められているとも言えるのだとか。

ちなみに、田舎の野犬にはむし歯や歯周病は見られないのだとか。こういったところからも、犬のむし歯、歯周病というのは人間と同じで一種の生活習慣病と言えるかもしれません。

「むし歯や歯石除去などは全身麻酔をかけて治療をしたのじゃないですか?」

「そのとおりです。人間であれば話せばわかるのですけど、相手は犬ですからね。歯の治療を施そうとすると全身麻酔をかけないと何もできません。そのため、私の犬の場合も全身麻酔をしましたよ。それで、むし歯の歯を抜歯してもらいました。抜歯したのを診て、改めてむし歯の大きさにびっくりしました。こんな大きなむし歯になるまで放っておいたのは飼い主の責任だと痛感しましたね。犬には悪いことをしたと反省しています。幸い、手術をしてからは顎の腫れもきれいに元通りになりましたよ。そして、腫れと同時になくなっていた食欲ももとに戻ってきました。犬も歯が命なんですね。そのことを実感しましたよ。」

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2008年10月20日 (月)

差し歯、入れ歯はメイド・イン・ジャパン

昨日、インターネットのニュースを見ていると気になるニュースがありました。

朝日新聞10月18日付け 

歯の治療で使われる「補てつ物」に、中国や東南アジアからの輸入品が増えている。補てつ物の使用には規制がなく、外国製の輸入状況も不明で、歯科医らの間では材料の安全性や品質に対する不安の声が広がっている。厚生労働省は6千人を超える全国の歯科医に近くアンケートし、使用実態を調べる。

補てつ物は、金属やセラミックが原料の、歯にかぶせる冠や入れ歯。歯科医や歯科技工士が製作してきた。だが、全国保険医団体連合会によると、近年は外国製が目立って増えてきた。外国製は国内製の半値ほどで、歯科医が個人的に輸入したり、歯科技工所が中国などの技工所に製作を委託したりするようになったという。

こうした実情を把握するため、厚労省は近くアンケートを始めることになった。日本歯科医師会の約6万5千人の会員から、約1割の歯科医を無作為に抽出し、アンケートを配布。年末までの回収を目指す。調査項目は(1)海外に補てつ物を委託した数(2)委託した内容(3)委託して不都合はあったか――など。専門家6人を加えて、アンケート結果を検討する。

歯科医が補てつ物を輸入し使用することは治療の一環とされ、法的な規制はない。また、「世界的に問題が生じたという報告はない」(厚労省歯科保健課)という。それでも、多くの歯科医が「健康被害が出てからでは遅い」と、外国製の補てつ物調査を求めてきた。

厚労省が調査に取り組むのは、現場の不安の声に押されたためだ。それでも補てつ物の中身の分析に踏み込まない調査のため、どこまで実態が解明できるか不透明だ。歯科医でもある同連合会の成田博之理事は「中国製だから問題というのではなく、今のままでは安全性を確保できないことが問題だ。製作者の資格、材料や施設の基準、輸入時の安全検査が必要だ」と話している。

歯医者が差し歯、被せ歯、入れ歯を自ら作っていた時代もありましたが、今では完全に分業態勢になっています。すなわち、歯医者が患者さんの歯型を取り、模型を作ると、その模型を基に歯科技工士が差し歯、被せ歯、入れ歯を作るようになっています。

うちの歯科医院でもその例に漏れず、僕が歯型を取り、模型を作ったものを懇意にしている歯科技工士に製作を委託し、作ってもらっています。

海外へ被せ歯、差し歯、入れ歯といった補綴物の製作を委託するにはそれなりの事情があります。ほとんどの歯科医院では保険診療をしているはずですが、そこで認められた診療報酬は実態とは掛け離れた報酬となっています。実際にかかる費用に対して診療報酬が低く抑えられているのです。本来ならこの低く抑えられている診療報酬をもっと上げてほしいのですが、医療費を含めた社会保障費が抑制されている国の政策では困難なのが実情。そこで残された道は如何に補綴物を安くあげるかということになってきます。

しわ寄せは歯科医院の仕事を引き受ける歯科技工士にくるのです。少しでも安く、経費をかけずに作って欲しいという要望が歯科技工士に対して迫ります。下請け的な立場上、どうしても歯科技工士は安く作らざるをえなくなるのですが、歯科技工士も生活があります。コストを下げる努力はしていますが、それも限界に達し、結果として歯科技工士を廃業する人が増えてきたのです。そのため、歯科技工士を目指そうとする若い世代も少なく、歯科業界では歯科技工士不足の深刻化が進んでいるのです。

経費を少しでも安く上げたい、歯科技工士不足といった事情などからどうしても注目されるのが補綴物の海外委託です。実際のところ、大手の歯科技工所と呼ばれるところでは、海外に補綴物を委託し、製作させ、コストを下げているとのこと。そのことを察知した、厚生労働省は安全性の面を調査するということから実態調査をするようになったようです。

僕は今回のニュースを見て非常に複雑な気持ちになりました。青息吐息の経営状況の歯科医院が多い中、多くの歯科医院がコストを節減するために少しでも経費が掛からずに補綴物の製作依頼をすることは理解できます。

その一方、補綴物は誰のためにあるか?ということを考えると、補綴物の海外委託を僕は考え直すべきではないかと思うのです。本来なら、補綴物は患者さんの身近で治療をする歯科医師が作るべきものです。ところが、一日何人もの患者さんの治療をしながら補綴物作ることは時間的にも肉体的にも精神的にもできません。そのため、歯科医師に代わり補綴物を作るのが歯科技工士です。歯科技工士は単に補綴物を作るだけでなく、患者さんとともにあるべき存在です。

本来なら、各歯科医院で歯科技工士がいることが理想で、そのような態勢を取っている歯科医院もあります。ところが、経費的な面でどうしても自分の歯科医院で歯科技工士を雇うことができない歯科医院も数多くあります。我が歯科医院もそんな弱小歯科医院の一つです。そこで、歯科医院外にある歯科技工所に委託して、補綴物を作ってもらっています。

ただし、僕は歯科医院外の歯科技工所に委託しても必ず心がけていることがあります。それは、自分が持っている患者さんの情報をなるべく、できるだけそのまま担当の歯科技工士に伝えることです。補綴物を作る際、歯型をもとにつくった模型だけでなく、技工指示書と呼ばれる紙に詳細を書いて依頼しますが、実際に補綴物を作ってもらう歯科技工士にも顔を合わせて直接説明します。場合によっては、直接患者さんを見てもらい、意見交換をしながらより良い補綴物を作ってもらうようにします。

そうした意思伝達を重ねることがより良い補綴物を作ることになりますし、患者さんの利益にもなるはずです。実際にかかる補綴物製作料は決して安いものではありませんが、これは必要経費ではないかと僕は思います。

海外に補綴物の製作を委託すれば、言葉の問題がありますし、細かな歯科医師の要望が充分に伝わる可能性は低くなることでしょう。果たしてこれが患者さんのためになることでしょうか?

僕は補綴物はメイド・イン・ジャパンにこだわりたいと思います。日本で暮らす人の口の中を守るのは日本の歯科医師であることは明白なことですが、歯科医師の代わりとなって補綴物を作る歯科技工士も日本の歯科技工士でなければならないのではないかと考えます。厚生労働省では安全面から補綴物の海外委託を調べるといっていますが、日本の医療は日本で守るのが筋です。日本で暮らす人の口の中にセットする大切な補綴物も日本国内で作ること。これも筋ではないかと考えます。

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2008年10月15日 (水)

口臭予防に意味が無いガム

歯科医院に来院する患者さんの中には口臭が気になると言って来院される患者さんが少なくありません。また、歯科医院へ行っていないものの、自分の口の臭さを他人から指摘され、気になっている人はかなりいるはずです。

口臭の原因はいくつかあるのですが、大半が口の中に何らかのトラブルを抱えているケースです。むし歯であったり歯周病が進行しているような場合、口臭が生じることが多いのです。ということは、口臭を解決するためにはむし歯や歯周病の治療を行わないといけないことは自明の理です。

ところで、口臭を気にしている人の中にはガムを噛み続けることで口臭を消そうとされている方がいます。うちの歯科医院に来院する患者さんの中にも、来院する直前までガムを噛んでいたなあと思われる患者さんがいます。

ガムを噛むこと自体、僕はそれほど悪いことであるとは思いません。最近のガム、特に、むし歯になりにくいとされているキシリトールなどの代替甘味料を用いているものは、むし歯の予防効果があるとされています。また、ガムを噛むことである程度唾液も出てきます。常に噛み続けるという行為はマナー上はよくないとは思いますが、人に迷惑をかけない程度にキシリトールなどのむし歯になりにくい代替甘味料を用いたガムを噛むことは悪いことではないでしょう。

ところがです。ガムを噛んでも歯周病の進行を抑えることはできません。また、一度歯に穴が開いてしまったようなむし歯を治すことはできません。歯周病の場合は、適切な歯磨きを歯科医院で指導してもらい、定期的にチェックを受け、時には歯石を除去したり、手術を受けた方が良い場合もあるのです。むし歯の場合は、きちんとむし歯で侵された歯質を取り除き、詰め物や被せ歯を被せなければなりません。むし歯が進行して神経にまで達しているような場合には、神経の処置も必要でしょう。

上記のような処置を歯科医院で行うことにより、初めて口臭を絶つことができるのです。

ところが、周囲から“口が臭い”と言われ何も歯の処置をせずガムだけを噛んでいても根本的な解決には至りません。一時的にガムのにおいが口臭に勝り口臭を取り除いたように思えるかもしれません。これは例えるなら、生ゴミに何らかの強烈な香りがする香水をかけるようなものです。一時的に香水の香りが生ゴミの臭さに勝り、臭いがしないように思えるかもしれませんが、時間とともに生ゴミの臭いがきつくなる。これと同じことが口臭を抱える方のガム噛みにも言えるのです。ガムを噛むことは対症療法にはなりえても、根本的な治療にはなりえません。

口臭をきちんと治すには、必ず口の専門家である歯医者の下を尋ね、何が原因であるかを調べてもらうこと。そして、原因を見つければその原因に対する治療を受けることです。

僕も口臭で悩んでいた時期がありますからわかるのですが、口臭を周囲から指摘されると何だか人格を否定されたように感じることがあるものです。一人で悩まず、お近くのかかりつけ歯科医院を受診し、口臭の治療を受けることが大切なのです。

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2008年10月14日 (火)

あまりにも滑稽な目標

最近、読んだ資料の中に思わず、“それはないだろう!”と突っ込みたくなるようなことがありました。その資料とは、健康日本21の79の目標です。

健康日本21とは21世紀における国民健康づくり運動の一環として厚生労働省がイニシアチブを取っている運動のことです。世界でも有数の長寿国となったわが国ですが、実際のところは、長寿とは言っても寝たきりになってしまったり、認知症が進み、自分の身の回りのことを自分ですることができない、介護を必要とする高齢者が多く存在します。何でも、国全体での介護保険給付料は、6兆円余りが必要なのだそうです。また、高齢者の医療費も増加し続けています。これら高齢者の社会保障費の伸びを少しでも抑えるためには、若い時代からの健康づくりが欠かせません。そこで、厚生労働省では2000年に今後10年間の健康づくりのための目標を定めたのが健康日本21なのです。

栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、がん、糖尿病、循環器病、たばこ、アルコールと歯の健康という9つの領域に79の目標を設定しているのです。地方公共団体等は、国の定めたこれら目標を参考に、それぞれ実情に応じて目標を定め、一人でも多くの人が健康を長期間維持できるように心がけることが求められているのです。

この健康日本21の目標ですが、見てみると、中にはとんでもない滑稽な目標があることに気がつきます。例えば、

栄養・食生活の領域での目標の一つに朝食を欠食する人の減少という項目があります。この中で、中学、高校生の欠食率の目標を2010年までに0%するというのです。現状は、2000年当初は6.0%、2005年では6.2%とわずかながら上昇しています。僕はこの目標は実現不可能な目標設定ではなかったのかと思います。朝食を欠食することは栄養学的に絶対に良くないことはわかっています。ところが、中学、高校生といった思春期の子供たちは様々な理由で朝食を取らないことが多いもの。わずか10年の間で朝食の欠食率を0%にするということは、彼ら彼女らの実態を考えると非常に無謀な目標ではないかと言わざるをえません。

同様の目標が別の箇所にあります。たばこの領域での未成年の喫煙をなくすという目標です。中学、高校の男女の喫煙率の目標が0%なのです。現状はといいますと、中学1年生男子で喫煙率は3.2%、高校3年生男子では喫煙率は21.7%です。一方、中学1年生女子では喫煙率2.4%、高校3年生女子では喫煙率は9.7%。これを2010年にはゼロにするというのです。

賢明な読者の方ならイメージがわくと思いますが、思春期の時代には大人に突っ張るというのか、憧れというべきなのか、たばこを吸ってしまう人が後を絶ちません。健康を考えるならば良くないでしょうし、決して許されることではありませんが、思春期の彼ら、彼女らがたばこを吸ってしまうというのは仕方がないところもあるもの。中学生、高校生の喫煙率が高いのには驚きますが、それ以上に2010年に喫煙率の目標をゼロに設定している目標にも開いた口が塞がりません。本当に思春期の学生の生活を考え、実現可能な目標設定をしているのか、疑問を感じざるをえないのです。何だか理想を掲げているだけで、実際に思春期の学生たちのことを思いやって目標を設定しているのでしょうか?

全く同じことがアルコールにも言えます。2010年における中学3年、高校3年の飲酒率の目標がゼロなのです。現状は中学1年生男子では16.7%、高校3年生男子では38.4%です。中学3年生女子では14.7%、高校3年生女子では32.0%。たばこ以上に実現不可能なことは目に見えています。

それ以外にも実現不可能な目標がいくつもあります。実際に健康日本21の目標を設定した担当者は一体何を基準に、何を目的としてこれら79の目標を設定したのでしょう。担当者の思い込み、理想だけが一人歩きし、現実に即した目標が設定されていないように思えてなりません。

健康長寿を目指すことは非常に大切なことで、誰でも死ぬまで健康でありたいと願うものです。そのためには若い頃からの健康に対する意識、健康な長寿に結びつく生活習慣が欠かせません。ところが、健康長寿を国の政策として推し進め、誰よりも専門家であるはずの厚生労働省そのものが現実からは掛け離れた目標を立て、政策をしようとしている現実。この滑稽な健康日本21の目標は、大いに批判されるべきことではないかと考えます。

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2008年10月 9日 (木)

残された貴重な歯を守るために

患者さんの治療をする際、患者さんに自身の口や歯の現状を説明し、どういった治療方針で今後治療をするか事前に説明するのは、歯医者として当然のことです。ただ、時には患者さんに対して思い切って言いにくいことを敢えて言うこともあります。

その一つが入れ歯です。不幸にして何らかの事情で多数の歯を失った人に対し、ブリッジが難しく入れ歯を勧めなければいけない場合があります。保険治療であれば特にそうなのですが、入れ歯を初めて作る場合、患者さんは多かれ少なかれショックを受けるようです。

「何とか差し歯でできないものか?」

「ブリッジはだめなのか?」

「インプラントはどうなのか?」

などなど質問を受けることがあるのですが、僕は何度も入れ歯をしなければいけない理由を説明し、患者さんに納得してもらうようにしています。

入れ歯を説明する際、よく感じることに患者さんが入れ歯について誤解していることがあります。それは、入れ歯は歯を失った場所に入れるものだという認識です。確かに入れ歯は多数の歯を失ったり、ブリッジのために歯を削りたくない人の場合にセットするものですが、それだけの目的ではないことを説明すると、多くの患者さんは意外な表情をされます。

僕が説明する入れ歯の目的とは、残っている歯を守るということです。多数の歯を失い、そのままにしていると残っている数少ない歯を使用しなければなりません。その場合、失った歯が担っていた咀嚼、噛み合わせの機能をも負担せざるをえないのです。これは残っている数少ない歯に対し大変な負担となります。残っている歯は貴重な歯であるのに、残っている歯が本来果たすべき役割以上の働きを求める。これはどうしても無理があるといわざるをえません。

これは、例えるなら、会社でリストラがあり、残された社員がリストラされた社員の仕事分をも持たされるようなものです。残された社員の負担はかなりのものであり、場合によっては体調を崩したり、精神的ストレスは相当なものであることが想像できると思います。結果的に残された社員が倒れ、会社が業績にも響く可能性が出てきます。

残り少ない歯の置かれた状況も全く同じなのです。入れ歯はこうした残り少なくなった歯の負担を受け持つ役割があるのです。残り少なくなった歯を少しでも維持し、残すために使用するものなのです。入れ歯をセットすることは口の中に人工異物を入れることにはなります。確かに入れ歯を入れない時に比べ違和感は生じますが、それ以上に残された数少ない歯を守るために非常に重要ななのです。

僕は入れ歯を初めて使用する患者さんにはこの点を強調し、理解を求めるようにしています。残された歯を守るためには、入れ歯の管理と残された歯を念入りに歯磨きする必要があることは言うまでもありません。その点も説明するのは当然のことです。

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2008年10月 8日 (水)

美容整形と入れ歯の共通点

「あのMって女優、目を整形しているわ。」

「Yって子は顎と鼻は確実に触っているわね。」

「Fの歯は妙に白すぎるわね、絶対に差し歯だよね、そうさん?」

よくぞそこまで女優の顔のことを見ているなあ!と思うくらいの嫁さんのコメント。テレビに出演している女優を見ているとファッションや顔のことによく目がいく嫁さんです。僕などは“そんなことどうでもいいじゃない!”“綺麗であればそれでいいのではない?”と言いたくても言えないくらい雰囲気を醸し出しています。

ただ、確かに嫁さんの指摘どおり、じっくり顔を見ていると、少なくない女優が顔の一部を整形しているのは間違いないようです。僕は歯医者ですのでついつい口元に目がいきます。最近の被せ歯は材質の進歩から本物と見間違うくらい精巧なものもあるのですが、だいたい歯を被せ歯にしていると直ぐにわかってしまいます。時々、この時のことを歯医者さんの一服では有名人口元チェックと称して日記ネタにしています。そういえば、最近有名人口元チェックをしていませんね・・・。

それはともかく、美容整形についてですが、入れ歯と美容整形は共通点があることをご存知でしょうか?何やら似ても似つかぬ入れ歯と美容整形。一体何が共通しているのだろう?と思われるかもしれません。

入れ歯を使用している患者さんの中には、突然、歯科医院に駆け込んでくる患者さんがいます。

「先生、入れ歯が割れてしまいました。何とか使えるように修理して下さい。」

入れ歯は基本的にプラスチックや特殊なカーボン線維を使用した人工物です。一方、口の中の環境は非常に苛酷です。絶えず唾液により濡れていますし、一日に何度も食事を噛む、咀嚼しなければなりません。口の中には300種類以上の雑菌が存在します。このような劣悪とも言える環境の中で、歯の無い人は入れ歯という人工物を四六時中使用しているわけです。自ずと入れ歯には対応年数があることがわかると思います。

ただ、入れ歯が割れる場合、入れ歯の対応年数以外の要因が大きく影響します。それは体の変化です。入れ歯は入れ歯を新しく作った際には体にフィットしています。ところが、時間が経過するにつれ、体はいろいろと変化します。

想像して欲しいのですが、数年前に撮影した自分の顔と現在、鏡に写った自分の顔は同じでしょうか?おそらく違うはずです。誰でも時間経過とともに、自分の気がつかないうちに体は変化するものなのです。口の中も一緒です。いつも同じように食べている口の中も時間の経過とともに微妙に変化しています。ところが、入れ歯はどうでしょう?残念ながら入れ歯は作った当時のままの形を維持しています。使っているうちの人工歯が磨り減ったり、材質が変色したりすることはありますが、外形は変化がありません。

変化する体、口と変化しない入れ歯。相反する口の中と入れ歯の状態。入れ歯を定期的にチェックし、調整しないといけない理由がここにあります。入れ歯は変形しませんから、現在の体、口の中に合わせる必要があるのです。そうしないと、入れ歯を使用して歯肉が痛くなったり、入れ歯が割れたりするのです。

実は美容整形も全く入れ歯と同じなのです。美容整形は手術を受けた時点の体に合わせて処置を行います。ところが、体は経年的に変化をするものですが、美容整形を施した部分は基本的に手術をした時点のまま。そうするとどういったことが起こるか?時間の経過とともに、美容整形した部分は体の変化についていけず、元々の体の部分と歪が生じてくるのです。そのため、美容整形をした部分は体の変化に合わして再度処置、手術を必要とする場合が生じるのです。豊胸手術の場合などはその典型例です。何年に一度かは体の変化に合わせて胸の中に入れたシリコンパッド等を交換し直す必要があるものなのです。

入れ歯であれば簡単に調整をしたり、作り直したりすることが可能ですが、美容整形の場合は、再度体にメスを入れなければなりません。現在、安易に美容整形を行う風潮がありますが、美容整形を一度行えばそれで終わりというものではない。入れ歯と同様、定期的な体の管理、検診、場合によっては再度手術が必要であり、経費もかかるということを知っておいて欲しいと思います。

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2008年10月 3日 (金)

蓄膿の原因はむし歯だった?

「上の奥歯が噛んだら痛くて頬も痛くてたまりません。」

先日、うちの歯科医院に駆け込んできた患者さんが発した言葉です。口の中を見てみると、右上の第一大臼歯と呼ばれる歯に大きなむし歯がありました。本人に尋ねてみると、この歯には元々金属の詰め物があったとのこと。半年前、詰め物がはずれ大きな穴が開いてしまった。自分では気になっていたが痛くなかったのでそのまま放置していたというのです。ところが、1週間前から急に痛みが出てきたそうで、当初は市販の痛み止めを飲んで痛みを抑えていたそうですが、そのうちに頬の方まで痛くなり、我慢できなくなったようです。レントゲン写真を撮った僕は、この患者さんに言いました。

「紹介状を書くから、直ぐに○○病院の歯科口腔外科を受診して下さい。」

通常のむし歯であれば、僕は直ちに処置を行うのですが、この患者さんの場合、僕はあることを疑ったのです。それは上顎洞炎。上顎洞炎というのは一種の蓄膿のことです。

解剖学の話になりますが、人間には鼻の側に4つの骨に囲まれた空洞があります。これは鼻から吸い込んだ息を一時的に溜め込む空洞なのですが、この空洞を副鼻腔といいます。通常、蓄膿というと風邪や鼻炎などから副鼻腔に感染し、炎症が起きた状態を指します。蓄膿の中でも特に多いのが4つの副鼻腔の1つ、上顎洞に生じる上顎洞炎です。その理由は鼻と最も近いのが上顎洞であるからです。

さて、上の奥歯にむし歯があってどうして上顎洞炎になるかということになりますが、これは奥歯の位置に関係があります。奥歯、特に上の第一大臼歯は根っこが上顎洞と接しているのです。そのため、むし歯や歯周病の症状が進み、根っこにまで及ぶと上顎洞に炎症が波及、上顎洞炎、蓄膿になってしまうのです。

このように歯が原因による蓄膿、上顎洞炎を歯性上顎洞炎といいます。一度歯性上顎洞炎になると、かなり厄介です。抗生物質を点滴で大量に投与しながら、場合によっては上顎洞の粘膜を掻爬してしまわないといけないケースもあるのです。こうなると入院して手術を受けないといけないのです。たかがむし歯だと軽く考え、放置していると大変なことになってしまうわけです。

今回の患者さんの場合、僕はこの歯性上顎洞炎だと診断しました。こうなるとうちのような町歯医者では対応が難しく、施設が整い、いざとなれば手術も可能な病院の歯科口腔外科へ紹介し、処置を受けてもらうことしか方法がありませんでした。

後日、この患者さんはうちの歯科医院にやってきました。

「入院せずに、外来で何とか処置を受けて症状がましになりました。ただ、治療前に撮影したレントゲンCTの画像を見て、びっくりしました。問題の歯がある上顎洞が真っ白になっていましたから。頬の痛みの原因がこれだと言われた時にはショックでした。ここまでひどくなっているとは思いませんでしたから。」

現在、この患者は上の第一大臼歯の根っこの治療を受けていますが、今は神妙に治療を受けています。むし歯を放置すると歯だけではなく、体の他の組織、臓器へ影響が出ることを身を持って体験したからです。できることなら、咽喉もと過ぎれば熱さ忘れるということがないようにして欲しいものです。

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2008年10月 1日 (水)

歯科治療は土木工事?!

「歯の治療って土木工事みたいなところがありますね。」

歯の治療を終えて診療室を出て行こうとしていた患者さんがふと漏らした言葉です。

体の臓器の一つである歯。この歯の治療と土木工事と一体どんな関係があるのだろうか?と思われる方がいるかもしれませんが、僕はこの患者さんの指摘に“そうかもしれない”と感じました。

一例を挙げましょう。歯の治療を受けられた方は想像できると思いますが、歯を削る際、口の中にはタービンと呼ばれる高速回転する切削器具を使用します。一分間に30万回転から50万回転するくらい高速に回転するタービンに切削用バーを取り付け、歯に接触させながら歯を削ります。

歯は表面がエナメル質と呼ばれる硬い層で被われています。エナメル質の硬さはどれくらいか?概ねダイヤモンド並みです。歯の表面が非常に硬いことが想像できるのではないでしょうか。

このエナメル質を削る際、タービンに取り付けた切削用バーは非常な高温となります。硬い物を削る際の宿命みたいなものですが、治療の際、この高温は患者さんにとって大変迷惑なものとなります。火傷、痛みが起こりうるのです。これを防ぐには切削部に水を噴きかけながら削る必要があります。高温を冷却する目的で水を放出しながら削る必要があるのです。

そこで困るのが放出された水の後始末です。歯を削っていくうちにタービンから出た水はどんどんと口の中を満たしていきます。あっという間に口の中全体を満たすくらいの量の水がでるのです。歯科治療では、これら水を吸い出すために診療台には必ずバキュームと呼ばれる吸引装置が付属しています。歯を削るために放出された水を吸い取りながら歯を削っていく。これが一種の歯科治療なのです。

この状況、何か工事現場でも似ています。例えば、ビルの解体現場。ビルを解体するのに大きなドリル状の切削器具を用いることがありますが、その際、水を放出しながら削ることが多いものです。この水は冷却の意味と舞い上がるほこりを発散させない意味合いがあります。

歯の治療というと何か特殊なことを行っているようなイメージがありますが、実際のところは実に土木工事的なことを行っているとも言えるもの。冒頭の患者さんの指摘はなかなかに歯科治療の本質を言い当てている、言いえて妙な感じがしました。

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2008年9月26日 (金)

歯磨きは1日1回でいい?

先日、新聞を見ていると某雑誌の宣伝欄にこのようなことが書いてありました。

“歯磨きは1日1回でいい?”

一般の方からすれば非常に刺激的なコピーかもしれません。歯磨きは1日に何度も行わないといけないものであるという考えの人からすれば、1日1回の歯磨きは少なすぎやしないか?果たして、1日1回の歯磨きでむし歯や歯槽膿漏が治るのか?と疑問に感じられる方が少なくないのではないでしょうか?中には、”歯磨きは1日1回でいい?“というコピーに思わず衝撃を受け、思わず件の雑誌を見るために、買うために本屋へ出向いた方はいるかもしれません。

僕は歯医者である関係で、雑誌に掲載された歯科関係の記事やテレビで取り上げられた歯科関係の番組はなるべく目を通すようにしています。歯科の専門家の立場から雑誌やテレビで取り上げられる内容は全てわかりますが、時々、一般の方にとっては目から鱗が落ちるような内容であることが少なくないようです。

さて、歯磨きは1日1回でいい?というのは本当でしょうか?僕の回答は、1日1回の歯磨きでも構いません。ただし条件があります。それは、1日1回歯を適切に磨いているということが条件です。

ここで書く“適切”とは歯医者や歯科衛生士などの歯科専門家が適切と判断するくらい歯が磨けているということです。おそらく、一般の方からすれば歯科専門家が要求する適切というのはかなりハードルが高いのではないかと思います。おそらく、完璧に歯についた汚れを取っているレベルと感じられるはずです。

歯科専門家から見て、1日1回でも適切に歯が磨けていれば、むし歯や歯周病の予防には充分に効果があります。そのためには、1回の歯磨き時間はかなり時間をかけなければなりません。

日本人の平均歯磨き時間は40数秒というデータがありますが、これだと全く歯磨きとしては不充分ですし、この時間で1日1回しか磨かないというのでは意味がありません。

歯磨きは1日1回でいい?という文言の裏には、歯磨きにかける時間をかなり長く取り、隅々まで丁寧に歯の汚れを取り除かなければならないということが含まれているのです。

ただ、愚考するに、忙しい日常生活を過ごしている方には、1回に長時間かけて行う歯磨きを行いたくても行えないもの。やはり、1日に複数回、歯を磨くようにするのが現実的ではないかと思います。

ちなみに僕は毎食後、1日3回歯を磨いています。場合によっては寝る前にも磨くことがあります。普通の歯ブラシと歯と歯の間を磨く歯間ブラシ、デンタルフロスを併用して磨いています。一回にかける歯磨き時間は平均5分程度です。

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2008年9月 8日 (月)

歯医者はワーキングプア

先日、地元歯科医師会である会合があり出席してきました。会合にはいくつかの議案があったのですが、中に歯科界を取り巻く環境に関する議案がありました。その際、発言者の一人がこのようなことを言われたのです。

「最近、某高校で大学への受験指導の際、配布された資料を見る機会がありました。社会の様々な業界の将来性、発展性を図示した資料だったのです。中には歯科業界もあったのですが、歯科業界の位置づけを見て私は愕然としました。それは、歯科業界には将来性がなく、発展も見込めない。仮に歯科業界人になったとしても、ワーキングプアになるばかりとの評価だったのです。」

受験業界の指摘は非常に痛い所を突いていると感じました。歯科業界の将来が決して明るくないことは僕も認めるところです。

現在、10万人近い歯科医師がいるなか、そのほとんどが歯科診療所で働く歯科医師です。歯科診療所は67000診療所近くあり、現在も増え続けています。全国各地、どこでも見ることができるコンビニエンスストアの1.4倍、いやそれ以上あると言われる歯科医院。

一方、日本国民全体に占める1年間の歯科医療費は2兆5千億円余り。1年間の国民医療費がほぼ33兆円で、毎年増加(前年度は若干抑制されたようですが)しつつある中、歯科医療費は2兆5千億円余りと変化がありません。ということは、毎年決まった歯科医療費を毎年増え続けている開業歯科医院が分け合っている状況なのです。今後、歯科医療費が増えることは考えにくいだけに、歯科業界で働くとしても将来的な展望がないと指摘されても仕方がないところがあります。そういった意味では受験業界が歯科業界に対して、ワーキングプア業界であると評することに関して否定することはできません。

残念なことに現在の歯科医師過剰というのは国の政策の失敗です。かつて歯科医師不足と言われていた時代に歯科医師数を満たすために全国各地に必要以上の歯科医師要請大学を数多く作ることを認可したのが国です。その結果、歯科医師数が過剰となったにも関わらず有効な政策変更を行わずそのまま放置した。最近になり、ようやく国は歯科医師国家試験の合格基準を上げたり、全国の歯科大学、歯学部の定員を更に下げるよう圧力をかけるようにしながら歯科医師数を減らそうとしていますが、その効果が現れるのは何年も先のこと。国の政策失敗のつけは、結局のところ歯科医師自身が被らなければならないというなんとも皮肉な結果となっています。

しかしながら、現在、歯科業界で働いている者としては、正直言って面白くありません。歯科業界だけに限りませんが、どんな業界でもベテランから若手へ担い手が移っていくもの。現役世代の仕事ぶりを見ながら後を追いかけてくる若い世代がいる。このこと業界の活性化を図り、強いては業界の持続の活力となるのです。歯科業界もそうなのです。歯科業界を夢見る人たちがいることにより、現在、歯科業界で歯を食いしばりながら働いている人たちも先に希望が持てるというもの。歯科業界の将来に希望が持てるよう、今現役で働いている僕のような歯医者がもっと知恵を出し合い、若い人に魅力が持てるような業界にしていきたい。僕は切に願っています。いつまでも歯科業界がワーキングプアと言われないために。難しいことですが・・・。

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2008年9月 4日 (木)

首の傷痕の理由

以前、僕が某病院の歯科口腔外科研修医だった時の話です。

当時僕が研修をしていた病院では、まず研修医が問診を取り、患者さんの主訴を聞き、それを指導医に伝えて指導医が診査、診断し、治療方針を立てるというシステムをとっていました。

ある時のことでした。むし歯ができて痛いという患者さんが来院されました。僕はいつもと同じように患者さんの話を聞きながら問診をとっていたのですが、患者さんを診ているとあることに気がつきました。それは、患者さんの首筋に一筋の傷跡があったからです。その傷跡は首の正面付近から左側面にかけてあったのです。カルテにはこのことを記載はしましたが、患者さんにこのことを尋ねようとした時、この日の指導医O先生と交代となりました。

O先生は患者さんの口の中や顔全体を診ながら、即座に治療方針を立て、むし歯の治療の説明をし始めました。患者さんはO先生の説明を聞き、治療方針を理解し、指導医のもとで治療を始められました。

この日の診療が終わった時のことでした。O先生が僕を呼びました。O先生曰く

「今日診た首に傷のある患者、覚えている?」

「はい、覚えています。かなりの傷でしたので非常に印象的でした。」

「あの傷、ただの傷ではないね。おそらく何らかの刃物で切られた痕だろう。どんな事情があったのかどうかわからないけど、堅気の人ではないね。」

「普通の方のように思ったのですが。」

「一見するとそうだけども、あの首の傷は何らかの修羅場で負ったものだよ。あの人、ただの人ではないよ。」

実は、医療において首に傷が残るケースがあります。歯科口腔外科の場合、口腔癌の手術がこれに相当します。口腔癌の手術の場合、単に癌の場所だけを外科的に切除するだけではありません。転移の可能性がある場合、首のリンパ節を全て取ることがあります。これを頸部郭清(けいぶかくせい)と言います。頸部郭清の場合、首の側面にメスを入れ、皮膚を薄く剥がすようにしながらリンパ節を探し当て、取り除くのです。一見簡単そうに思えますが、この処置は非常に困難を極めます。なぜなら、頸部のリンパ節がある場所には、総頸動脈や迷走神経といった非常に大切な動脈、静脈、神経が集中しているからで、少しでも気を緩ませると命に関わったり、手術後麻痺が残り、深刻な後遺症が残るのです。そのため、頸部郭清には慎重に行わないといかず、結果として時間がかかるのです。

頸部郭清ですが、手術後なるべく傷跡が残らないようなメスの切開が行われます。といっても、手術後どうしても傷跡は残るのですが、あまり目立たないような位置に傷が残るような配慮がされるのです。

他にも首の手術の場合、メスの切開は傷が目立たないような位置で行われるのですが、O先生と僕が診た患者さんは、こうした配慮がない、医学的に根拠が無い傷だったのです。ということは、首の傷は医学的な手術によってできたわけではない。

常識的に考えると、医学的な理由以外の首の傷は、考え難い。何らかの特殊な事情によって生じたと考えるべきで、その可能性として最も高いのが何らかの修羅場で首に傷を負ったのではないかということになったのです。

この患者さんはO先生を信頼し、O先生が主治医として治療をすることになりました。何度か治療をする間に、O先生はこの患者さんに首の傷の真相を尋ねたそうです。患者さんの回答はO先生がにらんだとおりでした。何人かのチンピラに囲まれ襲われた時に、相手の刀で切られた痕だったそうです。

実に怖い話でした。

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2008年9月 3日 (水)

口の中が物語る家庭不和の一例

歯医者は患者さんが訴える主訴に基づいて歯や口の中の異常を診査、診断し、治療を行います。歯医者の仕事としては当たり前のことではあるのですが、視点を患者さん側に移してみると、歯や口の中の異常は、ほとんどの場合、直ぐに現れたわけではありません。何らかの原因が長期間かけて蓄積し、ある瞬間に症状として現れるものなのです。歯医者がいくら歯や口の中の悪い場所を治療したとしても、これはあくまで対症療法であって、原因治療ではありません。この点、患者さんには重々説明をしてはいるのですが、僕の説明にピンとくる患者さんはまだまだ限られているのが現状です。

歯や口の中の異常ですが、どんな背景があって起こったのでしょう?いろいろな背景があると思われます。例えば、患者さんの全身状態を着目しますと、年齢や性別、性格、体調、体格、遺伝的なことなどが影響すると思われます。口の中の状況をみますと、歯並びや噛み合わせ、むし歯原因菌、歯周病原因菌の数、唾液の性状、量、口呼吸、歯軋り、王と反射などの影響があることでしょう。

それにもまして影響を与えると思われるのが生活環境です。患者さんの労働環境を例に挙げますと、室内での仕事か室外での仕事か?会社員、公務員、自営業なのか?正社員、それとも派遣社員、パート職?単純作業なのかそれとも様々な仕事を掛け持ちしているのか?営業職なのか管理職なのか等々、患者さんの置かれている労働環境を考えるだけでも様々な環境があるはずで、これらが健康に与える影響は計り知れません。

患者さんのライフスタイルもそうです。愛煙家なのか禁煙か?飲酒習慣、間食習慣、といった食習慣が口の中に与える影響はかなりのものです。

このように考えると、たかが患者さんの口の中、歯の問題だとは言っても、これを左右することは山ほどあることが言えると思います。歯医者がいくら口の中、歯のことをすっぱく言っても、患者さん自身を取りまく環境をある程度知らないと、馬の耳に念仏状態になりかねないのです。

先日経験したことです。

ある男性患者さんがいました。この方、もともと歯磨きをあまりしない方で何度も歯磨指導を行ったのですが、うまくいきませんでした。

数年前のことでした。久しぶりに受診したこの患者さんの口の中を診て、僕は驚きました。それは、口の中が非常にきれいになっていたのです。かつて、何度も手を変え、品を変え説明しても一向に改善しなかった口の中の状態が劇的に改善していたのです。歯医者としては非常に歓迎すべきことだったのですが、その一方で疑問も残りました。どうして彼は歯を丁寧に磨きだしたのか?後日、この患者さんの関係者と話をする機会があり、理由がはっきりとわかりました。それは、この患者さんは彼女ができ、結婚間近だったということでした。歯や口の中のことに無頓着だった患者ではありましたが、彼女ができると今まで無関心だった歯や口の中も清潔にするものなのか?色恋ごとは歯磨き習慣にも影響を与えるものなのだなあと感心しておりました。

以後、うちの歯科医院に来院しなかったこの患者さんですが、最近、歯の不調を訴え、久しぶりに来院しました。久しぶりに診た彼の口の中は、悲惨な状態となっていました。いくつもむし歯ができ、歯には歯垢が多く付着していたのです。歯磨きを怠っているのは明らかでした。僕は歯の治療をしながら、歯磨きの大切さを訴えたのですが、本人の反応は非常に鈍いものがありました。何かあったのか?そんな疑問を持っていた最中、僕はある知人からこの患者さんのことを再び耳にしました。それは、この患者さんが奥さんと別居しているという知らせだったのです。既に別居をして1年経過し、離婚が秒読みに入っているということだったのです。ことの真相ははっきりとしませんが、かつて彼女ができ、結婚間近に劇的に改善した口の中の状態を考えれば、この話、あながちうそではない、むしろ真相に近いのではないかと感じた次第です。

生活環境が体の健康、口の中の状態に影響を与える一例でした。

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2008年8月28日 (木)

ためしてガッテン 常識逆転!自宅で虫歯を治す方法 について

昨日、夕食の後何気なくテレビを見ていると、この番組が放送されていました。この日のテーマはむし歯に関することでした。興味のある方は再放送があるのでそちらを見て頂きたいのですが、内容を要約すれば以下のようなことだったと思います。

・むし歯は歯の外側から起こるのではなく、むし歯菌から出た乳酸が歯の表面の隙間から内側に染み込み、内側から起こる。

・ただし、初期むし歯の状態であれば唾液中のカルシウムにより歯の内側から起こっているむし歯は修復される。

・歯には口の中のpHが5.5以下であれば歯が溶けてしまい、むし歯になりやすくなる。

・だらだら食いをしていたり、寝る前に食事をしていると、口の中の唾液が少なくなるため、唾液がむし歯菌によって作られた酸を中和したり、唾液中のカルシウムによる修復が起こりにくくなり、結果としてむし歯になる。

結論としては

むし歯を予防するためには唾液中に含まれるカルシウムが歯に働きやすくなるよう、間食を避けること。そして、定期的な歯磨きと定期的に歯医者を受診し、専門家によるチェックを受けること

だったように思います。

以前であれば、むし歯というのは歯に残った食べ残しによりむし歯が発生する。むし歯が発生すれば直ぐに処置をすることが大切だということが言われていたのです。

ところが、長年の研究により口の中の歯は唾液中のカルシウムと常に新陳代謝することがわかってきたのです。すなわち、いつも同じように見えていた歯に唾液中のカルシウムが入り込み、むし歯になりかけていた部分も修復されることがわかってきたのです。この微妙なバランスが崩れた時、むし歯が生じる。これが今のむし歯の定義になったと言っても過言ではありません。

こうした研究結果からむし歯に対する予防法も変わってきました。これまではむし歯にならないような歯磨き方法に重点がおかれてきたのですが、今ではむし歯にならないような口の中の環境を維持することに重点がおかれてくるようになったのです。

具体的には唾液が出やすいように、よく噛み、咀嚼すること。だらだら食いや間食を極力避け、一日三度の食事を取ることなども指導の対象になったのです。

もちろん、歯磨きの重要性は以前とは変わっていませんが、歯磨きも唾液が少なくなる時間帯、特に就寝時には行わないと、むし歯になりやすいのです。

ちなみに、唾液の働きによるむし歯予防ですが、これはあくまでも初期むし歯と呼ばれている状態において有効です。番組でもフリップが出ていましたが、一度穴が開いてしまったむし歯の場合には唾液による修復は不可能です。歯医者で治療を受けないといけません。

また、番組では3ヶ月~6ヶ月に1度の定期検診、メインテナンスの重要性が紹介されていましたが、まさしくそうで、歯の健康を守るために、一人でも多くの人がかかりつけ歯医者を見つけ、受診して欲しいと思います。

歯医者というと痛くなってから行く所だと思っている人が多いと思いますが、今では痛くなる前に行く所になりつつあります。結果的に、歯の治療費が少なくすみ、歯の健康も維持でき、全身の健康維持にもつながるのです。

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2008年8月25日 (月)

歯医者家族の保険治療は可能か?

先日、僕は嫁さんの歯の治療をしました。実は以前から治療を施していた歯があったのですが、仮歯のまま放置していたのです。早く被せ歯を作ってセットするべきだったのですが、相手が嫁さんということで安心しきっていたのか、そのままにしていたのです。お盆頃、嫁さんが仮歯が割れたと言ってきたことから放置していたことを思い出し、さすがにこれではまずいと思い、歯型を取り、きちんとして被せ歯を作り直すことにしています。嫁さんには悪いことをしたなあと反省しております。

さて、歯医者はどんな健康保険に入っているかご存知でしょうか?歯科医師会に入会している歯科医師ならば各都道府県単位に歯科医師国民健康保険組合というものがあり、そこに歯医者本人と家族、場合によっては従業員が世話になっているのです。

それでは、歯医者の家族が自分の診療所で歯の治療を受けた場合、保険が使えるか?とことになりますが、これは原則的にできません。歯科医師国民健康保険組合では、自らの歯科医院で治療を受けた家族の治療費に関しては保険請求することができない決まりになっているのです。そのため、家族の治療に関しては全て歯医者が自費で行わないといけないということになっています。

当たり前といえば当たり前かもしれません。僕のような場合でも自分の嫁さんから治療費を取ったり、保険を使うということは心情的にはばかれます。自分の子供の治療も何度か行ってきましたが、これに関しても歯の治療は全て僕もちです。

ただし、今回の後期高齢者保険制度で不思議なことが起こりました。歯医者の家族の中で後期高齢者、すなわち75歳以上の家族に関しては保険請求をすることが可能になったのです。元来、75歳以上の歯医者の家族は歯科医師国民健康保険に入っていたわけですが、後期高齢者医療制度に伴い、歯科医師国民健康保険に入っていた75歳以上の方は全て各都道府県単位の後期高齢者広域連合に移ってしまったのです。歯科医師国民健康保険組合員ではなくなったため、これまで自費で治療をしていた75歳以上の歯医者の家族は保険請求をすることができるようになったというわけです。また、何らかの事情で歯科医師国民健康保険組合を離れた場合、例えば、各市町村単位の国民健康保険組合に移った歯医者の家族も自分の歯科医院で行った治療費を保険請求することが可能になりました。

おそらく、どんな歯医者の家族も身内から治療費を取ったり、保険請求をするようなケースは限られてくるとは思いますが、制度的には後期高齢者医療制度の設立により、歯医者の家族の治療であっても保険請求ができることになったのは、なんとも不思議な感がします。

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2008年8月21日 (木)

遺伝のいたずら 過剰歯

先日、ある患者さんのレントゲン写真を撮影してみたのですが、僕は一瞬目を疑いました。それは、前歯にあるべき歯が一本多かったからです。通常、前歯は真ん中の歯である中切歯、その隣の歯である側切歯、それから犬歯の三種類からなります。上下左右合わせて合計12本あるのですが、この患者さんに関しては上の左の前歯に一本多く歯があったのです。こうした歯は過剰歯と呼ばれます。読んで字の如く、通常の歯数よりも多く発生した歯のことで、奥歯や上の前歯に見られることがあります。

どうしてこのような過剰歯ができるのか?理由はわかっていません。歯科関係の文献によれば、いくつか原因が挙がっていますが、どうも遺伝による影響が強いようです。過剰歯は一種の遺伝のいたずらかもしれません。

この過剰歯は何も支障がなければそのまま経過を診ていくのですが、歯並びに支障が生じたり、腫れや痛みが生じた場合は抜歯の対象となります。この患者さんの場合、数日前から痛みが生じたということでした。レントゲン写真で確認すると、このまま放置すると隣の健康な歯に悪影響がでることが考えられました。僕は患者さんに説明して抜歯を勧め、患者さんの了承を得てから抜歯することにしました。

幸い、抜歯は比較的短時間で終わったのですが、一部粘膜を剥離して抜歯したため、縫合糸による縫合で傷を寄せなければなりませんでした。

このような遺伝の悪戯による歯の影響というのは時々あります。過剰歯とは逆の場合、先天欠如歯なんて場合もあります。これは上の前歯や下の小臼歯、最近では親知らずなどがない場合も見られます。

また、いつまで経っても永久歯が生えてこないため、レントゲン写真撮影してみると後続の永久歯がないような場合も少なからずあります。このような場合、少しでも長く乳歯を保つようにしますが、乳歯を抜歯せざるを得なかった場合は、入れ歯かブリッジ、自費診療であればインプラントという方法で永久歯が生えてこなかったスペースを埋めるようにしないといけません。そうしないと、歯並び、噛み合わせ狂ってしまう可能性があるからです。

遺伝のいたずらは気まぐれですが、たまたま遺伝のいたずらに引っかかった人はアンラッキーとしかいいようがありません。しかし、適切な歯科処置で遺伝のいたずらによる悪影響を防止することは可能なのです。

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2008年8月20日 (水)

歯ブラシの交換時期

先日、ある知人から歯ブラシの交換時期について尋ねられました。一体どれくらいの期間ごとに歯ブラシを交換したらいいのか?目安を教えて欲しいということでした。

これまでこの日記でも何回か書いてきたこととは思いますが、このような大切なことは定期的に書いても支障はないと思います。

基本的に歯ブラシは1ヶ月に1回交換することを目安にして欲しいと思います。交換期間が早いか遅いかは人によって感じるところは違うとは思いますが、これまで患者さんと話をしてきた経験では、大半の人が歯ブラシの交換期間が長いように思います。2~3ヶ月に一度や半年に一度、1年以上交換していないなんて人もいました。

歯ブラシは毎日使用するものですが、歯ブラシの毛には知らず知らず様々な雑菌、食べかすなどが付着します。交換して間もない歯ブラシでも野菜や肉などが毛にまとわりついていることがあるくらいです。

基本的に歯ブラシの毛は常に清潔であるべきものです。歯磨き後、しっかりと流水下で洗い毛に何もついていない状態にすることが基本です。実際は目に見えない部分では雑菌などが付着するものですが、これらは仕方がないこととはいえ、少なくとも目で見える範囲ではきれいにするのです。先に書いた野菜や肉などが歯ブラシの毛についた場合、僕は歯間ブラシを用いて取り除きます。ただでさえ毛には雑菌が付着しやすいのに、野菜や肉などが付着するとそこに雑菌が付着し、増殖します。非常に不潔になるのです。これは避けなければなりません。

流水下で洗った歯ブラシは、日陰で干すようにしておきましょう。日向で干すと乾燥が速すぎるように思います。かえって毛の傷みが早いように思います。

歯磨きの毛が開いてきた場合は、これは直ぐにでも交換して欲しいと思います。通常の歯磨きでは1ヶ月程度で毛が傷んでくるものですが、直ぐに傷むような場合、これは歯磨き方法に問題があることが多いもの。近くの歯科医院へ行って、歯科医師や歯科衛生士に適切な歯磨き方法を指導してもらった方がいいでしょう。

何の問題のないように見える歯ブラシでも交換して1カ月経てば、新しいものと交換しましょう。目に見えない部分は雑菌などが繁殖し、非常に不潔ですから。

かつて、歯ブラシがもったいないからといって同じ歯ブラシを複数の人で使用しているという話を聞いたことがありますが、これは論外です。歯ブラシは一人一人専用のものを用いましょうね。最近の歯ブラシはいろいろありますが、平均すれば200円程度ではないでしょうか。4人家族で1000円弱。これが高いか低いかということになると議論のあるところかもしれませんが、歯の健康を考えれば1カ月あたり1000円の出費は決して高いものではないと思うのですが。

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2008年7月14日 (月)

答えに困る“いつまで歯はもちますか?”

「今回治療した歯はいつまでもちますか?」

この質問は患者さんからしばしば尋ねられる質問の一つです。この質問に対して僕は一貫して下のように答えています。

「そればかりはいつまでもつか、答えられません。」

患者さんからすれば非常に無責任な発現に思われるかもしれませんが、これが僕の本音なのです。患者さんならば、同じ治療費をかけて治療をするなら、一度治療した場所がいつまでも健康に保って欲しいものです。歯医者も同じで、自分が治療した所がいつまでも機能して欲しいと願いたいのです。ところが、これが予測できないのが悲しいところです。

例えば、きちんと治療をしても、治療後の患者さんの管理が悪い場合、定期的な歯磨きをしなかったり、定期検診を受けなかったりした場合などは新たな歯のトラブルが生じることがしばしばです。そうかと思えば、治療後の患者さんが口の中に無頓着だったとしても、結果としていつまでも問題ない場合もあるのです。

多くの歯科研究によれば、普段から真面目に歯を磨き、定期的に、積極的にかかりつけ歯医者に歯の管理に通う人の方がそうでない人よりも圧倒的に歯が健康であり続けることが証明されてはいますが、一度歯を治療した場所に関しては、いつまでもつかは非常に不確定な要素が多すぎ、歯医者が自信をもって答えることができないものなのです。

先日のことです。ある女性患者さんが来院されました。この患者さん、2年前に歯を白くしたいということで来院された患者さんだったのですが、直前に結婚を控えているという状況でした。実際にこの患者さんの歯を見てみると、むし歯はなかったのですが、前歯が全体的に薄い褐色傾向にあったのです。このような場合、時間があれば歯の漂白を考えるのですが、治療に許される時間が余裕がないことは明白でした。そこで、僕が提案したのが、歯のマニキュアでした。歯の表面に白いレジンと呼ばれる材料を塗布するのが歯のマニキュアです。これは女性が手や足のつめに塗るのと同じような感覚で歯に塗布するものですが、通常のマニキュアと同様、長持ちするものではありません。あくまでも2~3ヶ月程度もつものであり、製品の仕様説明書にもそのことが記載されていました。僕はこの患者さんにそのことを説明し、歯のマニキュアを勧めたところ、トライしたいということを申し出られました。そこで、歯のマニキュアを塗布したところ、患者さんは非常に満足され、うちの歯科医院を後にされました。

それから、2年後の先日、久しぶりに来院されたのですが、この患者さんの前歯を診て僕は少々驚きました。それは歯のマニキュアが2年前に塗布した状況と全く同じ状況だったからです。患者さんに確認をしても、マニキュアが欠けたり破損したりすることなく今に至っているとのこと。これは予想外でした。あくまでも急場を凌ぐような感覚で行う審美治療の一つが歯のマニキュアだったのですが、2年も問題なく経過するとは予想もしませんでした。僕はこの患者さんに対して、もつところまで歯のマニキュアをそのまま使用することを提案し、患者さんも快諾されました。

誰でも想定外の事態に遭遇する経験はあるものですが、僕にとってもこの歯のマニキュアが2年ももつことは全く想定外でした。患者さんには事前に2~3ヶ月しかもたないであろうと説明していただけに、歯の治療後の状態がどうなるか全く予想できないことを改めて感じた、歯医者そうさんでした。

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答えに困る“いつまで歯はもちますか?”

「今回治療した歯はいつまでもちますか?」

この質問は患者さんからしばしば尋ねられる質問の一つです。この質問に対して僕は一貫して下のように答えています。

「そればかりはいつまでもつか、答えられません。」

患者さんからすれば非常に無責任な発現に思われるかもしれませんが、これが僕の本音なのです。患者さんならば、同じ治療費をかけて治療をするなら、一度治療した場所がいつまでも健康に保って欲しいものです。歯医者も同じで、自分が治療した所がいつまでも機能して欲しいと願いたいのです。ところが、これが予測できないのが悲しいところです。

例えば、きちんと治療をしても、治療後の患者さんの管理が悪い場合、定期的な歯磨きをしなかったり、定期検診を受けなかったりした場合などは新たな歯のトラブルが生じることがしばしばです。そうかと思えば、治療後の患者さんが口の中に無頓着だったとしても、結果としていつまでも問題ない場合もあるのです。

多くの歯科研究によれば、普段から真面目に歯を磨き、定期的に、積極的にかかりつけ歯医者に歯の管理に通う人の方がそうでない人よりも圧倒的に歯が健康であり続けることが証明されてはいますが、一度歯を治療した場所に関しては、いつまでもつかは非常に不確定な要素が多すぎ、歯医者が自信をもって答えることができないものなのです。

先日のことです。ある女性患者さんが来院されました。この患者さん、2年前に歯を白くしたいということで来院された患者さんだったのですが、直前に結婚を控えているという状況でした。実際にこの患者さんの歯を見てみると、むし歯はなかったのですが、前歯が全体的に薄い褐色傾向にあったのです。このような場合、時間があれば歯の漂白を考えるのですが、治療に許される時間が余裕がないことは明白でした。そこで、僕が提案したのが、歯のマニキュアでした。歯の表面に白いレジンと呼ばれる材料を塗布するのが歯のマニキュアです。これは女性が手や足のつめに塗るのと同じような感覚で歯に塗布するものですが、通常のマニキュアと同様、長持ちするものではありません。あくまでも2~3ヶ月程度もつものであり、製品の仕様説明書にもそのことが記載されていました。僕はこの患者さんにそのことを説明し、歯のマニキュアを勧めたところ、トライしたいということを申し出られました。そこで、歯のマニキュアを塗布したところ、患者さんは非常に満足され、うちの歯科医院を後にされました。

それから、2年後の先日、久しぶりに来院されたのですが、この患者さんの前歯を診て僕は少々驚きました。それは歯のマニキュアが2年前に塗布した状況と全く同じ状況だったからです。患者さんに確認をしても、マニキュアが欠けたり破損したりすることなく今に至っているとのこと。これは予想外でした。あくまでも急場を凌ぐような感覚で行う審美治療の一つが歯のマニキュアだったのですが、2年も問題なく経過するとは予想もしませんでした。僕はこの患者さんに対して、もつところまで歯のマニキュアをそのまま使用することを提案し、患者さんも快諾されました。

誰でも想定外の事態に遭遇する経験はあるものですが、僕にとってもこの歯のマニキュアが2年ももつことは全く想定外でした。患者さんには事前に2~3ヶ月しかもたないであろうと説明していただけに、歯の治療後の状態がどうなるか全く予想できないことを改めて感じた、歯医者そうさんでした。

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2008年7月 2日 (水)

1ミリグラムの歯垢にばい菌1億個

先週、小学校1年生相手に授業をしてきた歯医者そうさんです。今週は、一般社会人を相手に健康講座をお手伝いすることになっております。いろんな方に歯の健康の大切さ、むし歯や歯周病予防について話をすることがあるのですが、常に心がけていることがあります。それは、極力専門用語を使用せず、わかりやすい言葉で説明することです。しごく当たり前に思われるかもしれませんが、これが結構難しい。普段、歯医者として当然のように使用している言葉や概念、イメージが患者さんには伝わっていないことが多々あるからです。多くの人に歯のことを伝えるには、専門知識を持っていない人の視野に立ち、普段自分たちが話している言葉、考えを翻訳しなおす必要があります。

そんな歯の健康を伝える啓発的な講演、講義、授業ですが、老若男女、全ての人に衝撃を与えることがあります。それは、普段見慣れていないものを見せることです。例えば、歯垢です。誰の口の中にでもある歯垢ですが、これをピンセットなどで一掻きし、顕微鏡の上に載せて見てみると、ほとんどの人はその異様な光景に目が点になります。何せ、数限りない微生物がウヨウヨ存在し、動き回っている像が見えるわけですから。

歯科研究者の調査によれば、口の中には300種類以上のばい菌が存在します。全身には700種類のばい菌がいるとされていますので、口の中には全身のばい菌のうちほぼ半分が存在することになります。

驚くべきはその数です。わずか1ミリグラムの中に含まれるばい菌の数は1億個なのです。一億ですよ!想像できるでしょうか?一億といえば、日本国の人口数にほぼ匹敵する数。わずか1ミリグラムの歯垢の中に日本の人口数分のばい菌が存在しているのです。

もちろん、全てのばい菌が口の中で悪さをするわけではありません。それぞれのばい菌はバランスを取って共存していますが、中には歯に害を及ぼすばい菌が存在するのです。むし歯の原因菌や歯周病の原因菌がそうです。ばい菌の数が増えれば増えるほど、これらむし歯の原因菌や歯周病の原因菌の数も増える。ということは、歯を磨かず、放置したままの口の中は自ずとむし歯や歯周病になるリスクが高くなることが言えるでしょう。

口の中のばい菌数は想像を絶する数があるわけですが、我々は望むと望まないとこれらばい菌と共存していかないといけません。口の中は適度な湿度と温度があり、ばい菌の繁殖には絶好の条件が整っています。そのため、放置していると口の中は歯垢だらけ、すなわちばい菌だらけの状態に陥ってしまいます。ということは、歯や口の健康維持にも悪影響を及ぼす可能性があるわけで、日頃の歯磨きはこれらばい菌を定期的に減少させ、ばい菌の暴走を防ぐ役割があるわけです。

また、定期的に歯医者の下に通い、日頃の歯磨きでは取り除けない汚れや歯垢、歯石などを除去する必要があるのです。

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2008年6月25日 (水)

そんなに治療回数がかかるのですか?

先日、入れ歯を作って欲しいという患者さんが来院しました。何でも今まで使用していた総入れ歯を誤って捨ててしまったそうで、食事をするのも一苦労、見た目も悪く、話にくいとのこと。

実際に口の中を見てみると、歯が一本の無い無歯顎の状態であることは一目瞭然でした。これは少しでも早く入れ歯を作らないと患者さんが困るだろうなあと思ったわけです。僕は早速入れ歯を作ることを提案し、治療計画について話をしました。話を聞いた患者さんは驚いた表情をされました。

「先生、次にこちらへ伺った時には入れ歯はできないのですか?」

患者さんは勘違いされているのではないか?そう思った僕は、入れ歯作りがいくつかの過程がある。各過程を確実にこなして作らないと良い入れ歯を作ることはできない。少なくとも今日来院して次に来院するまでに入れ歯を完成させることは困難であることを説明しました。この患者さんは納得しないような表情をしておりました。

「入れ歯は直ぐにできるものばかりだと思っておりました。」

歯科医院に来院する患者さんの口の中の症状は様々です。軽症の方もいれば重症の場合もあります。例えば、むし歯の治療では、一本だけのむし歯があり、比較的浅い場合、1度の来院だけで治療は完了する場合もあります。しかしながら、むし歯が複数本あり、しかも、むし歯が深く歯髄(神経のことです)にまで達しているようなものであったり、痛みが出てしまっているような場合などは1度の来院だけで治療は完了しません。何度も歯科医院に足を運んでもらい、治療をしないといけません。

僕のこれまでの経験では、1回の来院で治療が終わるようなケースは限られているように思います。患者さん自身はたいしたことがないと思っているようなケースでも、専門家である歯医者からすれば大きな問題であり、早期治療をしないといけないような場合もあるのです。時には病院の歯科口腔外科などへ紹介し、手術をしないと治らないケースさえあるのです。

治療に何回の来院を要するか?これは患者さんにとって大きな問題だろうと思います。何かと忙しい日常生活の中から時間をやりくりし、来院するわけですから少しでも早く治療が終わって欲しいことを願う気持ちはわからないではありません。しかしながら、口の中の症状に関する患者さん自身の認識と専門家としての歯医者が診断する結果とは異なる場合が多いのが現状です。軽症で1度の来院だけで治療が完了する場合もあるかもしれませんが、実際の口の中は患者さんが想像するよりも症状が進んでいる場合が多いように思います。

歯の治療は複数回かかると思ってもらった方がいいかもしれません。複数回かかりながらも悪い場所を徹底的に治療し、自己管理できるようにしてもらった方が、長い目で見て歯の健康維持につながる。そのように割り切ってもらった方がいいように思います。

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2008年6月10日 (火)

有名人口元チェック ヒラリー・クリントン

今年、アメリカでは4年に1度の大統領選挙の年に当たります。アメリカは民主党と共和党の二大政党があり、大統領は常にこの二大政党の代表から選ばれているのはご存知のことでしょう。それぞれの党で全米の各州ごとに予備選挙が行われ、自らの党からの大統領候補者を選びます。正式にはそれぞれの党が開く党大会で大統領候補が選出されるわけですが、実際は、予備選挙で 代議員数の過半数を獲得した時点で実質的な大統領候補となります。

今回のアメリカ大統領選挙では、共和党はマケイン氏が早々に大統領候補となりましたが、民主党では最後の最後まで候補者選びが続きました。結果は、黒人初のアメリカ大統領を目指すバラク・オバマ氏がヒラリー・クリントン上院議員を僅差で破り、民主党大統領候補として選ばれる見通しとなりました。民主党大統領予備選挙開始前、ヒラリー・クリントン上院議員は夫であるビル・クリントン元大統領の知名度と上院議員としての政治活動、そして、資金力から民主党大統領候補の大本命であると目されていました。ところが、最終的に彼女はバラク・オバマ氏の変革を訴える勢いに押され、敗北宣言を出さざるをえなくなりました。

僕はヒラリー・クリントン上院議員の敗北宣言の演説をチラッとテレビで見ましたが、選挙戦中、自信満々で笑みを浮かべながら戦っていた姿とは対照的に、どことなく疲れた、無念の顔つきが見え隠れする彼女の姿が印象的に残りました。

そんな彼女を象徴するものが彼女の口元にありました。それは彼女の上の前歯の状態です。もともと彼女の上の前歯は3本がメタルボンド冠と呼ばれる被せ歯がセットされていたのですが、被せ歯に接する歯茎が退縮し、被せ歯の下にある自身の歯の一部が露出して見えていたのです。

誰しも被せ歯をセットする際、被せ歯は歯茎と調和するようにセットされているものですが、時間が経過するとともに、歯茎の状態にも影響をうけますが、徐々に歯茎が下がり、被せ歯と歯茎の隙間が見えてくるものです。

ヒラリー・クリントン上院議員の場合、民主党予備選挙が始まった当初は、彼女の上の前歯の状態は被せ歯をしているとはわかるものの、歯茎が下がったようには見えなかったのですが、今回の敗北宣言では明らかに歯茎がさがり、彼女の被せ歯の自身の歯の一部が見えていたのです。

わずか半年余り、何が原因で彼女の歯茎が下がったのかわかりませんが、大統領予備選挙のため広大なアメリカ各地を飛び回りながら選挙活動をし、一喜一憂する精神状態が彼女の上の前歯の歯茎に影響を及ぼしたのかもしれません。日本の選挙とは異なり、長期間にわたる選挙戦を戦わないといけないアメリカ大統領選挙。世界一のアメリカ合衆国の最高責任者に選ばれるためには非常に厳しい選挙戦を勝ち抜かないといけないわけですが、ヒラリー・クリントン上院議員の口元の変化を見ると、その選挙戦の激しさと体の消耗具合を垣間見たような気がしてなりませんでした。

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2008年6月 6日 (金)

学校歯科検診で見る格差社会の兆し

ご存知の方もいるとは思いますが、6月4日から6月10日までの1週間は歯の衛生週間です。かつて6月4日は語呂合わせから“むし歯の日”とか“むし歯予防デー”など言われていましたが、今では6月4日から1週間を歯の衛生週間と名づけて、歯や口の健康に対する啓蒙、啓発活動が全国各地で行われています。僕の地元歯科医師会でも今週末には市民向けの健康講座を開催したり、来週初めには歯の無料健康診断、相談が行われます。

ところで、全国各地の学校では定期健康診断が行われています。これは学校保健法という法律により、学校の生徒と教師の定期健康診断を毎年6月30日までに行わないといけない決まりがあるからです。内科、眼科、耳鼻科といった検診と同様歯科検診も行われます。先週、僕も母校でもある地元小学校で恒例の歯科検診がありました。

検診を終えた正直な感想ですが、年々むし歯の数が更に減っていると感じました。歯科検診ではむし歯のことを“C”と言って判定しますが、今回の検診では“C”と口から発する機会が少なかったように思うのです。

このことは大規模調査のデータからも裏づけがあります。六年に一度、厚生労働省が全国で行う歯科疾患実態調査という調査がありますが、12歳におけるむし歯経験歯数は、昭和62年では4.9本だったのに対し、平成17年では1.7本となっています。この20年間で12歳児のむし歯はほぼ3分の1になっているのです。

どうしてこれだけむし歯の数が減少してきたか?これはいくつかの理由があるでしょうが、歯や口の中の健康維持に関心を持つ親御さんが増え、自分たちの子供達のむし歯予防を実践していることが大きな要因であることは間違いありません。かつて子供たちのむし歯はあって当たり前という認識が強かったものですが、今ではむし歯を予防ができて当たり前という意識が世の中にかなり浸透してきているように思います。

その一方、むし歯が放置されている子供は、数は限られているものの、非常に目立ちます。なぜなら、これら子供は全く治療をせず、そのまま放置されているむし歯の数が尋常ではないからです。極端な話、生えてきた永久歯以外のほとんどの乳歯がむし歯であることも珍しくありません。これは、間違いなく保護者に責任があります。

どうして子供のむし歯を放置しているのか?経済的な理由が考えられるかもしれませんが、義務教育において全国各地の公立学校では何らかの形で治療を補助する制度があります。むし歯の治療も治療の補助対象となる病気の一つで、保護者は全く自己負担することなく、場合によってはわずかな額を負担することもあるかもしれませんが、自治体かの医療補助が受けられるはずです。

そんな医療補助があるにも関わらず、子供のむし歯の治療を放置するのは、やはり保護者や家庭に何らかの事情があると判断せざるをえないのです。

これまでは学校の定期健康診断というのは、多くの生徒たちを対象とした集団指導の意味合いが濃かったのですが、今の定期健康診断では、保護者や家庭の事情を考慮した、個別指導を行う必要が生じてきたように思えてなりません。物事は時代とともに変化、変貌するものですが、学校の定期健康診断も時代の流れとともに変わりつつあると言えるでしょう。

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2008年6月 5日 (木)

診察券の再発行について

昨日、所用で車を運転しながらあるラジオ番組を聴いていると、医療機関の診察券についての話題が出ていました。内科や外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、そして、歯科医院の診察券がたまり、管理ができず無くしてしまうことが多いという話でした。

この話、わからないわけでもありません。かくいう僕もいくつもの病院、診療所の診察券を持っているからです。

僕の場合、持っている診察券の多くは過去に働いていた病院の診察券が大半です。病院に勤務する際、一種の職員としての証明として診察券が手渡されたことが多かったのです。診察券を通勤タイムカード代わりに使用して病院に勤務していたのです。この診察券を実際の診療で使うことはありませんでしたが、それでもいざと言う時のための安心感はあったものです。

今となってはこれら診察券の病院は今の自宅からははるか離れた場所にあるため、実際に使うことはまずないでしょうが、自室の机の片隅に保管しています。

問題は家の近くにある診療所の診察券の場合です。基本的に僕は必要と思われる診療所の診察券は財布の中に入れる主義なのですが、最近、僕の財布の中にはやたらカードが増えてきて管理に困っています。というのも、クレジットカードがやたら増えてきているからです。

近くの家電量販店、ガソリンスタンド、スーパーマーケット、ショッピングモール、携帯電話販売店などなど、様々な場所でクレジットカードを作る誘いを受けます。クレジットカード払いであればポイントがついて、お得だとか、割引がある、ポイントがたまるとマイルと交換できるという宣伝文句にのせられ、ついついクレジットカードが増えていくばかり。そのため、僕の財布の中にはいつしかクレジットカードが増え、財布の中に入りきれなくなりました。そこで、普段最低限使用するクレジットカードだけを常備している財布に入れているのですが、おかげで診療所の診察券を入れるスペースが限られているのです。

僕は、普段使用しないクレジットカードや診察券は自室の机のある場所に保管することにしています。そのため、あまり紛失することはないのですが、それでも、時には必要とする診察券が目の前から無くなっていることもあり、自分の管理不足を痛感することもあるのです。

うちの診療所の場合、診察券は紙製のものです。基本的に一回の初診から治療終了までを一枚として発行していますが、大きい診療所や病院の場合、診察券に磁気カード式を採用していることが多いです。このような場合、診察券を紛失すると再発行のために一定の料金を取られることがあります。これに対し不満を持っている人もいるかもしれませんが、診察券には様々な個人データが入っています。コンピューターによって患者情報が管理されているような医療機関の場合、一人の患者情報管理にはそれ相当のコストがかかっています。そんな医療情報の源となる診察券を紛失されると、病院としてはかなりの負担を強いられるのです。そこで、紛失した場合、患者さんには応分の負担をお願いせざるを得ないというのが実情なのです。

うちのような弱小歯科医院の場合、診察券は簡単に、無料で再発行できますが、磁気カードタイプの診察券の場合、再発行は無料でない場合が多いことを知っておいてほしいと思います。

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2008年6月 2日 (月)

高速水着 マウスガード ドーピング

先日、某スポーツニュース番組で日本のプロ野球の試合経過をしていました。何気なく見ていると、僕はある選手の口元に自然に目が行きました。それは、その選手がマウスガードを装着していたからです。

Mouthguard以前にもマウスガードについてはここにも書きましたが、ボクシング、キックボクシング、K-1、アメリカンフットボールをはじめ、ラクロスやインラインスケートなどのスポーツではマウスガードの装着が義務付けられています。競技中、顔面や頭部への接触する機会が多いスポーツでは、口の中にマウスガードを常時装着することにより歯や口の中の粘膜損傷を防いだり、脳震盪の予防、軽減することができます。

しかしながら、全てのスポーツでマウスガードを着用しているかというと、そうではありません。マウスガードの装着義務化は一部の競技に限られていたり、一部の競技者が自主的に装着しているのが現状です。

ところで、歯の噛み合わせと運動パフォーマンスの関係については、現在いろいろと研究が進んでいます。よく、アメリカ大リーグの選手が試合中にガムを噛み続けているのはプレーのパフォーマンスが上がるのだと言われていたり、マウスガードの装着によりゴルフ選手の飛距離が増したり、陸上選手のジャンプ力が向上したりするという話を伝え聞きます。

そこで、問題になってくるのがドーピングです。

ドーピングについて多くの方が一度は耳にしたことがあるでしょう。日本オリンピック委員会によれば、ドーピングとは“競技能力を増幅させる可能性がある手段(薬物あるいは方法)を不正に使用すること”とのこと。

今のところ、ドーピングは薬物の使用について規制が注目されており、最近ではプロ野球読売ジャイアンツの外国人選手がドーピング問題で出場停止処分を受け、即刻球団から解雇されるということになりました。

このドーピングですが、ドーピングは何も薬物の使用だけを前提しているわけではありません。“競技能力を増幅させる可能性がある手段(薬物あるいは方法)を不正に使用すること”なのです。何らかの不正な方法により著しくアスリートの競技結果に不公平が生じた場合も、ドーピングの対象となりうるです。

ということは、マウスガードの使用においても、もしマウスガードの使用によりアスリートの運動能力が上がることが科学的に認められれば、全ての選手がマウスガードを着用しないと不公平を生じることになります。

現在のところ、マウスガードはあくまでも競技中に発生する可能性がある歯や粘膜、頭部への怪我防止のために着用することが目的とされています。歯の噛み合わせと運動能力との関係は相関関係があるようなことが言われていますが、実際のところは完全に証明されたわけではありません。ただ、今後アスリートの運動能力に対する研究が進めば、マウスガードの使用にも制限がつくか、もしくは、全選手着用の義務が生じるかもしれません。

そういった意味では、現在言われている某社の高速水着もドーピングに引っかかる可能性があるとも言えます。一部の会社の水着を着用した選手が世界記録を連発し、そうでない会社の水着を着用した選手のタイムが伸びないということになると、選手間に不公平が生じます。本来、水泳はスイマーの運動能力を競う競技であるはずなのに、それが水着の種類によって左右される状況になる。これはドーピングの観点から言えば、ドーピングに抵触するのではないかと思います。

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2008年5月13日 (火)

COって一体何のこと?

「先生、学校の歯科検診でCOって言われたのですけど、COって一体何ですか?」

最近、うちの歯科医院に来院したある中学生からの質問です。話を聞いてみると、先日学校で歯科検診があったそうで、その際、検診担当医が自分の奥歯をみて“CO”と言っていたのが耳に止まったのだとか。”C”であればむし歯であり、”斜線”と判定されれば健康な歯であることは知っていたそうですが、COと言われて何のことかよくわからず、僕に尋ねてきたというわけです。

何だかかつてあった人気テレビドラマのタイトルみたいなCOですが、このCOって一体何でしょう?

学校に通う生徒の健康管理に関して法律があります。学校保健法という法律なのですが、この法律により、幼稚園から小学校、中学校、高校にいたるまでの園児、生徒は毎年6月30日までに各種健康診断を受けなければなりません。これを定期健康診断といいます。

具体的には

身長、体重、座高

栄養状態

脊柱および胸郭の疾患および以上の有無

視力および聴力

目の疾患および異常の有無

耳鼻咽頭疾患および皮膚疾患の有無

結核の有無

心臓の疾患および異常の有無

尿

寄生虫卵の有無

歯および口腔の疾患および異常の有無

その他の疾患および異常の有無

が調べられます。

歯科検診ではむし歯や歯周病のチェック、歯並びやかみ合わせ、顎関節の状態などが調べられるわけですが、何といっても最も注意して検診するのがむし歯です。

かつて、むし歯であれば削って詰める、被せるという治療が一般的でした。歯の予防に対する知識が充分に社会に浸透していなかったため、むし歯に侵される子供がたくさんいたのです。ある人などはむし歯の洪水の時代と名づけたものですが、言い得て妙とでもいう時代がかつてあったのです。

歯科検診でもこのことが前提にあり、少しでもむし歯になる可能性のある歯に対してはCと判定し、治療勧告書を出して早期の治療を促すようにしていたのです。

ところが、今ではむし歯の数は減少してきました。5年に一度全国レベルで調査される歯科疾患調査に歯科疾患実態調査という調査があります。この調査によれば、12歳児のむし歯経験歯数、すなわち、むし歯やかつてむし歯であったものの治療をした歯の数(永久歯)は、昭和62年では4.9本でしたが、平成17年では1.7本と減ってきています。20年近くの間に12歳児の永久歯のむし歯はほぼ3分の1に減少していることがわかると思います。これは歯の健康に対する関心が深まり、予防に対する意識の高さ、実践による影響であることは間違いありません。

ところで、最近の歯の耐久性に関する研究で、歯はなるべく削らない方が耐久性があることが実証されてきました。なるべく削らないといってもむし歯になってしまえば削らざるをえないのが実情ですが、むし歯になりかけの歯の場合、適切に予防をしておけば、むし歯が進行せず、場合によってはむし歯が治っていくケースも見られることがわかってきたのです。

未来のある子供の場合、なるべく歯を長持ちさせるためには日頃からの歯の予防が欠かせませんが、運悪くむし歯になりかけてしまった場合、適切なブラッシング指導や食事方法、生活習慣の見直し、フッ素を利用した歯の強度をたかめる治療などを併用すれば、必要以上に歯を削るケースが減少するのです。

これらのことを学校検診に取り入れた成果がCOという判定なのです。COというのはCaries Observationの略です。直訳すればむし歯観察とでも書くべきでしょうか。むし歯と判定するまでには至らない状態ではあるが、時間経過とともにむし歯に発展する可能性が高い歯のことをCOと言います。もっと平たく言えば、経過観察を必要とするむし歯になりかけの歯のことです。

むし歯になりかけてはいるものの、本人の自覚と予防処置、定期的な検診をしていくことにより、不必要なむし歯処置を避け、歯を削らないことで歯の耐久性が増し、結果として健康な歯を維持し、健康な体を作る。

COというのは何もしないということではなく、注意深く見守りながら歯の健康を維持する、積極的な経過観察処置であるのです。

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2008年5月 9日 (金)

君島十和子の力は偉大

どのような社会、業界にも流行があるように歯科業界にも一種の流行があります。流行といっても様々で、治療法の流行であったり、材料や治療器具等々の流行があるものです。

最近、歯科業界の中で流行になっているもの一つにセラミックによる被せ歯があります。

セラミックによる被せ歯そのものは以前からあったもので決して最近に開発された代物ではないのですが、今流行なのは一種の人の手ではなく機械化された手法で作るという方法なのです。住宅、住居などを設計する際に使用されるCADCAMというコンピュータソフトを使用して設計、加工する手法がありますが、これを被せ歯製作に応用したものなのです。

被せ歯の製作に人の手を使わず、CADCAMを使用して作るとなると、何だかすごいシステムのように思いがちですが、当初は使いものになりませんでした。せっかく作った被せ歯が口の中で合わず、何度も作り直すようなことが頻発したからです。ところが、技術革新はバカにできないもので、何度も試行錯誤を繰り返しながら使い物になるくらいの精度の被せ歯ができるようになってきたのです。

また、セラミックというと一種の陶器の材料そのものですが、これは見た目はきれいなのですが、強度に問題があるものです。被せ歯においてもそうで、被せ歯全てをセラミックで作ると使用しているうちに欠けたり、割れたりすることが多かったのです。ところが、この弱点も技術革新のおかげで徐々に改善され、今では長年の使用に耐えうるセラミックによる被せ歯が出来上がってきたのです。

実は、歯科業界で流行になってきた理由がもう一つあります。それは、このセラミックで作った被せ歯を女性有名人が使用し、しかも、自らが広告塔となって宣伝しているからです。その有名女性人とは君島十和子。女性の方なら知らない人はいないでしょう。美のカリスマとして今や各方面から引っ張りだ女性のようですが、彼女が前歯にこのセラミック製の被せ歯を利用し、しかも、自らの口元を見せながら微笑んでいる写真を掲載したパンフレットなどがあるからです。このパンフレットを歯科医院においたところ、女性を中心にした若い患者さんからの問い合わせが殺到し、興味を持つ人が後を絶たず、中には自らの歯にこのセラミック被せ歯を使用する人がいるというのです。有名人の宣伝効果が絶大なことは既に知られているところですが、歯科界においても同じことが言えるわけですね。君島十和子の力は偉大です。

審美がよく強度も得られ、耐久性が保証されているセラミック製被せ歯ですが、一つ欠点があります。それは、開発されたのが最近のため、今後セラミック製被せ歯がどのように経過していくか、誰もわからないことです。一説によれば、これまで普及してきた表面だけをセラミックにして裏面を金属にしたメタルボンド冠と呼ばれる被せ歯よりもツヤ、輝きがもたないとも言われています。この点、注意が必要でしょうね。

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2008年4月25日 (金)

放置するほど医療費がかかる理由

最近、治療を受けたくても経済的な理由から治療を受けず、我慢している人が数多く存在します。日本は国民皆保険制度ではあるのですが、保険料を支払うことができず保険証が発行されない。保険証が無いと、医療費を全額支払わないといけないが支払うことができない。保険料が払えないくらいですから医療費の全額負担は不可能です。そのため、必要な医療を受けたくても受けられないケースが後を絶たないのです。
これは大きな社会問題です。なぜなら、現在の医療費負担は症状を放置すればするほど医療費がかかるからです。一時的に症状を我慢していて医療機関にかからず、放置していると、一見すれば医療費を節約しているように見えますが、こうした場合、必ず病状は進行し、我慢できないほど悪化する場合が多いのです。そうなると、医療費がかさばってくるものなのです。

歯科においてもこのことは同じです。たかが一本のむし歯だと思って放置すればするほど治療費がかかるようになっているのです。今日の日記では、この治療費に関するシミュレーションを行ってみます。
ちなみに、今回の治療費は保険診療の点数を下に算定しています。保険点数は1点につき10円です。点数×10が実際にかかる治療費であることをご理解下さい。
また、初診料、再診料といった基本診察料は含まれていません。薬代も含まれていませんし、他の疾患の治療が重なっている場合の治療費も含まれていません。様々な経費を含めれば、更にアップすることを含んで欲しいと思います。
実際に窓口で支払う金額は、大半の方が3割負担ですから、上記の額の3割を支払えばいいことになります。
実際の治療は様々な状況、診断、診療パターンといったものが存在します。以下にあげることはあくまでも一例のシミュレーションとして見て頂ければと思います。

前歯の一本がむし歯になったとしましょう。小さなむし歯であれば
120点+100点+11点=231点  合計2310円
大きなむし歯であれば
120点+148点+28点=296点  合計2960円

かかります。

前歯のむし歯が深くて歯髄(神経のことです)を処置しなければいけない場合
神経の処置には
220点+30点+68点+118点=436点  4360円
むし歯によって開いた穴が小さければ更に
80点+148点+28点=256点  2560円必要です。
<b>合計6920円</b>

むし歯によって開いた穴が大きい場合、歯に被せ歯をしないといけません。そのためには、歯が折れないように金属性の心棒を入れてから被せ歯をセットします。
心棒代として
20点+179点=199点 1990円
被せ歯をセットするまでに
630点+30点+60点+14点+1394点+45点+16点+100点=2289点 22890円

神経の処置からの合計金額は、合計29240円となります。

前歯のむし歯が根っこまで進み、やむを得ず抜歯しないといけない場合、抜歯には
150点 1500円

抜歯した場所をカバーするために両隣の歯を削りブリッジにする場合、
790点×2+275点+70点+50点+100点+100点+4点×2
+1394点×2+1345点+150点+300点+16点×2=6798点
67980円 
ブリッジセットするまでに必要な治療費は、抜歯費用も加えて
合計69480円

といったように歯が悪くなればなるほど治療費がかかるようになってきます。治療を途中で中断したり、悪い歯を放置してくると更に治療費はかかる結果となります。

歯が悪いまま放置すれば、治療回数も治療費用もかさばってくることがわかると思います。そのようにならないためには、日頃からの歯の健康維持が大切であることは言うまでもありません。
多くの調査から、定期的に歯科医院を受診し、歯の検診とメンテナンスを受けている人はそうでない人に比べ歯を失う確率が格段に低くなっています。結果的に歯にかかる治療費も少なくなるわけです。歯医者は痛くなってから行く場所であるというイメージが世の中には強いですが、積極的に痛くなくても歯医者を利用することの方が、結果的には歯の健康を維持でき、治療費もかかりません。
少なくとも、歯に何らかの異常を感じれば、放置せず、我慢せず、症状が小さいうちに歯医者に行って適切な治療を受けて欲しいと思います。

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2008年4月15日 (火)

アルコールを止められない患者

毎日患者さんの治療をしていると、麻酔の注射をして膿を出したり抜歯をしたりすることがあります。これら処置は専門的には観血処置と言われるものです。観血とは読んで字の如く、“血を観る”ということ。出血を伴う処置であるということです。

出血するという状態は通常の体の状態ではありません。何らかの傷が生じて体の中の血管が裂けて血が体外へ出て行く状態を指します。明らかに異常な状態であるわけです。